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おじさんの鼻息、1450円+税の罪 | 7月5週目〜8月1週目の日記


7月26日(日) 

図書館へ行き、読みかけの本を小1時間ほど読む。隣の席のおじさんの「えふん、えふん」という鼻息づかいが気になる。日曜日の朝から、館内は混んでいる。
本を返却し、美味しいとの評判を聞きつけ、地元の洋菓子店へ向かう。閉まっている。炎天下を歩いてきたものだから、このままでは気が収まらない。別の、行ったことのない洋菓子店へ、とぼとぼ歩く。今度は張り紙があった。

「本日は、イベントに出店しています」

せめて、なんのイベントなのか書いてくれ。もうここまで来たら行くよ。
得られたのは、おじさんの鼻息だけか。

しょぼくれて帰り、草むしりをして、エクストリーム昼寝をかましていたら、大相撲の千秋楽が終わっていた。


7月27日(月) 

図書館で借りた本には、十中八九、ペンでなぞられた痕がある。
ボールペンのインクを出さずに強く引いたような透明の線だ。くたびれた紙の凹凸を感じる指先が、わたしより先にこの本を読んだ誰かの存在を告げる。

この本はお前のものではないぞ。とんでもない筆圧だからね。

見知らぬ誰かの引いた線をなぞる。そんな切実に共感するのなら、もう買いなさいよ。

1450円+税。馬鹿にならない。


7月28日(火) 

流れれば、なんとなく口ずさめる。けれど、誰兵衛のなんという曲なのかわからない歌が少なくない。わたしは、こういう曲をうっすらわかるやつと呼んでいる。

Spotifyのプレイリストには、そんなうっすらわかるやつを集めたような定番ソング集が山ほどある。至れり尽くせりだ。「こんな有名な曲も知らないの?」なんて恥をかかずに、人知れず懐かしい曲と再会できる。
その代わり、自分だけの一曲を発掘することは難しくなった。

かつて、音楽との出会いは、人力推薦アルゴリズムだった。その中心には、いつも兄がいた。

たった数枚のアルバム(兄所有)をしゃぶり尽くし、自分だけのスルメ曲を大事に抱えていた。いまでも無意識が曲順まで覚えているせいで、そのアーティストの自動再生で違う曲が流れると、なんだかきもちが悪い。

兄が片想いしていた人(とわたしが勝手に思っている)がすきだったインディーズバンドを、兄経由で知ったこともあった。兄が何度も何度も聴かせるものだから、最終的に、わたしのほうがすきになってしまった。
「あの子のこと、すきなんでしょ」と、なぜか聞かないでおいた。兄の恋心は、妹にとってノイズでしかない。

友人におすすめを借りたり、すきな人がカラオケで歌っていた曲を、こっそりレンタルショップで借りて聴いたりもした。手動の又聞きを繰り返し、一曲一曲が特別になり得た。

そんなわけで、今日は『Cozy Times for Cozy People』というプレイリストを流している。

先のうっすらわかるやつは、Bee Geesの「How Deep Is Your Love」だった。


7月29日(水) 

キーマカレーのコクが出ない。原因は、鶏ひき肉だけでつくってしまったことだ。美味しい。でも、やっぱり物足りない。こういう中途半端な味が、いちばん気に食わない。
この物足りなさの正体は、なにを隠そう|《ぎゅう》である。牛ひき肉を1/3でも混ぜればよかった。あるいは、せめてヨーグルト。

昼に一杯食べ、鍋のカレーが少し減ったので、ヨーグルトとバターを足す。ついでにコーンも1缶。
はて、このコーン、いつ買ったやら。鍋へ放り込んでから、恐る恐る缶を裏返す。

2026.8.1

危ないところだった。
実は、あと二缶あるんだよな。どうする、わたし。


7月30日(木)

バターサンド襲来(北海道土産)。
「お久しぶり」と声をかけることはないが、バターサンドがあるだけで、顔が弛む。頻繁に出張で家を空ける家人のことも、多少は許せる。これがいわゆる花より団子システム
日本には、こういう状況を表す言葉がもう十二分にある。新語なんて要らないんじゃないか。
「メロい」ってなんだよ。こっちはバターサンドにメロメロよ。でも、「バターサンドってメロいよね〜」なんて言わないんでしょう。わからぬ。

久しぶりに常温でバターサンドを食べた。やっぱり冷蔵庫で冷やしたほうが美味しい。真ん中のぐにゅぐにゅ(バタークリーム)は、固めがすきみたい。


7月31日(金)

家人なりに、お土産のバリエーションを模索しているらしい。一応、わたしがすきそうで、いままで買ってきたことがないものを選ぶようにしているという。
北海道土産は、だいたいが旨い。なかでもお気に入りは、ルイベ。サケやマスを凍らせたまま刺身にして食べる郷土料理らしい。

炊きたての湯気が立った白米に、ルイベをどかっと豪快に乗せ、はふはふしながら食べる。凍った魚と熱々の米が口のなかで出逢う。ロマンを感じる前に、胃に流し込む情緒のなさ。

「お土産、なにがいい?」と聞かれるたび、ルイベと言っている。けれど、高いからか、いまだ買ってこない。
とりあえずで聞くな。誠意を見せろ。


8月1日(土)

久しぶりの焼肉。なにも考えずに食べる任務に赴く。
いつもなら、焼肉屋までは徒歩で行く。それもダイエットのうちだと考えるのだけれど、なんせ外がそこらじゅう暑い。熱中症になるか、太るか。考えるまでもない。一旦、太ることを選びます(断言)。熱中症は、あとから帳尻を合わせることなんてできないんだから。
太る言い訳だけは、いつも饒舌なんだよなあ。

焼肉屋の冷麺って、なんでこんなに美味しいんだろ。
韓国風が美味しかったんだったか、盛岡冷麺が美味しかったんだったか、毎回わからなくなる。結局、どちらも頼む羽目になる。


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