風とよく晴れた空とあたたかいパパの思い出と

料理を教わったのは小3くらいのときだろう。
初めて教わった料理は、目玉焼き。

休日だったのだろうか。
お昼に父が家にいた。
「目玉焼きを作るぞ」
そう言われ、台所について行く。

フライパンをガスにかけ、油を熱する。
そして父は、いったん濡れ布巾にフライパンを置いて少し冷ました。
「フライパンを冷ますんだ!」
わたしは驚いた。
未知の世界だった。
父がフライパンをまた弱火にかけ、たまごをいくつか割り入れた。

たまごの色が白身の部分から少しずつ変わっていく。
半分焼けただろうか、というところで、父は言った。
「こうなったら、水をちょっと入れるんだ」
えっ?
父はほんのちょっとの水をフライパンに入れ、そして蓋をした。
「フライパンにお水を入れるんだ!」
わたしはさらに驚いた。
そして、少し待ち、適度に蒸されたきれいな目玉焼きが見事に出来上がった。

わたしはときどき目玉焼きを作るようになった。
教わったやり方で。
そして、その後いろいろな料理を教わるようになった。

今のわたしは、まともな料理なんてまずしない。
必要最低限のエネルギーで、てきとうに食えるものができればいい。
精神疾患を持って生きるようになったわたしは、もう、料理に手をかけるエネルギーは持たない。
けれど、目玉焼きくらいは作ることがある。

父は去年6月亡くなった。
父を思い出すことも、もうほとんどなくなった。
けれど、たまに目玉焼きを作るときは、こんなかすかな記憶が胸をよぎる。



※目玉焼きの作り方は各家庭で違うと思います。
わたしが最初に教わったやり方がこれだったというだけです。

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