昭和、男もつらかった(番外)軍歴を辿る35 恩師のご尊父(12)

 熊本出身の恩師の、戦死されたご尊父の軍歴を探すお手伝いをしている。熊本県庁に軍歴資料を請求する前に、ご尊父の除籍謄本をまず取得しなければならない。戸籍があった(現)K市へ除籍謄本の代理請求を行うことにして、恩師から委任状をいただいたうえで、わたしから「郵便による戸籍謄抄本等の代理請求」を行った。

 …というのが前項(11)まで。

 郵送した請求はうまくいけば4、5日でK市へ届くだろう。請求書の記入や同封書類については事前に長い長い電話をかけて逐一確認したから、内容は問題ないはずだ。もしかしたら届いたその日に除籍謄本を交付して、すぐに返送してくれるかもしれない。とすれば、5月最終週の前半にも、除籍謄本がわたしのところへ届く可能性がある。

 と、「良い方」へ想像を膨らませていた、まさに5月の最終週の前半のある日。外出中スマホに着信履歴があった。096で始まる番号はK市市民課のそれである。

「わ、もしかして『除籍謄本を交付して今日送りました』というお知らせかしら!?」
と一瞬喜んだが、そんなことをわざわざ連絡してくる役所はまずない。電話が来るのは問題があるときに決まっている。緊張しつつ静かな場所を選んで折り返しの電話をかけた。

 用件は「申請した戸籍の筆頭者は誰ですか」であった。送った書類はすべてコピーを取ってあるが、外出先なので具体的な項目と記入内容はうろ覚えだ。

「亡くなった時点での筆頭者は〇〇さん(ご尊父)のはずですが、亡くなったあとは奥様かもしれません。でも、事前にそちらへ問い合わせて書き方を確認したとき、奥様のお名前まで必要と言われなかったので調べていません。必要なら調べますが?」

 相手はちょっと戸惑ったようだったが「わかりました、これで進めます」と言う。「送った内容で除籍謄本は交付されますか?」と聞いたら「審理中ですので…」。

 審理って、あなた。裁判でもあるまいし。話すうち提出前電話で確認したあれこれを思い出してきた。だいたい「こう書けばいい」と言われたとおりに書いたんですけど。

 いかん、抑えて抑えて。「ではどうぞよろしくお願いいたします」と言ったら「何かありましたらまた問い合わせます」。再びムッときたが、抑えて抑えて!

 帰宅後早速提出した書類のコピーを広げてみた。父親と長男(恩師)のつながりを示す謄本がほしい、という書き方はできるが、その他の家族について書く欄も必要もないように見える。

 しかし、参考としてご母堂のお名前をいただくべく、わたしは恩師に電話した。幸いすぐにつながり、教えていただくことができた。

 続けてK市へ電話する。先ほどの担当者に繋いでもらい、追加でお知らせしたい情報として、ご母堂のお名前と提出前には必要と言われなかったご尊父の生年月日を伝えた。

 担当者はどうやら除籍謄本のデータを見ている風で、わたしからの情報を納得しながら聞いている雰囲気があった。

 「いけそう」と思ったわたしは「ついでで恐縮ですが、交付される除籍謄本は、最近のデジタル様式ですか、それとも昔の縦型のものですか」と尋ねた。つい1時間ほど前「審理中」と言った担当者は「縦型のものです」とあっさり教えてくれた。

 やったね、交付されるってことじゃん。

 とは言えまたどこで躓くかわからない。自分の父親のときは、住んでいる自治体が法務省データにアクセスし小一時間で交付してもらえた(広域交付)。ひと様の謄本、それも遠方の自治体となるとこうもハードルが高いのか。除籍謄本が届いて中身を見るまで安心できない。

 恩師のご尊父の軍歴を辿る旅はまだまだ続く。

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