死滅回遊を訪ねて。
こんにちは、お魚大好きみずうおです。
みなさん、夏はお好きですか?
僕は言わずもがな、大好きです。
理由は簡単、「生き物が活発だから」!
ところで、みなさんは「死滅回游」という言葉を耳にしたこと、目にしたことがあるんじゃないでしょうか?
そう、大人気某呪術漫画に出てきたアレです。
実は「死滅回游」というのは実際にある言葉で、現象なんです。
とりわけ、それはサカナで起きることが多く、そしてそれは毎年夏から冬にかけて、日本の近くの海の中で起きているんです。
簡単に説明すると、
「暖かいところに棲んでいるサカナたちが海流に乗って流されてきて、夏場は暖かいから流れ着いた先でも生きられるが、冬になると寒くなって死んじゃう」
というのが死滅回遊で、そんなサカナのことを死滅回遊魚と呼びます。
なかなか残酷な運命ですよね。
でもそのおかげで実は夏から秋にかけて、沖縄などで見られる生き物たちを本州の太平洋側で簡単に見ることができるんです。
そう、つまり夏は僕にとって、絶好の海日和なわけです!
ということで、8月初旬に死滅回遊魚が見られるところへ潜りに行ってきました。その日の記録を綴っていきます。
AM5時、朝焼けと共に出発。
ワクワクしすぎてうまく眠れず、レッドブルで翼を得てからフィールドへ向かった。
手始めに漁港へ。
朝の漁港は静かで、地元のおっちゃんが2人、釣りをしていた。
挨拶をしたら、クーラーボックスいっぱいのカマスを見せてくれた。
港の隅っこで、黒潮に乗ってやってくる魚の代表種のひとつである「ナンヨウツバメウオ」を見つけた。

彼らは幼魚の頃、枯葉に擬態している。
見た目はもちろん、仕草まで枯葉そっくりで、海の中では斜めだったり横向きになって、ゆらゆらと揺れるように泳ぐ。
大人になるにつれて体の色は変わり、成魚は全然別の見た目をしている。
このように幼魚と成魚で姿や模様が変わるサカナは少なくない。
朝日に照らされて水の揺らぎまでが見える。
造形美と生態の神秘、海流という巨大な自然のシステム。
その結果として生まれるサカナと僕たちの出会い。
隅々までじっくりと観察させてもらった後、そっと海へ離した。
次に、本命のビーチへ。
白い砂浜、エメラルドグリーンの海。強い日差しと蝉の声。
まさに南国、夏本番。
フィンとシュノーケルをつけて、海へ飛び込む。
浜から少し泳いだだけでサンゴ礁が群生していて、早速熱帯の魚たちが姿を現す。夢中になって魚たちを探し回る、追いかける。
死滅回遊魚として代表的なのは鮮やかな青色をしているルリスズメダイや、黄色と白黒が特徴的なチョウチョウウオの仲間だ。


どうやら越冬している個体も増えているらしく、明らかに大きなチョウチョウウオが群れになってそこかしこに泳いでいた。水中撮影できるカメラを片手に、とにかく片っ端から撮影した。

泳ぎ回っていると、岩の影に、ひらひらと特徴的な泳ぎ方をする小さな魚を見つけた。気になって潜ってみてみると、かの有名な「クマノミ」だった。
見つけた時は白い帯模様が二つ入っているのをみてカクレクマノミかと思ったが、帰って調べてみたところ普通のクマノミの幼魚らしかった。どうやらクマノミは幼魚の頃、イソギンチャクにたどり着けたかどうかで見た目が変わるらしい。
見つけた個体は黒っぽかったが、これはイソギンチャクにまだ辿り着くことができていない場合の姿らしく、思い返せば周りにイソギンチャクは見えず、小さな岩場に潜んでいた。
ひらひらとした泳ぎ方はコショウダイという魚の幼魚に似ており、どうやら擬態しているらしいが、コショウダイは毒があるわけでも強いわけでもなさそうで、不思議だ。
何度も潜っては片手で岩を持って体を固定し、もう片方の手でシャッターを切る。そうしてようやくいい具合の一枚を収めることができた。
岩場では熱帯の魚が多く見られ、サイズの大きな魚もたくさんみることができた。ただ水面を泳いで眺めているだけでも、なんだか水族館の水槽に自分が浮かんでいるような気持ちになれる。




中でも僕が興奮したのは、クエの仲間である「ノミノクチ」との出会い。彼は静かに岩の影に佇んでいた。
僕は、何を隠そうクエの仲間であるハタ類の魚が大好きなのだ。岩場の魚らしいゴツゴツとした容姿としゃくれた口元、種によって様々な模様と色が美しい。
見つけた時は種類までわからずとも、ハタの仲間であることは明白。すぐに潜って写真を撮ろうとしたが、いとも容易く岩の下に滑り込んでしまって、それきりだった。
唯一収められた写真を現像してみたところ、特徴的な背中の大きな黒斑紋が浮かび上がり、ノミノクチであるとわかった。
一般的によくみられるハタではない種類と出会えたこと、貴重な体験だった。

最後に別ポイントで出会ったのは貴重な死滅回遊魚である「サザナミヤッコ」。
某呪術漫画のアニメオープニングで見たことがある!と思われた方もいるかもしれない。だが、実はあの魚とこの魚、とっても似ているがあれは「タテジマキンチャクダイ」、別種なのだ。
どちらもキンチャクダイの仲間で、南の方に生息する。両種とも、幼魚と成魚で見た目が大きく異なるが、幼魚の時の姿がとにかく似ている。
見つけた時はどちらか判別はつかなかったものの、どちらにしろレアであることに間違いはなく、またその模様と色の美しさは格別だった。
大きさは5センチ程度だったが、輝くようなブルーとホワイトのラインは海の中でも鮮やかで、夢中でシャッターを切り続けた。
1日でたくさんの種類の魚と出会えたが、実は海水温というのは季節とおおよそ2ヶ月くらいのズレがある。つまり、これは序章に過ぎず、9月から10月まで死滅回遊魚のシーズンは続く。
可能なら、僕は毎日海を漂って、魚たちを見つめる海月になりたい。
もしくは、前世がそんな存在だったのかもしれず、人間に生まれた今世でも同じことに夢中になっているのかもしれない。
