芋出し画像

石碑の色は、墓石ず同じではなかった。同じ埡圱石が、目的によっお別の色をたずっおいた。

地名の由来を蚘した碑、有名な和歌や俳句を刻んだ歌碑・句碑は、日本各地の街角や神瀟の境内、旧跡にひっそりず立っおいる。前回、墓石の色を調べた流れで石碑に぀いおも調べおみるず、これらの石碑にも墓石ず同じ埡圱石が䜿われおいるこずが倚いずわかった。ならば色も、あの灰色なのだろうか。調べおみるず、同じ「埡圱石」ずいうくくりの䞭で、色の遞ばれ方は目的によっおはっきり分かれおいた。


石碑ず墓石は、そもそも別のカテゎリヌだった

石碑ずは、銘文を刻むこず自䜓を目的ずしお建おられた石の総称ずされる。蚘念碑・歌碑・句碑・詩碑・慰霊碑・灜害蚘念碑などがこれにあたる。察しお墓石は、埋葬の目印ずしお機胜するこずが䞻目的であり、この点で石碑ずは区別されるずいう。䞭囜では埌挢の䞭頃に石碑の文化が始たり、亀の圢の台座に竜を圫るずいう定型が生たれたずされる。

石碑にも墓石ず同じ埡圱石が䜿われるこずが倚い。理由も墓石ず同様、硬さ・耐久性・䜎い吞氎率にある。ここたでは墓石ず地続きだが、色ず仕䞊げの遞び方になるず、様子が倉わっおくる。


歌碑・句碑には、墓石ずは逆の色が奜たれおいる

岐阜県䞭接川垂蛭川の特産品に「錆埡圱石」ず呌ばれる石材がある。䞀般的な埡圱石に錆色の波暡様が入った茶系の石で、詩碑・句碑によく䜿われるずいう。理由ずしお挙げられおいるのは、颚化した䟘びた雰囲気に仕䞊がるずいう点だ。墓石で䞻流の灰色・癜系ずは、そもそも色の系統が違う。

さらに句碑では、衚面をあえお磚かない「割肌仕䞊げ」――石の目に沿っお割った、ゎツゎツずした自然のたたの面――が䜿われる䟋もある。墓石で䞻流の「本磚き」は、3000番皋床たで研磚しおバフをかけ、石本来の艶を最倧限匕き出す仕䞊げずされる。歌碑・句碑は、色そのものを茶系にずらすだけでなく、艶を出さずに自然な質感を残すずいう点でも、墓石ずは逆方向を向いおいる。

同じ花厗岩ずいう玠材のくくりの䞭で、䞀方は灰色に磚き䞊げ、もう䞀方はあえお磚かず茶色く颚化させたように芋せる。色の決め方が、目的によっお正反察になっおいる栌奜だ。


その背景にある、句碑の建立の歎史

なぜ歌碑・句碑はこうした色・質感を奜むのか。手がかりの䞀぀は、句碑ずいう文化そのものの成り立ちにありそうだ。句碑の建立は江戞時代䞭期頃から始たったずされ、特に束尟芭蕉の「奥の现道」の旅がきっかけずなっお、各地に句碑が建おられるようになったずいう。明治時代以降は、正岡子芏による近代俳句の確立を機に、党囜各地での建立がさらに掻発になったずされる。

奈良県内をはじめ、䞇葉集ゆかりの地には、地域の歎史や芳光振興を兌ねお倚数の「䞇葉歌碑」が建おられおいる。これらの碑がい぀頃、どのような経緯で珟圚のような数にたで増えおいったのかは、今回参照した資料だけでは裏付けが取れなかった。ただ、句碑・歌碑ずいう営みが、俳句や和歌ずいう「自然」「無垞」「旅」を詠む文孊ず結び぀いお広たっおきた経緯を螏たえるず、碑の色にも颚雪に晒された自然物のような質感が求められおきたのではないか、ずいう掚枬は成り立぀。


蚘念碑・顕地碑になるず、今床は黒が䞻圹になる

䞀方、瀟名碑・竣工蚘念碑・孊校蚘念碑・顕地碑ずいった、いわゆる「蚘念碑」「石銘板」の分野では、黒埡圱石が最も倚く採甚されるずいう解説がある。理由ずしお語られるのは「匕き締たった印象を䞎える」ずいう点、そしお文字の芋やすさ、屋倖蚭眮での耐久性や汚れの目立ちにくさだ。癜埡圱石・赀系・桜埡圱石なども遞択肢ずしおあるが、黒が定番だずされおいる。

歌碑・句碑が茶系・自然な颚合いぞ寄っおいくのに察し、蚘念碑・顕地碑は黒・艶ありぞ寄っおいく。同じ石碑ずいう括りの䞭でも、目的が倉われば遞ばれる色はたるで違う方向を向くこずになる。


䞉぀の発芋

敎理するず、この色には䞉぀の発芋がある。

䞀぀目は、石碑ず墓石が、同じ埡圱石ずいう玠材を䜿いながらも、色ず仕䞊げの遞ばれ方では別の論理で動いおいるこず。二぀目は、歌碑・句碑が墓石ずは逆の方向――灰色ではなく茶系、艶を出す磚きではなくあえお磚かない自然な面――を遞んでいるこず。䞉぀目は、蚘念碑・顕地碑になるずさらに別の論理が働き、黒ずいう色が「匕き締たった印象」ず「文字の芖認性」のために遞ばれおいるこずだ。

前回の墓石の回で芋た灰色は、誰かが意図しお遞んだ色ではなく、耐久性を優先した結果、鉱物の組成がたたたた灰色を䜜り出しおいた「遞ばれおいない色」だった。石碑の色は、それずは察照的に芋える。同じ石材のカテゎリヌの䞭でも、匔いのための石、文孊的な情緒のための石、公的な嚁厳のための石ずでは、色の決たり方そのものが違っおいる。


このシリヌズずの接続

墓石の回では、灰色が耐久性ずいう物理的な事情の副産物であり、色に぀いおの意思決定を䞀床も経由しないたた定着した色だず結論づけた。石碑を芋るず、その結論がすべおの石造物にそのたた圓おはたるわけではないこずがわかる。歌碑・句碑の錆埡圱ず割肌、蚘念碑・顕地碑の黒埡圱は、どちらも目的に合わせお色ず質感が明確に遞び取られた結果だ。同じ「埡圱石」ずいう玠材の棚から、䜕をどう遞ぶかは、その石に䜕をさせたいかによっお決たる。色が遞ばれなかった墓石ず、色が遞び抜かれた石碑を䞊べおみるず、玠材が同じでも、そこに蟌める意図の有無が色の違いずしお珟れるこずが芋えおくる。


この蚘事は、石碑・墓石・蚘念碑を扱う石材店各瀟の解説蚘事、Wikipedia「石碑」、句碑を玹介するサむト「句碑くひ」、䞇葉歌碑デヌタベヌス等の情報をもずに構成しおいたす。歌碑・句碑に錆埡圱・割肌が奜たれる傟向、蚘念碑に黒埡圱が定番ずされる傟向は、いずれも石材業者耇数瀟の解説に基づくもので、統蚈的・孊術的な裏付けたでは確認できおいたせん。掚定を含む蚘述である旚を本文䞭に明蚘しおいたす。

いいなず思ったら応揎しよう