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劄想シティ 第話


13

「音もなく忍び寄るっおいうや぀ですかね」
 ず須田が蚀う。
「䜕が」
「や぀らですよ、や぀ら。悪の組織のこずですよ。だっおあの枋谷での事件以来、目だった動きが無いじゃないですか。䜕だか䞍気味ですよね」
「そうだな」
「兄さん、暇だからこれ行っおみたせんか」
「誰が兄さんやねん」
 須田が僕の目の前に出した雑誌にはアむドルの蚘事が茉っおいた。
「いや、これね、ぎったりだず思うんですよ、僕らに」
「䜕で俺がお前みたいなアむドルオタクず䞀緒にされるんだよ」
「そうじゃなくお、ここですよ」
 僕はたじたじずアむドルの蚘事を読んだ。

 それは、ニュヌタむプなアむドルなのだずいう。
 『リアル・゚ンゞェルス』ずいう䞉人組の矎少女グルヌプなのだが、圌女たちはテレビや雑誌など、メディアにはいっさい出ない。
 圌女たちの顔や姿は䞀般には明かされるこずが無く、それを芋るこずができるのはラむブなどのむベントのみなのだ。肉県でしか芋るこずができない倩䜿。それが『リアル・゚ンゞェルス』なのだ。そのリアル・゚ンゞェルスの初のむベントが行われる。

 興味を匕くのはその参加条件だ。このむベントには遞ばれた者だけが参加できる。
 その条件ずは『超胜力者』だ。
「超胜力者」
 ず僕は思わず叫んだ。

「参加資栌は、人䞊みはずれた想像力を持ち、読唇術や掞察力にたけた超胜力者であるこず。参加者にはテストが実斜され、そのテストに合栌したものだけがむベントぞの参加が可胜」
 僕はその蚘事を読み䞊げた。
「須田君、匂うな」ず橘博士が蚀った。
「え、僕昚日ちゃんずお颚呂入りたしたけど」ず須田。
「私もそれに参加する」ず和矎。
「え、姉さん、オタクだったんすか」
「い぀だ、これ っお、今日ゞャン」

14

 僕ず和矎ず須田は、橘博士の指什に埓っお出動した。
 行き先はアむドルむベントの参加テスト実斜䌚堎。

 䌚堎の雰囲気は、異様なものだった。
 䜕もない広堎に仮蚭テントず仮蚭トむレのようなものが䞊び、あずはヒトヒト人で埋め尜くされおいる。
 ずもかく、集たっおいるのは顔も姿も公開されおいない無名のアむドルのむベントに参加しようずいう茩だ。マニアックもマニアック。おたけに劙な参加条件たで぀いおくるのだから䜙蚈だ。たるでアニメのむベント䌚堎のようだ。
 参加者は個別にテストを受けるこずになっおいる。仮説テントに蚭けられた受付で必芁事項を蚘入し、゚ントリヌナンバヌが蚘茉されたカヌドを受け取る。
 テストは䞀人䞀人個宀にお行われる。広堎に蚭眮された仮説トむレのようなナニットの前にたくさんの人々が䞊んでいる。たるでトむレの順番埅ちのようだ。
 僕らは別々の列に䞊び、順番を埅った。

 僕の順番が来た。
 僕は仮蚭トむレのようなそのドアを開いお䞭に入った。
 䞭はやっぱり仮蚭トむレのようだった。ただ、内壁は真っ黒く塗られおいる。狭いスペヌスの䞭倮に怅子があり、そこに座るようにず音声ガむドで促される。
 僕がその怅子に座っおドアを閉めるず、目の前の壁に蚭眮されたむンチほどの液晶ディスプレむのスむッチが入り、映像がスタヌトした。
 ディスプレむにはこの䞖のものずは思えないような矎少女のコンピュヌタ・グラフィックスが登堎した。そのコンピュヌタ・グラフィックスは実に良くできおいお、リアルで、たるで本圓の人間のようだった。
 でもどうしおコンピュヌタ・グラフィックスなのか

「初めたしお、リアル゚ンゞェルスの杉原なおこです」ずディスプレむに衚瀺された矎少女が話し始めた。
 女の声は、アニメの䞻人公のようだった。
「私の自己玹介をしたすね。身長はセンチ。スリヌサむズは、䞊から、、です。幎生たれの歳です」
 画面は氎着姿の矎少女の党身像が前、暪、埌ろず䞀呚する。
「私たちのデビュヌシングル『恋の悩みも䜕でも解決したす』を聎いおくださいね」
 ず杉原なおこが蚀い、プロモヌションビデオがスタヌトした。

 いかにもアむドル゜ングずいった感じの明るくおポップな音楜が流れ、人組の矎少女が登堎した。
 しかしそのビデオではっきりず顔が映し出されるのは杉原なおこのみで、それ以倖のメンバヌの顔や姿はなぜかはっきりずしない。ビデオは杉原なおこだけがフュヌチャヌされた圢で構成され、海蟺を氎着姿で走る杉原なおこが映し出された。
 プロモヌションビデオが終了するず、液晶ディスプレむが消え、呚りが明るくなった。
 そしお僕は䞀瞬にしおお花畑の真ん䞭に立っおいた。遠くの方から走っおくるアむドル衣装を身に着けた杉原なおこ。なおこは僕の目の前で止たった。

「どうも初めたしお、杉原なおこです。今日は私たちのデビュヌむベントに来おくれお、ありがずう」
 目の前に立った杉原なおこは、ずおも矎しかった。これは立䜓映像か なおこはコンピュヌタ・グラフィックスではなく、リアルな人間に芋えた。
 なおこは僕のたえに手をさしのべた。僕はなおこの手を握ろうずしたが、握れない。これは、劄想䞖界だ。

 しばらくなおこず䌚話をしたあず、呚囲が真っ暗になり、目の前の液晶ディスプレむのスむッチが入った。
「おめでずうございたす。第䞀ステヌゞクリアです。次のステヌゞにお進みください」
 ず音声ガむドが蚀った。

 がたん、ず郚屋がゆれ、動きだした。
 ボックス党䜓が回転したようだった。
 もう䞀床ナニットががたんず揺れ、ドアが開いた。
 目の前にはたた同じようなボックスが蚭眮され、『第二ステヌゞ』ず曞かれおいた。僕は第䞀ステヌゞのボックスから倖に出お、第二ステヌゞぞず進んだ。

 第二ステヌゞのボックスに入るず、液晶ディスプレむにたた、コンピュヌタ・グラフィックスの矎少女が登堎した。
「初めたしお、リアル゚ンゞェルスの岩䞋久矎です。私の自己玹介をしたすね。身長はセンチ、スリヌサむズは、䞊から、、です。幎生たれの歳です」
 画面は氎着姿の矎少女の党身像が前、暪、埌ろず䞀呚する。
「私たちのデビュヌシングル『恋の悩みも䜕でも解決したす』を聎いおくださいね」
 ず岩䞋久矎が蚀い、プロモヌションビデオがスタヌトした。
 いかにもアむドル゜ングずいった感じの明るくおポップな音楜が流れ、人組の矎少女が登堎した。
 しかしそのビデオではっきりず顔が映し出されるのは岩䞋久矎ず杉原なおこのみで、もうひずりのメンバヌの顔や姿はなぜかはっきりずしない。ビデオは岩䞋久矎だけがフュヌチャヌされた圢で構成され、海蟺を氎着姿で走る岩䞋久矎が映し出された。
 プロモヌションビデオが終了するず、液晶ディスプレむが消え、呚りが明るくなった。
 そしお僕はたた、䞀瞬にしおお花畑の真ん䞭に立っおいた。
 遠くの方から走っおくるアむドル衣装を身に着けた岩䞋久矎。久矎は僕の目の前で止たった。

「どうも初めたしお、岩䞋久矎です。今日は私たちのデビュヌむベントに来おくれお、ありがずう」
 目の前に立った岩䞋久矎は、ずおも矎しかった。久矎は僕のたえに手をさしのべた。僕は久矎の手を握る。こんどはかすかだが、手の感觊があった。しかしあいかわらずそれは、珟実ずは思えなかった。

 しばらく久矎ず䌚話をしたあず、呚囲が真っ暗になり、目の前の液晶ディスプレむのスむッチが入った。
「おめでずうございたす。第二ステヌゞクリアです。次のステヌゞにお進みください」
 ず音声ガむドが蚀った。

 がたん、ず郚屋がゆれ、動きだした。
 さっきず同じようにボックス党䜓が回転し、ドアが開いた。僕は目の前にある第䞉ステヌゞず曞かれたボックスぞず進んだ。液晶ディスプレむにたた、コンピュヌタ・グラフィックスの矎少女が登堎した。

「初めたしお、リアル゚ンゞェルスの小出友子です。私の自己玹介をしたすね。身長はセンチ、スリヌサむズは、䞊から、、です。幎生たれの歳です」
 画面は氎着姿の矎少女の党身像が前、暪、埌ろず䞀呚する。
「私たちのデビュヌシングル『恋の悩みも䜕でも解決したす』を聎いおくださいね」
 ず小出友子が蚀い、プロモヌションビデオがスタヌトした。

 いかにもアむドル゜ングずいった感じの明るくおポップな音楜が流れ、人組の矎少女が登堎した。こんどはメンバヌ人ずもの顔がはっきりず映し出された。しかしながらあいかわらずビデオは小出友子だけがフュヌチャヌされた圢で構成され、海蟺を氎着姿で走る小出友子が映し出された。
 プロモヌションビデオが終了するず、液晶ディスプレむが消え、呚りが明るくなった。
 そしお僕はたた、䞀瞬にしおお花畑の真ん䞭に立っおいた。遠くの方から走っおくるアむドル衣装を身に着けた小出友子。友子は僕の目の前で止たった。

「どうも初めたしお、小出友子です。今日は私たちのデビュヌむベントに来おくれお、ありがずう」
 目の前に立った小出友子は、ずおも矎しかった。友子は僕のたえに手をさしのべた。僕は友子の手を握る。こんどはしっかりず手の感觊があった。しかしあいかわらずそれは、珟実ずは思えなかった。
 しばらく友子ず䌚話をしたあず、呚囲が真っ暗になり、目の前の液晶ディスプレむのスむッチが入った。

「おめでずうございたす。党ステヌゞクリアです。リアル゚ンゞェルスのステヌゞをお楜しみください」
 ず音声ガむドが蚀った。ボックスが回転し、ドアが開いた。目の前には『リアルシアタヌ』ず曞かれた建物があった。

※ ※ ※

 その建物は名ほどが収容できる小劇堎だった。
 僕はその䞭ぞず入堎する。しかしその䌚堎内は静たり返っおいた。そう、そこには誰もいなかったのだ。
 このテストに合栌したのは今のずころ、僕䞀人だずいうこずだ。

 しばらく僕は静寂の䞭にいた。
 䜕か倉だ。そうだ。倉なのはこの静寂だ。アむドルのむベントずはずおも思えない。真っ黒な壁面に薄暗い照明。鮮やかな照明ず華やかな音楜が鳎れば、それはそれでそれらしいのだが、そのどちらもここにはない。僕はここで、リアル゚ンゞェルスの登堎を䞀人で埅぀のか

 静寂の䞭では時間はずお぀もなく長く感じられた。
 ずいぶんず埅った埌に次の合栌者が珟れた。それは須田明圊だった。

「ああ、兄さんも合栌できたしたか」
 ず須田はうれしそうに僕の暪に座った。その兄さんはやめおくれ、ず僕は思うのだ。
「しかしたあ、ハヌドでしたねえ、このテスト」
「ハヌド」
「ええ、プロモヌションビデオが終わった埌がき぀かったですよ」
「䜕が」
「䜕がっお、兄さんもテストやったでしょう」
「でも特にハヌドじゃなかったけど」
「え だっおビデオが終わっおからいきなり真っ暗になっちゃっお」
「真っ暗」
「そうですよ。それで圱の声みたいなのが『想像しろ、想像しろ』っお」
「䜕だそりゃあ」
「兄さん、違ったんですか」
「俺は、ビデオが終わったらいきなりあたりが明るくなっお」
「えヌヌ」
「どうなっおるんだ」

 そうこうしおいるうちに、䞉人目の合栌者が珟れた。それは、栗山和矎だった。
「姉さんも、盞圓なオタクだったんですね」
 ず須田が蚀った。和矎は須田の蚀葉を無芖しお無蚀で歩いおきお、僕の右隣に座った。

「これは単なるアむドルむベントじゃあないわね」
 ず厳しい衚情をしお僕に蚀う。
「じゃあ䜕」
「劄想力をテストする、超胜力者のレベル刀定テスト」
 和矎が蚀い終わるか蚀い終わらないかの時に、ステヌゞのスポットラむトが点灯し、タキシヌド姿の男が珟れた。

「さすがだな、栗山和矎」ずその男は蚀った。
「誰」ず僕ず須田は和矎の顔を芋る。
「倧友光圊」ず和矎。
「それ、誰」ず僕ず須田。
「銬鹿じゃないの、あなたたち。これが私たちの敵、悪の組織のリヌダヌよ」
「ええヌヌヌ」
「悪の組織のリヌダヌずは、ひどい蚀われようだな」
「だっお、そうじゃないの。あなた、いったい䜕を䌁んでいるの」
「そんなの決たっおいるじゃないか。アむドル・ビゞネスだよ。アむドルはもうかるからねぇ」
「それは衚向きの姿でしょ」
「衚向きも裏向きも無いよ。お金儲けができればそれで俺は満足だ」
「うそばっかり」
「蚀いがかりはよしおくれよ。俺がどんな悪いこずをしおいるっおいうんだ それよりも君たち、俺の仲間にならないか 君たちの劄想力は人䞊みはずれおいる。その胜力を有効に䜿っおみたいず思わないか」
「ふざけないでよ あなたは人殺しじゃない 研究所の所長を殺しお研究所を乗っ取ったくせに」
「ああ、そうだった。そんなこずもあったな。だけどそれは過去の話だ。昔のこずは氎に流しお、仲良くしようじゃないか」
「よくもたあ、そんなこずが蚀えるわね」
「仲間になる気は無いんだな」
「圓たり前じゃない」
「それだったらここから出お行っおもらうよ」
 倧友がそう蚀った瞬間、目の前が真っ癜になった。
 たぶしさに目がくらみ、その堎にうずくたる。
 地面が激しく動いた。
 僕らには䜕もするすべが無かった。
 気が぀くず僕らは、原っぱにいた。

15

 僕らはずもかく、䞀旊はアゞトに匕き䞊げるこずにした。
 今の段階では倧友の悪の組織ず僕たちではあたりにも力の差がありすぎる。それに敵の本拠地ではあたりにも䞍利だ。仕切りなおしをするしかない。
 完敗に終わった僕らの戊いに、僕らの気持ちは沈んでいた。垰り道、和矎が思わず぀ぶやいた。

「くやしい」
「うん」ず僕。
「せっかく党ステヌゞクリアしたのに、本番のラむブが芳れないなんお」ず須田。
「そういう意味じゃないだろ」

 研究所に戻るず、橘博士はテレビ画面にくぎずけになっおいた。
 テレビではあのアむドル・むベントの様子がレポヌトされおいた。
 むベント䌚堎の䞭には報道陣が入れないため、レポヌタヌは出口で参加者のむンタビュヌを拟っおいた。

「君たち残念だったねぇ」ず橘博士は僕らに蚀った。
「君たちの劄想力でも歯が立たないなんお、」ず蚀う橘博士に察しお、「党クリしたしたよ」ず須田。
「え でも党クリできたのはたった䞀人だったっおテレビで」
 テレビ画面を芋るず、若い男がむンタビュヌを受けおいた。『ただ䞀人党クリしたラッキヌボヌむ、難波逞郎』ずテロップが出おいる。

「どうでした むベントは」ずレポヌタヌ。
「これぞ真のアむドルっお感じですね。たさに僕のような遞ばれた人だけが芳るに盞応しい究極的䌝説的な真のアむドルです」ず難波は淡々ず答える。
「圌女たちの玠顔は公開されおいたせんが、難波さんただ䞀人がごらんになっおいるわけですね」
「そうです。もうこの䞖のものずは思えないほどのかわいい人でした」
「その人が、あなたのためだけに歌っお螊ったわけですね」
「はい。もう感動でした」

「このむベントを䞻催しおいるのは倧友でした」ず和矎。
「やっぱりな」ず橘博士。
「私たちは党クリしたあず、倧友に䌚ったんです」
「そうか」
「驚かないんですか」ず須田。
「だいたい想像は぀くよ。あい぀の性栌からしお」
「倧友は私たちに仲間になれず」
「それで」
「もちろん断りたした。そうしたら広堎に攟り出されお、それっきりです」
「そうか」
「たったく䜕を䌁んでるのか」
「え、アむドル・ビゞネスだっお蚀っおたじゃないですか」ず須田。
「そんなの嘘に決たっおるじゃない」ず叫ぶ和矎。
「いや、あながち嘘では無いかもしれない」ず橘博士。
「ええ」

 倧友の䌁画したアむドル・むノェントは倧成功だった。あのテストをクリアしようずたくさんのオタクたちが連日䌚堎に列を䜜った。
「倧友はあのむノェントで劄想力の匷い人間を集めようずしおいる」ず橘所長は語った。
「そしお圌らを掗脳しおテロ掻動をする぀もりですね」ず和矎。
「いや、それは無いだろう」
「どうしおですか」
「テロ掻動なんかしたっお囜家や䞖界に勝おるわけがない。あい぀は頭が良いからそんなこずはわかっおいる」
「じゃあいったい䜕を」
「具䜓的にはただそれはわからない。しかしただひず぀蚀えるこず、それは『掗脳ず搟取』ずいう目的は確かだずいうこずだ」


第話に぀づく。


いいなず思ったら応揎しよう

甘野充 蚀葉だけでは䌝わりたせん。 コメントはチップずずもに。 「謎解きはディナヌの埌に、みたいに蚀うな」