見出し画像

米国はイランとの戦争に敗れた -フランシス・フクヤマはイランの罠にはまる米国こそが「ならず者国家」と見なされるべきだと主張する

 今日27日、拙著『イラン戦争 アメリカ・イスラエルの策略』(平凡社新書)が発売される。不当な戦争による外部からの圧力によってイランの体制転換などできないことを拙著では強調したが、そればかりかトランプはイランとの苦しい交渉に追い込まれ、交渉が終わるたびにネタニヤフに電話を入れるようになった。

よろしくお願い申し上げます


 イランは停戦の条件にレバノンのそれが含まれること、またイラン資産の凍結解除を要求している。米国とイランが停戦中にもイスラエルはレバノンでの攻撃を継続した。米国は21世紀に入ってイラク、そしてアフガニスタンから事実上の敗北で撤退したが、イランでも同様の道を歩もうとしている。

 イランはホルムズ海峡を交渉の手段とし、また世界の主要な産油国である湾岸諸国に対してもドローンやミサイルで攻撃できるところを見せている。トランプとネタニヤフは、イランのドローン、ミサイル、小型船、機雷による航空・海軍力を壊滅することができず、他方イランはホルムズ海峡を蛇口のように開け閉めできることを証明した。

 米国はイラク開戦の時と同様に、ネタニヤフとイスラエルのモサドの偽情報に踊らされ、ネタニヤフとモサドのデイビッド・バルネア長官は、1月にイラン国内で反政府デモが高揚すると、イラン・イスラム共和国体制は非常に弱体化しており、最高指導者を暗殺したらせいぜい数日しかもたないとトランプにイラン攻撃を説得した。

 イラン・レバノン戦争を継続したいネタニヤフは、トランプ大統領がイランと覚書を締結するのを阻止しようと必死でいる。イスラエルはイラン戦争に勝利し、湾岸アラブ諸国との同盟関係を築き、イスラエルがそのリーダーとなることを目指してきた。この同盟にはUAEの大統領ムハンマド・イブン・ザイード(MBZ)だけが同調したが、UAEがOPECから脱退したのもその表れだった。イスラエルは地域覇権国として武器、ハイテク、データ、貿易の中心となるという構想をもっている。(東アジアでその構想に乗っているのは日本だが・・・)

イランの女優とモデルのMahlaga Jaberiがカンヌ映画祭で洋風ドレスを着用した。 2024年5月25日 https://www.facebook.com/groups/977540753560496/posts/1151434752837761/


 イランが戦争に敗れ、弱体化すれば、トランプがこの地域の覇権を掌握し、イスラエルを通じて地域を支配するという構想だった。しかし、戦争が進行するうちに、湾岸の主要国であるサウジアラビア、カタール、クウェートは米国がこれらの国を守ることができないことが判明したために、トルコとパキスタンに注目するようになった。

 パキスタンは中国製PL-15ミサイルを保有し、インドの最新鋭フランス製ラファール戦闘機を撃墜することができることを見せつけた。パキスタンが交渉役として重要な役割を担うようになると、UAEのMBZは、パキスタンに借款の返済を迫り、圧力をかけるようになったが、サウジアラビアがパキスタンに資金を提供し、UAEへの返済を可能にした。

 イラン戦争が進行するにつれて、サウジアラビア、パキスタン、トルコ、カタール、オマーンで、クウェートの同盟関係ができ上がった。これらの国の多くはトランプの「平和委員会」のメンバーだったが、イスラエルがイラン戦争を始めると、イスラエルによるガザの半分の地域、レバノン南部、またヨルダン川西岸の3分の2の恒久的支配に反発の声を上げるようになった。

トルコ、サウジアラビア、パキスタンの同盟が築かれつつある


 この同盟はイスラエルとUAEがまさに望まなかったものだ。これらの国はイスラエルがソマリランドに大使館を開設することに反対する声明を出したが、この声明にUAEは署名しなかった。

 トランプ大統領はサウジアラビアにアブラハム合意に調印するよう圧力をかけるかもしれないが、冷めた反応しか得られないだろう。実際、トランプは25日、サウジアラビア、カタール、パキスタン、トルコ、エジプト、ヨルダンに対し、イ​スラエルとの国交正常化を目的とする「アブラハム合意」に一斉に参加するよう要請‌したことを明らかにしたが、パキスタンは直ちに拒否した。イスラム系諸国には、多数のムスリム同胞であるガザやレバノン市民を殺害するイスラエルと国交正常化を行うことなど不可能だ。

 UAEはサウジアラビアをイランとの軍事衝突に巻き込もうとしたが、成功しなかった。サウジアラビアはイランと戦うことなく、またイエメンのフーシ派との停戦を維持した。

 戦争によって、イランが湾岸地域のもう一つの主要なプレーヤーとして位置づけられることになった。イランが湾岸地域のすべての石油・ガス生産のカギを握っていることは日本に湾岸諸国の原油が届かないことからも明らかだ。また、イランはオマーンと協力してホルムズ海峡の事実上の支配権を二度と手放すことはないだろう。

 政治学者のフランシス・フクヤマは今こそアメリカがならず者国家と見なされるべきだと主張し、中国は世界の安定の声となり、将来の国際合意の中心、あるいは中心となるべきだと指摘するようになった。日本の高市首相はこの国際政治の構造変化にまったく意識する様子がない。

いいなと思ったら応援しよう!