8月9日は日本の軍隊が国民を捨てた日 -関東軍は国民を守ることなく逃亡し、満州では子ども、女性、老人など8万人が犠牲になった
8月9日は、1945年に日ソ不可侵条約を破ってソ連軍が旧満州帝国になだれ込んだ日だった。
満州の守備に当たっていた関東軍はソ連軍侵攻の際、一般市民や満蒙開拓団などの日本人を十分に避難させず、置き去りにして後退・逃亡してしまった。関東軍は、満ソ国境地帯から後方や朝鮮との国境方面へと一目散に撤退し、各地に散らばっていた約27万人の満蒙開拓団や一般邦人に撤退や危険の情報を十分に伝えず、実質的に見捨てた。軍に守られず取り残された開拓団員などの多くは、老人、女性、子供であり、過酷な逃避行やソ連兵・現地の人々からの襲撃、病気などにより、約8万人が死亡する悲劇となった。

現在、台湾有事の最前線とも言える与那国島には230人の自衛隊員が配置されているが、自衛隊員は家族同伴で暮らしている。「れいわ新選組」の伊勢崎賢治議員も指摘しているが、家族同伴で防衛の「最前線」に駐留する軍隊は日本の自衛隊ぐらいしかないようだ。有事となれば、自衛隊は島民よりも家族を優先する可能性がある。これでは満州で住民を置き去りに撤退した関東軍と同じで、日本政府は関東軍の歴史的教訓から学んでいない。政府はアジア・太平洋戦争と同様に、沖縄を最前線にしつつあるが、自衛隊による防備よりも外交をしっかりすべきだろう。
ところが、高市首相は台湾有事が日本の集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」になり得ると発言したまま、中国の強い反発にもかかわらず撤回する様子がまるでない。中国からの観光客が激減しようが、中国がレアアースの輸出規制を行い、対中輸出産業が迷惑を被ろうが、高市氏は発言をまったく撤回しないように見える。国民の利益を大いに損なう無用な強情と空回りしたプライドとしか見えない。
105歳で亡くなった日野原重明医師は「戦争はいじめと同じです」と語っていた。2015年発売した『戦争といのちと聖路加国際病院ものがたり』の出版会見で「武器には武器、暴力には暴力で応じる悪循環を断ち切り、戦争ではなく話し合いで物事を解決する」ようにと訴えた。強い側についていればそれが正義だというのは、世の中のいじめと同じである。日本は2003年のイラク戦争を支持したが、強いアメリカを支持すれば正しいと考え、国際社会の「いじめ」に加担するようでは他の諸国から敬意を得られない。アメリカの戦争は、アフガニスタン、イラク、イランに見られるように、常にアメリカよりも軍事的に弱い国を相手にしている。理不尽な戦争を行うトランプ大統領に抱きつく高市首相は国際社会からは、FIFAのインファンティーノ会長と同様な「ゴマすり」をしていると見られているに違いない。

2018年11月に亡くなった女優の赤木春恵さんは日本軍の将兵たちの慰問のために1945年2月に満州に渡り、満州で終戦を迎えた。暴行やレイプの恐怖に怯え、さらに、伝染病で命を落としかけたこともある。ソ連軍兵士たちを欺くために、髪をおしろいで白くして老女に扮して難を逃れた経験もあった。「満州からの引揚で決意したこと」(『明日への言葉』)の中で、「男の人が戦争を起こすんじゃないですか、私たちの頃は本当に女の人は何も知らない、ただただ銃後を守る、人間同士の殺し合いなので、いやですね。もう戦争は駄目です、戦争をしないでほしい。」と述べている。赤木春恵さんは「男の人」が戦争を起こすと語ったが、現代の戦争は女性も戦争を起こすようになっている。イギリスのサッチャー首相が起こしたフォークランド紛争、大規模戦争ではなかったが、イスラエルのゴルダ・メイア―首相はミュンヘン・オリンピックでイスラエルの選手・コーチが殺害されると、ヨーロッパや中東でのパレスチナ人指導者の暗殺を指示した。

少女時代を満州で過ごした作家の澤地久枝さんは、「終戦直後のある日のこと、二人のソ連の将校が家に押し入ってくると、私にサーベルを突きつけたのです。必死で抵抗し、一時は将校たちを追い払いましたが、しばらくするとまた戻ってきた。私は物置に隠れたのですが、彼らは力づくでその扉を開けようとする。「もう助からない」と思いました。その男たちを必死に制止したのは、私の母でした。」と述べている。1972年にモスクワの空港でソ連兵を見た時に体が凍りつくような想いをしたという。
(澤地久枝『14歳<フォーティーン>』集英社新書)

岐阜県・旧黒川村の女性たちは戦争が終わると、開拓団の幹部から「ソ連の兵隊を安全のために利用するためにはその代償に「あんたらなんとか頼む」と言われ、親や兄弟を守るために性接待をさせられた。自分たちが歯止めになるならと思って応じたという。開拓団の17歳以上のおよそ15人の若い女性たちがそのつらい役目を担った。女性は開拓団の幹部に「頼む」と言われた時の言葉を今でも忘れられないと語っていた。

女性たちの証言は、戦争のむごさ、不合理、非情、権力の横暴を伝える内容だったが、女性たちの語りたくないことを語った勇気が日本の平和を守る声になればと願う。これらの声に接して何も感じることがなければ、高市氏は人間ではない。いずれにせよ、8月9日は軍隊はいざとなったら国民を守らないということを教える日で、そんな事態ならないように政治家・官僚には外交をしっかりしてほしい。
※表紙の画像はソ連軍の満州侵攻
http://historyjapan.org/invasion-on-manchuria-by-soviet-2
