病院を変えても、医療情報はついてくる時代へ
「この病院で受けた検査結果を、別の病院でも見てもらえたらいいのに」
医療機関を変えた経験がある人なら、一度はそう思ったことがあるのではないでしょうか。
これまでの医療では、病院ごとに電子カルテがあり、患者の医療情報も医療機関ごとに管理されているケースが少なくありませんでした。
別の病院を受診すると、これまでの病歴や検査結果、服薬状況などを患者自身が説明したり、紹介状を書いてもらったり、検査画像をCDなどで持参したりすることもあります。
しかし、医療DXは、こうした状況を変えようとしています。
今回、全国に電子カルテ情報を共有するための基盤を構築する方向が報じられました。
<独自>全国に電子カルテ情報共有網 令和12年度にも基盤構築 普及へ費用軽減がカギ|産経新聞
厚生労働省が進めている「全国医療情報プラットフォーム」では、電子カルテ情報共有サービスを通じて、診療情報提供書、健診結果、傷病名、薬剤アレルギー、感染症、検査、処方などの情報を共有できる仕組みが整備されています。
つまり、将来的には「この病院で診てもらったから、この病院にしか情報がない」という状態から、必要な医療情報を医療機関の間で共有できる状態へ変わっていく可能性があります。
これは患者にとって、かなり大きな変化です。
たとえば、急に別の病院を受診することになったとき。
過去の検査結果や服薬情報、アレルギー情報などを医療者が確認できれば、患者が一から説明しなければならない負担を減らせます。
救急時にも、本人が意識を失っていたり、詳しい病歴を説明できなかったりする場合に、必要な情報を確認できることは意味があります。
もちろん、何でも自由に共有されるという話ではありません。
医療情報は非常に重要な個人情報です。
誰が、どの情報を、どのような条件で閲覧できるのか。
本人の同意をどう扱うのか。
サイバー攻撃からどう守るのか。
こうした問題も同時に考えなければなりません。
そして、もう一つ大きな課題があります。
それが「費用」です。
電子カルテを導入していない医療機関や、古いシステムを使っている医療機関が、全国的な情報共有に対応するためには、システム導入や更新の費用が必要になります。
だからこそ、今回の報道でも「普及へ費用軽減がカギ」とされています。
厚生労働省も、電子カルテについて標準仕様を整備し、データを引き継げる互換性の確保などを進めています。
中小病院・診療所向け電子カルテ及びレセプトコンピュータ標準仕様|厚生労働省
ここで重要なのは、「電子カルテがあるか」だけではないということです。
これからは、
「他の医療機関と情報を共有できる電子カルテなのか」
という視点も重要になってくるでしょう。
患者にとって、病院を変えることは珍しいことではありません。
引っ越し、転院、専門医への受診、セカンドオピニオン、救急受診など、医療機関をまたぐ場面は誰にでも起こり得ます。
そのたびに、患者が自分の医療情報を持ち運ばなければならないのではなく、
医療情報そのものが、必要な範囲で患者についてくる。
そんな医療が当たり前になるなら、患者にとっての「病院を選ぶ」という意味も少し変わるかもしれません。
もちろん、情報共有が進めばすべての問題が解決するわけではありません。
医療者が共有された情報をきちんと確認することも必要ですし、情報が間違っていれば、それを修正できる仕組みも必要です。
それでも、病院ごとに情報が分断されている現在から考えると、大きな一歩です。
「病院を変えたら、また最初から説明しなければならない」
そんな医療から、
「病院を変えても、必要な医療情報はついてくる」
という医療へ。
電子カルテの全国的な情報共有は、医療DXの話であると同時に、患者がより安心して医療機関を選べる環境をつくる話でもあると思います。
参考リンク
産経新聞
<独自>全国に電子カルテ情報共有網 令和12年度にも基盤構築 普及へ費用軽減がカギ
https://www.sankei.com/article/20260906-QQPI7SBWGJJYDMQVB6G2X43ITI/
厚生労働省
医療DXについて
https://www.mhlw.go.jp/stf/iryoudx.html
厚生労働省
中小病院向け電子カルテ及びレセプトコンピュータ標準仕様書(基本要件)・医科診療所向け電子カルテ及びレセプトコンピュータ標準仕様書(基本要件)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/standardspec.html

