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星の牧場/庄野英二【読書記録】失った戦争の記憶と優しい幻想の物語-夢と現実のはざまで

✳︎衣咲(えさき)です

本屋さんで、ふと装丁にひかれて手に取った一冊。
庄野英二さんの『星の牧場』。

柔らかな文章のなかには、戦争の記憶と夢のような幻想が共存していて、読みながら何度も立ち止まりました。

育児と仕事のあわただしさの中でふと息を抜きたくなったとき、こんな物語に出会えるのは、私にとっての小さな奇跡のようです。


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馬の蹄音がよみがえる─戦争を生きたモミイチの記憶

この物語の主人公は、復員兵のモミイチ
彼はかつて、鍛工兵として召集され、馬の蹄鉄を打ちつける仕事をしていました。そこで出会ったのが、「ツキスミ」という馬。モミイチはその馬の世話をしながら、戦地での日々を過ごします。

けれど、戦争の記憶はほとんど彼の中に残っていません
それでも牧場へ戻ってから、ツキスミの蹄音が耳に蘇ってくるのです。たしかに別れたはずなのに、あの音が聞こえる。

作者の庄野英二さんもまた、復員兵だったといいます。モミイチの静かな心のゆらぎには、きっと庄野さん自身の記憶も反映されているのだろうと感じました。

静かな文章には、やさしいひらがなが多く使われていて、読む者の心をほぐしてくれるような柔らかさがありました。


星ふる夜の夢─ジプシーたちと出会う幻想世界

ある夜、モミイチは山の中でなにかに導かれるように、不思議な人たちと出会います。

クラリネットを吹くハチカイ
ヴァイオリンを奏でる少女
波田准尉に似たティンパニ
トランペット、チューバ、ファゴット…

彼らは山のなかをさまようジプシーたち。草の上で眠り、夜明けには鳥の声で目覚め、りすと一緒にかごの中で眠る…。夢なのか現実なのか分からない、でもどこまでも美しい時間が流れます。


心の空洞を埋めるということ

物語の終盤、牧場に戻ったモミイチは、再び夢か現実か分からない不思議な夜をツキスミとともに過ごします。

戦争という暗くて重たい現実に向き合いながら、それを語りすぎず、そっと包み込むような作品。心にできた空洞は、埋められるものなのか。あるいは、ただ寄り添うしかないのか。

忙しい毎日の中で、ふと足をとめて読むには、もしかすると重たい本かもしれません。でも、子どもたちの寝顔を見ながら、命について思いをめぐらせる今の私には、とても大切な一冊になりました。

またいつか読み返したい。きっとその時、違う感情があふれるんだろうなと思います。


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児童文学者で小説家の庄野英二の代表作になる長編ファンタジー小説。世界大戦の復員兵イシザワ・モミイチは戦地で、愛馬ツキスミを失い、心に深い傷を負って、記憶もまた失っている。ある日、牧場で働くモミイチは、馬の蹄の音を聞き、それに導かれるように山に分け入ると、クラリネットを吹く男に出会う…。刊行当時、数々の名だたる児童文学賞を受賞した名作の復刊。

内容紹介(「BOOK」データベースより)


「星の牧場」を含めて先月はいつもよりたくさんの本を購入しました

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