【インタビュー記事】3度の転職が、今の自分を作り上げてくれた。40代でプライベートサロンをオープンした女性の「丁寧なキャリアの積み重ね方」とは
年齢を重ねていくほどに、転職に不安を感じたり、起業や開業といった新しいことを始める勇気がもてなかったり。
変化するための一歩を踏み出せずにいる女性は多いのではないでしょうか。
本記事では、3度の転職を重ねたのちに、40代でプライベートサロンを開業した女性にインタビュー。一歩ずつ、着実にキャリアを積み重ねて夢を叶えた女性のストーリーをご紹介します。
《今回お話を伺ったのは…》
お名前:Nさん
起業した時期:40代
現在の職業:セラピスト
3度の転職で、自分の「なりたい姿」が浮き彫りになっていった

──Nさんは、これまでに複数の美容業界を経験されてきたとお聞きしました。まずはこれまでの経歴を教えていただけますか。
Nさん:20代の頃は、幼少期からの夢だった美容師 として働いていました。途中、技術力向上のために、当時の勤務先のオーナーより理解を得た上で、週末のみブライダルヘアメイクも兼業していました。ここでは、ヘアメイクのみならず新婦様の介添えも担当していたため、非常に責任感を伴う仕事でした。ハードな働き方でしたが、美容師として技術を磨きながら新婦様の大切な日をサポートできることにも喜びを感じていました。
ブライダルの仕事を通して気づいたことは、エステの必要性です。この仕事では、1人の新婦様の肌状態を、挙式前から披露宴終了後まで見ることができました。そのため「エステをしている・していない」とでは、メイク持ちの良さに大きな差が出ると感じたのです。そこで、エステの知識の必要性を強く感じ、ブライダル業界を続けながら30代にエステ業界へと転身することにしたんです。フェイシャルエステをメインに経験を積みながら、ブライダルの仕事はフリーランスとして続けていました。
美容師は10年以上、エステ業界は約5年、ブライダル業界は約10年の経験を積んだあと、会社員として最後に勤めたのはスキンケア商品の販売員です。エステ業界では取り扱いのなかったオーガニック商品に興味を持ち、お客様一人ひとりの肌に合う商品の提案をしたいと思ったことがきっかけでした。
40代で結婚。5年間勤務してきたスキンケア商品の販売員は、結婚して2年後に退職しました。その後、自宅にサロンを併設する計画がスタート。およそ2年かけてプライベートサロンのオープンが実現しました。
──その時々に見つけた目標に向かって、経験を積まれてきたのですね。様々な美容業界を経験されていますが、今の仕事にどうつながっていると感じていますか。
Nさん:そうですね。最後に勤めたスキンケア販売員の仕事で、気づきが多かったように感じます。
例えば、現在サロンで取り扱っているスキンケア商品は、この仕事がきっかけです。当時の勤務先は、オーガニックスキンケア、コスメ、アロマ、ハーブティーなど自分を大切にできる商品を集めたセレクトショップでした。世界各国にある小さなオーガニックブランドを多く取り扱っていたので、各ブランドの商品知識を取り入れながらお客様に提案することにやりがいを感じていました。そのため、仕事をしていくうちに「良いモノをもっとたくさんの人に知ってもらいたい」という想いが出てきたのです。
将来は自分のプライベートサロンでも、一つひとつの魅力的な商品にスポットライトを当てたい。そう思うようになりました。
──販売員をする中で、サロンを開業する目的が見えてきたのですね。
Nさん:その想いと同時に、やっぱりエステもしたいなと考えるようになりました。販売員の仕事は、あくまで商品の提案。お店の企画として、店頭でエステをするイベントを開催することはできましたが、私が施術することはできませんでした。
スキンケア商品の提案は続けたい。けれど、私にとってエステやヘッドスパなどの施術はなくてはならないもの。
「お客様への施術もスキンケア商品の提案も、両方できるプライベートサロンをつくろう」
そう考えるようになりました。
プライベートサロンの開業。判断に迷った時の乗り越え方とは

移動式のシャンプー台が完備されている
──Nさんの「サロンを開業したい」という想いが生まれた原動力は何だったのでしょう。
Nさん:20代の時に出会った、ある女性エステティシャンの存在が大きかったです。ちょうど美容師としてがむしゃらに働いており、心休まる時間がとれなかった私は、定期的にエステに通っていました。当時、私の担当をしてくれた女性の施術がとても心地よくて。仕事の話や他愛ないおしゃべりもできて、私にとっては心身ともに落ち着きを取り戻せる時間になっていました。
しかし、ある日突然、その女性が退職したことを知りました。とてもショックを受けたのを覚えています。他の方に施術をお願いしてみましたが、なんだかしっくりこなかったのです。
その時、こう決心しました。
「あの人にもう会えないのなら、私があのエステティシャンのような存在になろう」
そこから、自分のやるべきことが見えてきて、転職を重ねながら前に進めたのだと思います。
──実際にサロンを開業してみて、不安はなかったのでしょうか。
Nさん:会社員と異なり、すべて自分で決める必要があったため「何から始めればいいのだろう?」という戸惑いはありました。例えば私の場合、自宅にサロンを設計することから始まりました。限られた大きさと空間の中で、必要な設備を置く場所を考えたり、部屋の大きさに見合うシャンプー台や施術用ベッドを探したり。ゼロからのスタートなので、環境を整えるための準備にはかなり時間がかかりました。
また、会社員の時はチーム体制で仕事をしていたので、何かあれば周りのメンバーに相談できました。しかし、現在はスタッフがいる訳でもなく、私ひとり。施術や商品発注などの事務など、全て私が担当しているため、何か決断する時に「これで合っているのかな?」と迷うこともあります。
──どうやって解決しているのでしょうか。
Nさん:外部の勉強会で学び、新しい知識を取り入れることで、自分に自信をつけるようにしています。私と同じようなサロンを見て参考にする方法もあるかもしれませんが、運営面で他のサロンを見てしまうと、影響を受けがちです。「私は自分のサロンで、何をしたいんだっけ?」と、自分軸がぼやけてしまう可能性があるためです。
──判断に迷った時は、どう考えるようにしていますか。
Nさん:来てくれたお客様が私のサービスを受けて喜んでくれたら、よしとする。そう考えるようになりました。
施術メニューや取扱商品など、本当にこれでいいのか迷った時「Nさんだから安心してお願いできるのよ」と言ってもらえたことがありました。この一言で「お客様を信じればいいんだ」と再確認することができたのです。
全ては、お客様あってこその自分。私はいつも、お客様に支えられています。
開業から4年。サロンに込めた想いと、今後の目標とは

──Nさんのサロンは、2026年3月で4周年を迎えましたね。この4年間を振り返ってみていかがですか?
Nさん:開業してからの約2年間は、集客は控えめにし、学びの時間を多くとりました。お客様からの予約はあったものの、積極的にサロンの存在を発信することは控えていたんです。
それは、自分のサロンで使用する商材や、お客様へ紹介する商品選びに時間をかけるため。前職のスキンケア販売員の時から考えていた「良い商品をもっとたくさんの人に知ってもらいたい」という想いを実現するためには、お客様の肌に触れる前に自分の肌で検証する必要性を感じていたからです。気になるものを見つけたら、自らメーカーに電話して商品の詳細を聞いたり、エステやヘッドスパの技術や商品知識を学べるセミナーに参加したりしています。
もちろん、ある程度の商材は揃えていました。しかし、次から次へと出てくる新しいスキンケアブランドを目にするたびに、自分のサロンで販売したいものがどんどん増えていきました。安心なモノだけを提供したかったので、学びながらじっくりサロン作りをしていこうと決めたのです。
──スキンケア販売員のお仕事が活かされていますね。
Nさん:そうですね。お客様に良いモノを届けるために、そして安心感を与えるために、今でも学びは欠かせません。自分がよいと信じた商品だけを選んでいるからこそ、自信を持ってサロンを運営できていると感じています。
──サロンを開業したからこそ分かったことはありますか。
Nさん:現代社会において、エステは日常生活に不可欠なものだと感じるようになりました。国によっては、エステは贅沢なものではなくて「定期的に行うメンテナンス」と捉えています。それは、エステが美容的な外見(肌状態)を整えるだけではなく、内面(メンタル)も整えてくれるからなのです。
私のサロンに来てくださったあるお客様は、肌の美しさと共にメンタルにも大きく変化が見られました。施術前はネガティブな言葉を多く聞かれたお客様ですが、何度か通っていただくうちにポジティブになってきたのを感じました。また、日常生活のストレスにより余裕のない状態だったお客様は、数回の施術を経て「最近、人に優しくなってきたの」と話してくれたのです。
肌状態とあわせて心も健康的になれるのは、エステのヒーリング効果があってこそだと思っています。
──エステによって、心身ともに良い変化がみられるのは嬉しいですね。そんなNさんのプライベートサロンに込めた想いを教えていただけますか。
Nさん:私のサロンコンセプトは「健康的で、自分らしく美しくなっていただくこと」です。土台となる心身の健康を保ち、周りと比較せず自分らしい美しさを見つけることで、本来の自分を取り戻してほしいという想いを込めています。
会社員として働いていた時期は、自分と向き合う余裕がなく、心身ともに休まる時間がありませんでした。そんな時に救ってくれたのがエステサロンであり、担当してくれた女性エステティシャンの存在でした。
私のプライベートサロンに来てくださったお客様にも、あの時癒やされた私のようにゆっくりと過ごしていただきたいです。そして、人と比べず自分自身にフォーカスしていき、本来の自分を取り戻せるお手伝いができたら嬉しいです。
──最後に、Nさんがこれからやってみたいことがあればお聞かせください。
Nさん:4周年となりましたが、これからも変わらず「一人ひとりのお客様に喜んでもらうこと」を考えていきたいです。そのためには、やはり学ぶこと。エステの勉強会に参加したり、信頼しているセラピストに手技を学んだりと、常に学びの時間をつくることで技術をブラッシュアップし、お客様に還元していきたいです。
おわりに
──自分軸を定め、プライベートサロンの開業に向けてやるべきことを一つずつ経験してきたNさん。どの経験も、全てNさんの財産となり、今の仕事に活かされていると感じました。
理想のサロンを形にできたのは、これまでのキャリアを丁寧に積み重ねてきたからこそ。独立を考えている人やステップアップの仕方に迷っている人にとって、Nさんの経験や考え方は「自分もやってみよう」と一歩を踏み出す、大きなきっかけになったのではないでしょうか。
※この記事は、第12期京都ライター塾(2025年12月~2026年3月受講)にて、講師・江角悠子さんより添削を受けた記事です。
