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「親ならしてあげるべき」が増えている

「お金がかかる時代だから、子どもはほしくない」
 子どもを持たない理由として、そんな言葉を耳にすることがある。

自分の生活が苦しくなるから、という意味にも聞こえるが、よく聞いてみると少し違う。十分なお金を用意してあげられず、子どもを幸せにできないかもしれない。その恐れが滲んでいる。

 実際、子どもを望まない若者は増え、望む子どもの数も減っている。国立社会保障・人口問題研究所の調査では、理想より少ない数の子どもを予定する夫婦の半数以上が、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」と答えている。

 いつから、子どもを幸せにするには、これほど多くのお金が必要だと考えるようになったのだろう。

 子育ての基礎的な負担は、昔より軽くなった面も多い。食べ物や衣服は手に入りやすくなり、医療も進歩した。教育や医療を社会全体で負担する範囲も広がっている。

 それでも、子育てに必要だと思うお金は減っていない。食べさせ、学校に通わせるだけでは足りない。大学に進ませたい。塾や習い事にも通わせたい。スポーツや芸術、旅行など、さまざまな体験をさせたい。生きるために必要なものが増えたというより、「親ならしてあげるべきこと」が増えたのだ。

 自分が親にしてもらったこと、できればそれ以上のことを、子どもにもしてあげたい。そう考えるのは自然なことだ。BIGLOBEが18歳から25歳を対象にした調査では、子どもを望む若者の63.7%が、自分と同等かそれ以上に習い事や進学をさせるのが難しければ、子どもを諦めるか、人数を減らしたいと答えている。

 もちろん、教育には子どもの可能性を広げる力がある。ただ、僕たちのまわりには、「早く始めなければ間に合わない」「今やらなければ将来困る」という情報もあふれている。「不確実な時代だからこそ、早めの準備を」と塾や習い事の広告は呼びかける。その内容が間違っているとは限らない。けれど、失うかもしれない可能性ばかり見せられれば、何もさせないことが親の怠慢のように思えてくる。

 ある家庭が受験のために子どもを塾に通わせれば、ほかの家庭も、わが子だけが不利にならないように通わせる。全員の負担が増えても、全員が有利になれるわけではない。結果として、競争の水準だけが上がっていく。軍拡競争と同じ構造だ。

 けれど、不確実な社会だからといって、子どもの失敗をすべて先回りして防ぐことはできない。失敗を一つ残らず防ぐことより、失敗しても立ち直れる道を残すほうが大切ではないか。

 親も子も、将来のための競争に追い立てられていては、息が詰まる。将来のために現在を犠牲にしすぎず、今を楽しむ。人生が思い通りに進まなくても、やり直す道はある──それを姿で示せるのは、完璧な親よりも、失敗したことのある親かもしれない。

 次世代に残したいのは、「前の世代より多くを用意しなければならない」という宿題ではない。失敗しても、幸せに生きていけるという安心ではないだろうか。

※こちらの記事は、AERA2026年8月3日号にも掲載しています。
今週の活動日記は夏季休暇のため、お休みです。来週まとめて書きます。

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お金や経済の話はとっつきにくく難しいですよね。ここでは、身近な話から広げて、お金や経済、社会の仕組みなどについて書いていこうと思います。 …

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