スタッフに名前を呼ばれただけなのに。
30代前半、
大して偉くもないのに、
偉そうにテレビディレクターとしてブイブイ言って(死語)いた頃の話です。
普段から、足でネタを稼ぐタイプのわたし、
【経験はネタ】
を座右の銘として、
とにかく気になったことは片っ端から体験していました。
田中康夫の東京ペログリ日記にいつも登場していた、
高級ホテル・パークハイアット東京。
一度は泊まってみたいな〜という話を友人に話をしていたら、
たまたまセールで良い部屋が少しだけリーズナブルに出ていたのを発見!
これは泊まらない手はないと、
背伸びをして宿泊を決行。
ただでさえ、大都会東京。
新宿のビル街にそびえ立つパークハイアット。
いつになく緊張するわたし。
と同時に、
非日常の世界ですから、
目に入る全てを記憶に残そうと目はらんらん。
瞳孔はかなり開いていたと思います。
高級ホテルのロビーは、良い香りがしました。
チェックインのフロントスタッフは、
とても優しく、
北海道から来たことをねぎらってくれました。
そして部屋に入ったら、
出張に使うビジネスホテルとは違う雰囲気。
ゆったりとした空間、
すべすべのシーツ、
そして窓から見える大都会のパノラマ!
北国でちまちま暮らしている自分はそこには居ませんでした。
部屋中を探検した後、
新宿の街へと繰り出すべく、
エレベーターを降りたその瞬間。
「みやち様、行ってらっしゃいませ!」
エレベーター前にいたスタッフさんに、
声をかけられたのです。
えええええええええええ!
わたしはびっくりたまげました。
だってチェックインの時のフロントスタッフではなかったはず。
「どうしてわたしの名前を知っているの?」
その疑問で頭の中がぐるぐる
今では、
「ああさすが高級ホテルね、一流だわ!」と思うけれど、
その時は、
そういう扱いを受けたことがないものですから、
驚くしかなかったのです。
とはいえ、
「みやち様、行ってらっしゃいませ」と言われ、
悪い気はしませんでした。
どころか、
こんな一見さんをもちゃんと扱ってくれたことに、
とても嬉しく誇らしく感じたのを覚えています。
テレビディレクターを卒業した後、
わたしは美容の会社で働きました。
そこで面白いことを知りました。
上位顧客(足繁く通ってくれる大ご常連)に対し、
各サロンが大事にしていたのが、
【名前呼び】
だったのです。
それを推進していたマネージャーが、
「上位顧客は、値引きや有り体なサービスにはなびかない。
他のお客様との差別化を、ちゃんと目で見える形で示してあげることが大事」
と話していました。
あああああああああ!
これは、
あのパークハイアットでの衝撃の体験!
エレベーターを降りた瞬間の、
「みやち様、行ってらっしゃいませ!」
ではありませんか!!!
パークハイアットの出来事が、
転職先が経営するサロンでも行われていたのです。
名前を呼ばれることで嬉しかった経験、
その裏に、
このような接客の極意があったとは、
当時のわたしは夢にも思いませんでした。
美容会社のマネージャーにわたしは質問しました。
「つまりこれは、
上位顧客の名前を呼ぶことが、
あなたは特別な存在ですよ!
ということなんですね?」
顧客をこういう形で満足させる意味が、
ようやくここで理解できました。
あの日の「みやち様」が、
何年も経ってからようやく腑に落ちたのです。
自己肯定感が高まる
承認欲求が満たされる
なんて素敵なことでしょう。
これはお金を払ってでも体験すべきことだなと、
心から思ったわたしでした。
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たった一度の接客で、「また来たい」は簡単に消えてしまうのです。
▶なぜ、私は同じホテルに泊まるのだろう。
選ばないことで、本当に考えたいことに脳みそを残していました。
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