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【書評】現代史を「レコンキスタ」として読む―『新書 世界現代史』|エッセイ「文明と国家」シリーズ 10

『新書 世界現代史』を読みながら、世界が「失われたものを取り戻す物語」で動いていることを強く感じました。ストロングマンの台頭も、右派ポピュリズムも、レコンキスタという構造で読むと一つの流れとして見えてきます。ロシアや中国の領土的野心やアメリカの動きもまた。今日はその視点から、この本の書評を書きます。

草津温泉日記 2026年4月11日

『蒼穹の昴』シリーズをすべて読了し、その後の現代史が無性に気になります。先日、久しぶりに書店で購入した数冊から『新書 世界現代史』を選び、夕べ読み終わりました。

『蒼穹の昴』シリーズが描く文明の危機。現代社会で進行中の文明のレコンキスタ。

今日は『新書 世界現代史』の書評を。


序論

『新書 世界現代史』は、現代の国際情勢を「事件の羅列」としてではなく、長期的な歴史構造として読み解こうとする姿勢が特徴の一冊です。複雑化する世界を理解するためには、価値判断よりも、背後にある物語や構造を把握する必要があります。本書は、そのためのマップとして機能する点に意義があように思いました。


1.現代史を俯瞰する視点


722年から1492年までのイベリア半島におけるレコンキスタの展開 出典:Wikimedia Commons

事件ではなく構造を読む

本書は、共同通信の記者がインタビューを通じて、国際政治・経済・宗教・思想といった複数の領域を横断し、現代史を「長期的な力学」として整理しています。原題は「レコンキスタの時代」。

レコンキスタ

レコンキスタという語には説明が必要かもしれません。スペイン史の用語です。

西ローマ帝国滅亡のころ、西ヨーロッパはほぼキリスト教の地となりました。しかし、8世紀、イスラム勢力がイベリア半島を占領し、後ウマイヤ朝が立ちました。

イベリア半島の北部に残った、カトリック勢力によるイベリア半島の再征服が「レコンキスタ」です。「失地回復」と翻訳されることもあります。

本書では、地域ごとの歴史的背景を簡潔に示しつつ、現在の政治言語を過去の延長線に置く構成は、それぞれのレコンキスタをどう読むか”という姿勢を提示します。

読みやすさと俯瞰性

専門領域に偏らず、世界を複数の物語の交差点として描く点は、本書の強みです。導入としての読みやすさと、俯瞰的な視点が両立しており、現代史の全体像を把握するための入口として適しています。


2.ストロングマンの台頭


ジャック=ルイ・ダヴィッド(1748年~1825年):グラン・サン・ベルナール峠でアルプス山脈を越えるナポレオン・ボナパルト   出典:Wikimedia Commons

個人ではなく「物語」の問題

本書が示す重要な視点は、習近平・プーチン・トランプといったストロングマンの台頭を、個人の資質のみではなく、歴史的物語の再活性化として捉えることにあります。

  • 中国では「百年国恥」からの回復

  • ロシアでは「大国としての地位」の回復

  • アメリカでは「かつての繁栄」の回復

これらは政治的立場に関係なく、「失われたものを取り戻す」物語として共通しています。つまりレコンキスタです。

回復の構造

この「回復の物語」は、歴史学でいう レコンキスタ(失地回復) の構造と重なります。本書は、この構造が現代政治の言語にどのように組み込まれているかを示しています。

  • 中国は「清の領地」を

  • ロシアは「ロマノフの領地」を

  • アメリカは「ドル覇権」と「唯一の大国の地位」を

レコンキスタの視点から、3人のストロングマンの主張は、理解可能となります。地球上で、この3つが同時成立できないことは自明でしょう。


3.右派ポピュリズムの位置づけ


第三帝国時代の機関車の鷲のマーク 出典:Wikimedia Commons

共同体の喪失と回復

右派ポピュリズムの台頭もまた、回復の物語の一形態として理解できるでしょう。各地のポピュリストはグローバル化や格差、文化的変動によって揺らいだ共同体意識を「取り戻すべきもの」と語る点に、構造的な共通性があります。

歴史・伝統

彼ら彼女らは「歴史・伝統」を語る。「守る」と言う。ときに歴史を修正してまで。

これらのナラティブには理解可能なものもありますが、日本人である私にはまったく意味不明のものもあります。

今年で建国250年となるアメリカ。そもそも移民が、先住民を迫害して成立した国です。建国時には13州に過ぎず、19世紀のメキシコとの戦争や南北戦争を経てこそ、今の形となりました。

アメリカの良き伝統?笑止。「奥様は魔女」でも観ていてください。

しかし、本書では、これらを単なる政治運動ではなく、社会が抱える喪失感の表現として位置づけています。


4.リベラル前提の再検討


彼女は何故、大統領になれなかったのか  出典:Wikimedia Commons

分析のための姿勢

本書が示唆するのは、現代史を読む際に「リベラルが正しい」という前提を置かない方が、構造が見えやすくなるという点です。

筆者はリベラルなジャーナリストという位置づけを離れません。本書を読む際に、その事実を忘れない方がよい。

これは政治的評価ではなく、分析のための前提条件の調整です。リベラル民主主義の枠組みだけでは説明できない現象が増えている現在、価値判断よりも「物語の構造」を読む姿勢が求められます。

「権威主義」「独裁」「右派」

これらが、常に悪なのか?ある文脈では全く悪ではありません。これらの勢力が、左派や他国政治の分断を図るために情報戦を仕掛けていることを、本書は描いています。

しかし、対立する側も対抗策として様々な手段を使っています。

呼応する「右派ポピュリズム」は、そもそも、呼応する「左派リベラリズム」が存在するから、立ち現れました。そういった視点を持って読み進めたい1冊です。


結語

『新書 世界現代史』は、現代の複雑な世界を理解するためのマップとして有用な一冊です。

事件の背後にある長期的な物語を意識させる点に価値があり、深度を求める読者には物足りなさもありますが、その余白が思考を刺激します。現代史を「物語の構造」として読むための良い入口となる本かもしれません。


最後に

新書は、筆者の世界観が濃厚に存在するのに「事実を述べている」という体裁になっています。そのことを意識しながら読み進めるべきではないでしょうか。

ではまた。







#創作大賞2026 #エッセイ部門


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