看取りを支えるのは誰か 薬剤師を含む多職種連携、介護報酬改定の論点に
「看取り」と聞くと、医師や看護師を思い浮かべる人は多いかもしれません。
しかし、人生の最終段階を支えるのは、医師と看護師だけではありません。
薬剤師、介護職、ケアマネジャーなど、さまざまな職種が関わります。
2027年度の介護報酬改定に向けた厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会で、医療・介護連携や人生の最終段階の医療・介護について議論が行われました。
その中で、日本薬剤師会からは、看取り期における薬剤師を含めた連携体制の充実を求める意見が出されています。
看取りでは、疼痛などの症状を和らげるために薬剤が重要になります。
特に終末期では、薬の種類や量、投与方法などについて、患者の状態に応じた細かな調整が必要になることがあります。
また、麻薬の適切な管理や、残薬への対応など、薬剤師だからこそ担える役割もあります。
つまり、「薬を用意する人」というだけではありません。
本人の状態や希望を踏まえながら、医師や看護職、介護職と情報を共有し、薬物療法を支える専門職としての役割があります。
看取りの場所は変わっている
今回の厚労省資料で注目したいのは、看取りをめぐる環境そのものが変化していることです。
資料では、死亡者数は2040年まで増加傾向にあり、死亡場所についても、病院だけでなく自宅や老人ホームなどが増加傾向にあるとされています。
つまり、これからは「最期を病院で迎える」ことだけを前提にするのではなく、本人が希望する場所で最期を迎えられる体制をどうつくるかが、ますます重要になります。
厚労省も今回の資料で、
「本人が望む場所でより質の高い看取りを実施できるようにするためには、どのような方策が考えられるか」
という点を、次期介護報酬改定に向けた検討課題として挙げています。
ここで重要になるのが、多職種連携です。
例えば、自宅や施設で療養している人の状態が変化したとき。
医師が診察し、看護師が状態を確認し、介護職が日々の変化を把握し、ケアマネジャーがサービスを調整する。
そこに薬剤師が加わり、薬の効果や副作用、服薬状況、残薬などを確認する。
それぞれの専門職が持っている情報をつなげることで、初めて本人を中心としたケアが可能になります。
「連携してください」だけでは難しい
一方で、制度として「多職種で連携しましょう」と掲げるだけでは、現場は動きません。
誰が連絡するのか。
どのタイミングで情報を共有するのか。
夜間や休日に急変した場合はどうするのか。
薬剤が必要になったとき、誰がどのように対応するのか。
そして、その連携にかかる時間や負担を誰が評価するのか。
こうした具体的な仕組みまで整っていなければ、「連携」は理念だけで終わってしまいます。
実際、今回の厚労省資料でも、ACPについて、人生の最終段階における医療・ケアについて本人を中心に話し合いを繰り返すことの重要性が示される一方、各サービスにおけるACPの位置づけをどうするかが課題として挙げられています。
看取りについても、サービスの種類によって加算の有無や評価の要件が異なります。
だからこそ、2027年度の介護報酬改定では、単に「看取りを行ったか」だけではなく、それぞれのサービスや専門職がどのような役割を担い、どのように連携したのかをどう評価するのかが重要になりそうです。
看取りは、誰か一人の仕事ではありません。
本人がどこで、どのように最期を迎えたいのか。
その希望をできるだけ実現するために、医療と介護、それぞれの専門職が持つ力をどうつなぐのか。
薬剤師を含む多職種連携の議論は、そのことを改めて考えるきっかけになるのではないでしょうか。
「看取りを支えるのは誰か」。
その答えは、一人の専門職ではなく、本人を中心にしたチームなのだと思います。
参考リンク
・「看取り期、薬剤師含む連携体制充実を」
https://pnb.jiho.jp/article/250947
・厚生労働省「第264回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75593.html
・厚生労働省「医療・介護連携、人生の最終段階の医療・介護」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001744917.pdf

