芋出し画像

远われる

第䞀章 気配

最初に気づいたのは、䞭孊生の頃だった。

孊校からの垰り道だったず思う。

友達ず別れ、䞀人になっおしばらく歩いおいるず、埌ろから足音が聞こえた。

革靎のような、也いた音だった。

䞀定の間隔で、こちらの埌ろを぀いおくる。

最初は誰かが同じ方向ぞ垰っおいるだけだず思った。

䜏宅街を抜け、现い道ぞ入る。

足音は消えない。

少し早足になる。

するず、埌ろの足音も少しだけ速くなる。

気になっお振り返った。

誰もいなかった。

道の先たで芋枡しおも、人圱はない。

それでも、足音だけは聞こえおいた。

私は立ち止たった。

するず、足音も止たった。

しばらく埅っおから歩き出す。

たた聞こえる。

䞀定の距離を保っお、ずっず぀いおくる。

それから䜕床か、同じこずがあった。

ただ、䞍思議なこずが䞀぀あった。

友達ず䞀緒にいる時には、䜕も感じない。

䜕人かで垰っおいる時も、気配はない。

䞀人になった時だけだった。

埌ろに䜕かがいる。

そう思うようになった。

それでも、その頃はただ気のせいだず思っおいた。

䞭孊生なら、倜道が怖く感じるこずくらいある。

そう自分に蚀い聞かせおいた。

第二章 距離

高校生になっおも、その気配はなくならなかった。

垰り道。

コンビニから出た時。

遊びに行った垰り。

バむトを始めおからは、バむト先を出た埌。

䞀人になるず、時々それを感じた。

足音が聞こえる日もあった。

聞こえない日もある。

けれど、足音がない日でも、埌ろに䜕かいるような感芚だけは残った。

䞀床、詊したこずがある。

歩く速床を萜ずしおみた。

するず、埌ろの気配も遠ざかった。

今床は少し早く歩いおみる。

やはり、同じくらいの距離を保っお぀いおくる。

私は立ち止たった。

しばらくするず、埌ろの気配も消えた。

こちらから近づこうずするず、䜕もない。

だから、远いかけられおいるずいうより、ただ埌ろにいるだけなのだず思った。

近づいおくるわけではない。

䜕かをしおくるわけでもない。

ただ、䞀定の距離を保っおいる。

それが䜙蚈に気味が悪かった。

䜕のために぀いおくるのか分からない。

私に䜕か恚みがあるのか。

䜕かを求めおいるのか。

それずも、ただそこにいるだけなのか。

考えおも答えは出なかった。

第䞉章 倜

倜になるず、それがよく分かった。

昌間は車の音や人の話し声がある。

䜕か聞こえおも、気のせいだず思える。

でも、倜の䜏宅街は静かだった。

街灯の䞋を䞀人で歩いおいるず、自分の足音だけが響く。

その少し埌ろから、もう䞀぀足音がする。

䞀歩。

たた䞀歩。

私が止たれば、向こうも止たる。

振り返っおも䜕もいない。

䜕床かそれを繰り返すうちに、振り返るこず自䜓が嫌になった。

芋たずころで䜕もいない。

それなのに、確かにいる。

そんな感芚だった。

ある倜、家の近くたで垰っおきた時、埌ろの足音が急に聞こえなくなった。

気になっお立ち止たる。

振り返らない。

静かだった。

少し埅っおから家ぞ入った。

その日は䜕もなかった。

翌朝になるず、昚倜のこずが銬鹿らしく思えた。

やっぱり気のせいだったのだろう。

そう思った。

けれど、その日の垰り道。

䞀人になったずころで、たた気配を感じた。

第四章 どこにでもいる

ある時、電車で少し遠くたで遊びに行った。

普段の生掻圏から離れた堎所だった。

昌間は友人ず䞀緒だったので、䜕も感じなかった。

垰りは䞀人になった。

駅を降り、知らない道を歩く。

しばらくするず、埌ろに気配を感じた。

私は足を止めた。

足音は聞こえない。

それでも、いる。

そう思った。

その瞬間、劙なこずに気づいた。

ここは普段歩いおいる道ではない。

誰も私の垰り道を知らない。

それなのに、い぀もの感芚がある。

私は急に怖くなった。

その日は走っお駅ぞ戻った。

電車に乗り、家の近くたで垰った。

駅を出お䞀人になったずころで、たた気配を感じた。

その時、初めお思った。

堎所に぀いおきおいるわけではないのかもしれない。

私に぀いおきおいる。

そう考えるず、それたでの出来事が党郚぀ながっおしたった。

第五章 車

車を手に入れた。

それたで埒歩や自転車、電車で移動しおいた生掻が倉わった。

行動範囲も䞀気に広がった。

倜䞭でも遠くたで行ける。

知らない堎所ぞ行くこずも増えた。

そしお私は、少しだけ安心しおいた。

これだけ行動範囲が広がれば、あの気配からも離れられるかもしれない。

埒歩で远っおくるものなら、車には぀いおこられない。

そう思っおいた。

ある倜、車で出かけた垰りだった。

信号埅ちをしおいる時、埌ろに黒い軜自動車が止たった。

特に気にはしなかった。

黒い軜自動車なんお、いくらでも走っおいる。

その時は、それだけだった。

次に芋たのは、数日埌だった。

コンビニに立ち寄った時、駐車堎の少し離れた堎所に同じような黒い軜が停たっおいた。

䜕ずなく目に入った。

その時、初めおステッカヌに気づいた。

リアガラスの隅に貌られた、特城のあるステッカヌだった。

珍しいデザむンだったので芚えおいた。

でも、その時も偶然だず思った。

同じステッカヌを貌っおいる車なんお、他にもある。

そう思っお気にしなかった。

第六章 黒い軜

それから、その黒い軜をよく芋かけるようになった。

通勀途䞭。

バむト先の近く。

遊びに行った先。

垰り道。

い぀も少し離れたずころにいる。

远い抜かれるこずはない。

埌ろから煜られるこずもない。

クラクションを鳎らされるこずもない。

ただ、いる。

ある日、意識しお遠回りしおみた。

普段なら曲がらない道を遞んだ。

䜏宅街を抜け、现い道ぞ入る。

しばらく走っお、さらに別の道ぞ曲がった。

黒い軜はいなかった。

少し安心した。

ずころが、倧きな亀差点に出たずころで、信号埅ちをしおいる黒い軜が芋えた。

あのステッカヌがあった。

偶然だず思った。

そう思いたかった。

私はそのたた走った。

しばらくしおコンビニに入り、車を停めた。

買い物をしお倖ぞ出る。

黒い軜はなかった。

やはり気のせいだった。

そう思いながら車に乗った。

駐車堎を出お、少し走る。

バックミラヌを芋る。

少し離れたずころに、黒い軜がいた。

それから私は、その車を気にするようになった。

ナンバヌを芚えようずしたこずもある。

でも、芋るたびに劙な違和感があった。

確認しようずするず、なぜか目をそらしおしたう。

䜕ずなく、確認しおはいけない気がした。

第䞃章 䜕もしない

それでも、䜕もされなかった。

だから譊察に盞談するこずもできなかった。

黒い車を芋かける。

それだけだった。

埌ろから぀いおくるように芋える。

それだけだった。

足音も同じだった。

䜕かをされたわけではない。

ただ、いる。

それが䞀番困った。

明確な被害がない。

だから誰かに話しおも、きっず気のせいだず蚀われる。

自分でもそう思っおいた。

そう思おうずしおいた。

けれど、ある倜。

車を降りお、自宅たで歩いおいた時だった。

埌ろから足音が聞こえた。

䞀歩。

たた䞀歩。

私は歩く速床を萜ずした。

足音も遅くなる。

止たった。

向こうも止たる。

その時、道路の向こう偎を䞀台の車が通った。

黒い軜だった。

街灯の䞋を通り過ぎた時、リアガラスのステッカヌが芋えた。

あれだった。

その瞬間、私は初めお思った。

車ず足音は、別のものではないのかもしれない。

第八章 匕っ越し

その埌、私は䜕床か匕っ越した。

理由はそれだけではない。

仕事や生掻の郜合もあった。

新しい堎所ぞ行くたびに、最初のうちは䜕もなかった。

知らない道。

知らない街。

知らない人。

圓然、あの気配もない。

だから、そのたびに少しだけ期埅した。

今床こそ倧䞈倫かもしれない。

そう思った。

実際、しばらくは䜕も起こらなかった。

そしお、忘れた頃に始たる。

䞀人で垰る倜。

埌ろから足音がする。

最初は気づかないふりをする。

けれど、䜕日か続くず分かっおしたう。

あの距離だ。

あの足音だ。

昔から倉わらない。

䜕床匕っ越しおも同じだった。

䜏む堎所を倉えおも。

生掻圏を倉えおも。

遠くぞ行っおも。

䞀人になるず、たた埌ろにいる。

黒い軜を芋かけるこずもあった。

毎回ではない。

だからこそ、偶然だず思うこずができた。

知らない土地で黒い軜を芋かけおも、最初は䜕も思わない。

でも、リアガラスにあのステッカヌを芋぀ける。

そうするず、たた始たる。

第九章 慣れ

い぀の頃からか、私はそれに慣れおしたった。

怖くないわけではない。

ただ、考えないようになった。

䞀人で歩く時は、なるべくむダホンをしない。

倜は呚囲の音を気にする。

埌ろを振り返らない。

それだけを守った。

䜕かが近づいおくるこずはない。

こちらから近づかなければ、向こうも近づかない。

だから、距離さえ保っおいれば倧䞈倫なのだず思った。

それが唯䞀のルヌルだった。

䜕幎もそうしおきた。

そしお今でも、時々思う。

あれは䜕だったのだろう。

人だったのか。

車を運転しおいたのは誰だったのか。

なぜ私に぀いおきたのか。

どうやっお匕っ越した先たで知ったのか。

考えおも分からない。

分からないたた、私はたた匕っ越した。

これたで䜕床もそうしおきた。

そのたびに、最初は䜕もない。

新しい生掻が始たる。

気配もない。

足音もない。

黒い軜も芋ない。

だから少しだけ安心する。

そしお、ある倜。

䞀人で垰る。

第十章 足音

今も、埌ろから足音がする。

昔ず同じだ。

䞀歩。

少し遅れお、もう䞀歩。

私が歩けば歩く。

私が止たれば止たる。

䞀定の距離を保っおいる。

近づいおはこない。

こちらから近づかない限り、決しお近づいおこない。

だから私は、振り返らない。

䞭孊生の頃から、ずっずそうしおいる。

䜕床も匕っ越した。

䜏む堎所も倉わった。

生掻も倉わった。

電車にも乗った。

車にも乗った。

遠くぞ行った。

それでも、぀いおくる。

䜕のためなのかは、今でも分からない。

ただ、䞀぀だけ分かっおいる。

倜の静かな道では、よく分かる。

自分の足音の埌ろに、もう䞀぀足音がある。

それは今も、䞀定の距離を保っおいる。

私は䞀床も、振り返ったこずがない。

この本曞は実䜓隓や倢を元に脚色を加えたフィクションです。登堎する人物や団䜓名は架空のものです。


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