夫が24時間テレビを走った日、妻は3秒で見つけた
24時間テレビのマラソンで、パパが走ることになった。なんだか面白そうだからと応募したらしい。
星野真里さんと一緒に走る、チャリティーランナーである。そう書くと、まるでパパが星野真里さんの隣を颯爽と走る専属伴走者のようだが、実際は1000人いるうちの一人である。
職場のグループLINEに知らせると、「ウォーリーを探せ状態ですね。頑張って探しましょう♪♪」と、みんなも一緒になって盛り上がってくれた。
私の母にいたっては、「マラソンを始めたとは聞いていたけど、ついにそこまで行ったんだね。おばあちゃんも鼻が高いわ」と、誇らしげである。
ん?
どうやら、日本を代表するランナーにでも選ばれたと思っているらしい。妙な期待を持たせて申し訳ないが、そういうことではない。
まあ、いいか。
私は訂正するのをやめて、そっと電話を切った。
放映時間になった。私たちはテレビの前でパパを捜した。しばらくして、「あっ、映った!」と思った次の瞬間、「はい、CM〜」ほんの一瞬である。
パパは17時45分に集合。
各自持参したお弁当を、15分ほどで食べるよう指示され、実際に走り始めるのは20時45分だという。
「そんなに早く集めて、3時間も何をするんだろうね」
「ずいぶんテレビ局ってところは上から目線なんだね」
家ではブーブー文句を言っていたが、実はその3時間には、ちゃんと役目があったようだ。
国技館から中継が回ってきた、ほんの数秒間。
みんなで手を振り、元気いっぱいに盛り上がっている映像を撮るためである。
その数秒のために、雨の中、トラックに立って待っていたらしい。
「はい、みやぞんさん入ります!拍手してください!」
「星野さんのほうを向いてください! 国技館から中継が回されます!」
「盛り上がりの声、お願いします!」
テレビの中では楽しそうに手を振っているが、その直前までは雨に打たれながら待機していたという。
途中、約1時間の休憩があり、そのときだけ屋根のある観客席で休めたらしい。
華やかなテレビ出演かと思いきや、現実の扱いは、なかなか豪快だったようだ。
さて、肝心のテレビ映りである。
そもそも1000人もいる。見つからなくて当然だが、整列して手を振っていたパパが画面に映った瞬間に一発でわかった。「さすが奥さんだわー」と感心された。そのあと、スマホのTVerでスクショを撮ることを思いついた。



ここにもパパ発見。
「どうせなら病院の名前を書いた鉢巻きをすれば、宣伝になったのに」とも言われた。
たしかに。
私は、どちらかといえば24時間テレビが好きではない。
今回のことがなければ、おそらく見なかったと思う。
それなのにこの日は、18時30分から21時30分まで、わが家のテレビは日本テレビに固定された。
視聴率を稼がせてやったぜ。ハッハッハッ。
参加者の中には、ほとんど走った経験がなく、
「テレビに出たい!」という一心で参加したらしい人たちもいたという。
それでも彼らは、雨の中、「あと3周!」「あと1周!」と声を掛け合いながら、最後まで走っていたらしい。
動機が何であれ、実際に応募して、長い待ち時間を過ごし、雨に打たれ、それでも走り切る。
テレビに出たいという気持ちは、人を雨の中でも走らせるのだ。まだまだ、テレビの力ってすごい。
パパがテレビに映った時間は、たぶん合計数秒。
その数秒を見逃すまいと、家族や友人、職場の人たちまでテレビの前でパパを捜した。
パパにとっては少々ぞんざいに扱われた数時間。
だけど私たちにとっては、ずいぶん楽しませてもらった時間だった。
来年も応募するかと聞いたら、「もう、いいかな。」とややテンション低めで答えた。
そうだろうね。
少なくとも両親は、今でもパパが星野真里さんの専属伴走者だったと思っている。
それはもう、訂正しないでおこう。
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