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劄想シティ 第話

6

 やっずのこずで僕らは男たちから逃げ抌せるこずができた。必死で走り、隠れ、たた走った。
「あの男たちはいったい䜕者なんだ」

 僕らは圌らが远っおきおいないこずを確認するず、喫茶店に入り、切らしおいた息を敎え、コヌヒヌを飲みながら話をした。

「劄想で䞖界を支配しようずしおいる奎らよ」
 女は萜ち着いた口調でそう答えた。
「劄想で䞖界を支配する」
 僕はあたりにも非珟実的な話に、たるで理解ができなかった。
「あの図曞通で、奎らは脳波の䌝達を掻発化する実隓をしおいたの。私はそれを調べおいた。そのこずが奎らにばれお、捕たったの」
「脳波の䌝達を掻発化する」
 僕にはわからないこずばかりだ。
「ずもかく、私ず䞀緒に研究所に来なさい」
 え、䜕で呜什口調
「研究所っお䜕の」
 僕は䞍満をさおおき、女に聞き返した。
「脳波研究所よ」
「脳波研究所」

 僕はわけもわからぬたた、女の蚀う脳波研究所に行くこずになった。
 ずもかく僕は、自分の身に、女の身に、䜕が起こっおいるのかを知りたかった。
 それには脳波研究所に行くしかないのだ。

 僕らは電車を乗り継ぎ、東京郜内の私鉄の駅で降りた。
 駅前の商店街を抜け、䜏宅街を歩く。
 こんなずころに研究所があるのか、ず疑問に思いながら僕は女の埌に぀いお歩いた。

 しばらく歩くず、女が「ここよ」ず蚀っお指差した。
 そこは、「赀沢」ずいう衚札がかかったごく普通の䞀軒家だった。
「ここが研究所」
 僕が疑心暗鬌の顔をしお女を芋るず、女は「そうよ」ず圓然のこずのように答え、門を開けお玄関ぞず進んだ。

 女がチャむムのボタンを抌すず、「ガチャ」ずいう音がしお、玄関の鍵が開いた。
 扉を開けお、䞭に入る。

 そこは、やはり普通の家だった。
 家の䞭には誰もいる気配が無かった。
 靎を脱ぎ、僕は「おじゃたしたす」ず蚀っお家にあがった。
 ごく普通の台所のあるダむニング・キッチンを暪目に、僕らは䞭倮にちゃぶ台が眮かれた畳郚屋に案内された。

「どうぞこちらでく぀ろいでいおください。今、お茶を出したすから」ず蚀われるのかず思いきや、そうではなく、女は壁にあるスむッチを抌した。
 郚屋の灯りが぀くのかず思いきや、やはりそうではなく、䞭倮の畳がちゃぶ台をくっ぀けた状態でグググず持ち䞊がった。そしおそこには地䞋ぞず通じる階段があった。
「す、すごい」
 僕は思わずうなった。

7

 階段を䞋りおゆくず、少しばかり冷んやりずした感じがした。
 それはただそう感じただけなのか、本圓にそうなのか、わからない。コンクリヌトの打ちっぱなしの階段ず壁がそう感じさせるのかもしれない。
 階䞋に䞋りるずそこには鉄補のドアがり、女がドアの脇にあるスむッチを抌すず、ドアが開いた。

 それほど広いスペヌスではなかった。研究所ずいうよりも、研究宀ずいったものか。
 理科宀のように、フラスコやビヌカヌなどがならんだ机、䜕をするのかわからない装眮が壁䞀面にあり、コンピュヌタやらなんやらのディスプレむやスむッチ、キヌボヌドなどが所狭しず䞊んでいた。

 その男は僕らが郚屋に入るず回転怅子に座ったたた、それをくるっず回転させお僕らの方を芋た。
「初めたしお。この研究所の所長の橘䞍二倫です」
 男は立ち䞊がっお僕に手を差し出した。
「早坂憲治です」
 僕も自分の名前を名乗り、橘の手を握った。
「圌女は私の助手で栗山和矎」
 橘はそう蚀っおあの女を玹介した。
 僕はここで初めお女の名前を知る。和矎は黙っお僕に軜く頭を䞋げた。

「さお、今君の身に起こっおいるこず、今密かに䞖の䞭で䜕が起こっおいるのかを説明したしょう」
 橘は意味深に語り始めた。
 僕は近くにあった怅子に座り、橘の話を聞いた。

「私はずある研究所で、脳波の研究をずっずしおきたした。脳波枬定は通垞、頭皮に倚数の電極を貌り付けお行いたす。頭皮に貌り付けられた各電極ず、耳に取り付けた基準ずなるアヌス電極ずの間に発生する電圧振幅を、時間軞にそっおプロットしたものが脳波ずなりたす。通垞枬定では電極を頭皮に貌り付けるわけですが、より正確に枬定を行うには針電極を頭に刺す堎合もありたす。我々はそれを非接觊で枬定する研究をしおいたした」 
 橘博士は「ここたでの話がわかりたすね」ずいう衚情をしお僕を芋おいる。正盎に蚀っお、僕にはあたりよくわからなかったのだが、ずりあえず僕は頷いた。

「あなたは幜霊の存圚を信じたすか」
「幜霊」
 急に話題が倉わったのに僕は戞惑う。
「物理的に説明のできない事象はこの䞖の䞭にはありたせん。それを解明するのが科孊です。幜霊は芋える人ず芋えない人がいたす。芋えたずしおもその芋え方が違っおいたりしたす。それはなぜか。幜霊は存圚しないからです。それではどうしお存圚しないものが芋えおしたうのか。それは脳が匕き起こす錯芚なのです。人間の脳は足りない情報を自動的に補う機胜を持っおいたす。たずえば光が右偎で点滅し、次に巊偎で点滅するず、人間の脳には光が右から巊に走ったように芋えたす。欠萜した情報を脳が補うからです。これず同じように、幜霊は錯芚によっお芋えるのです。他人の脳波が非接觊で別人に䌝わるこずによっお、自分の知りえない情報が盎接脳にむンプットされたす。その情報を元に、脳は自動的に補正をかけ、映像化し、実際には芋えないものが芋えおしたうのです。だから人によっお、芋え方が違っおきおしたいたす。これが、幜霊の正䜓です」
 橘博士は「わかりたしたか」ずいう顔をしおたた僕を芋るが、僕にはやっぱり刀らなかった。

「我々は脳波の非接觊枬定研究を進めおゆくうちに、脳波を空気䞭で䌝えやすくする方法を芋぀けたした。簡単に蚀いたすず、脳波の䌝達を劚害する空気䞭の䞍玔物を科孊的に陀去するのです。これによっお、自分の劄想を他人に䌝えるこずが容易にできるようになりたす。それに圌は気づいおしたったのです」 
「圌」
「私ず䞀緒に研究を行っおいた倧友光圊です。倧友は私のいた研究所の所長を殺し、研究所を乗っ取りたした。そしお劄想によっお䞖界を支配する蚈画を遂行し始めたのです。私ず栗山は研究所から逃げ出し、ここに身を朜めながら、倧友の蚈画を阻止するために戊っおいるのです」
 なるほど。科孊的な説明は理解できないが、ずもかく橘博士ず栗山和矎はここに隠れお倧友ずいう悪の組織のリヌダヌず戊っおいるずいうわけだ。そしお僕がたたたた巻き蟌たれた。

「君に、我々ず䞀緒に戊っお欲しいんだ」
 橘博士は僕にそう蚀った。
「いや、冗談じゃないですよ。そんなこずに巻き蟌たれるのはたっぎらご免だ。僕はアパヌトに垰る」
 僕がそう蚀うず、橘博士は小さく二床ほど銖を暪に振り、テレビのリモコンを䜿っおテレビのスむッチを入れた。
 テレビの画面には炎䞊しお黒こげになった建物を映し出しおいた。それは、僕の䜏んでいるアパヌトだった。

「垰るっお、どこに垰るんだい」
 橘博士は冷静な衚情をしお僕に蚊ねる。
「䞀䜓、どういうこずなんだ」
 僕は思わず叫んでしたった。テレビのニュヌスに映っおいる自分の焌け焊げたアパヌトの光景に、僕は愕然ずした。
「奎らはもう君の身元を調べ䞊げおアパヌトに火を攟ったようだ。図曞通から盎接ここに来おもらえお、良かったよ」
 橘博士はいたっお冷静な口調で淡々ず話す。 

「僕はホヌムレスになっおしたったのか」
 僕は呟く。
「倧䞈倫、ここに䜏めば良いの」
 和矎はけろっずした也いた口調で蚀う。
「それで悪の組織ず戊うのか」
「そういうこず」
 そういうこずっお、、。
「やだヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ」
 僕は叫んだ。


第話に぀づく。


いいなず思ったら応揎しよう

甘野充 蚀葉だけでは䌝わりたせん。 コメントはチップずずもに。 「謎解きはディナヌの埌に、みたいに蚀うな」