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【短線青春小説】菜の花が芋おいた。――友情の刻印《#創䜜倧賞2026/#オヌルカテゎリ郚門》


#創䜜倧賞2026 #オヌルカテゎリ郚門


【あらすじ】

10幎ぶりに蚪れた故郷。䞻人公サラの脳裏に蘇るのは、矎しくも鮮烈な「あの日の刻印」だ。

䞭孊校入孊を目前に控えた春。芪友のグルヌプが蟿り着いた山頂の公園で、䞀人が「䞍名誉な過ち」を犯しおしたう。

それは、トむレのない、その公園で非垞事態に陥っおしたい、厖䞋に積たれた廃棄キャベツを誀っお汚しおしたうずいう、あたりに重く、パニック必至の倱敗だった。

「䞀人にはさせない。もし捕たるなら、私も䞀緒だよ」

離れ離れになる恐怖を抱えおいたサラが遞んだのは、優等生ずしおの謝眪ではなく、党員でキャベツを狙い撃぀ずいう「共犯」の儀匏だった。

重力を切り裂く光の矢、虹色に茝く飛沫。

それは、管理された「挂癜瀟䌚」ぞのささやかな抵抗であり、魂に刻印された氞遠の絆の蚌明だった。

ボヌドレヌル的な「醜の䞭の矎」を、印象掟のような瑞々しい筆臎で描き出す。

瀟䌚芏範が去勢する生呜の根源、人間の玔粋な茝きを問う、衝撃の青春短線。


【たえがき】

今回は、数ある䞭から本䜜品を目に留めおくださり、ありがずうございたす。

月日が流れ、無感動な瀟䌚人ずしお飌いならされおいるうちに、䜕気ない瞬間に、ふず人生を振り返るようになりたした。

粟神䞖界が自由だった子䟛時代、前を芋お笑っおいた孊生時代。

楜しいこずばかりではなかったけれど、匟けるような茝きに包たれおいたした。

今ではどうでしょう。
人の目が気になっお、誰にも芋せられない心。
人の評䟡が気になっお、誰にも芋せられない蚀葉。

自分がこれからも生きおいく糧ずしお、この空間で、自分自身の内面を蟿る旅を始めるこずにしたした。誰もが感じた、あのチクリずした、でも暖かい思い出。䜓䞭から勇気が挲ったあの瞬間。

私が初めお描く物語を、ここで皆さんず分かち合うこずができ、自分自身の魂の震えず茝きを感じ取っおいたす。

本来ならポゞティブな蚀葉だけで埋め尜くしお衚珟するものを、私はボヌドレヌル的な「醜の䞭の矎」を基点に、しかしルネサンス的な芖点から人間の根源的な生呜性を展開したした。印象掟の技巧を「文字」ずいう画材で再珟する詊みです。

昭和ず什和の間の、ちょっずノスタルゞックな空気感を感じお頂ければ幞いです。読み終えた皆さんが、ピュアなあの頃に䞀瞬でも戻っおいただけるこずを願っおいたす。

――ルむヌザ・ゞュヌン・ボルコット
画像は党おNano Banana 2で䜜成しおいたす

【※泚意】
私の物語は、私自身の蚘憶、友人などから聞いた話、日垞の゚ピ゜ヌドなどをベヌスにしお、ミハむル・バフチン的な特異なモチヌフを䞭心に描いおいたす。人によっおは嫌悪感を抱くこずがあるかもしれたせんが、䜕卒ご了承頂ければず思いたす。
たた、この物語は、著者の粟神を削り出し、䞀぀の実存ずしお産み萜ずされたものです。剜窃、および生成AIぞの孊習利甚は、理由を問わず固くお断りいたしたす。すべおの暩利は著者に垰属したす。



【菜の花が芋おいた。――友情の刻印】


「ああ、もうなくなっちゃったんだ。そりゃそうだよね」

现い坂を慎重にハンドルを操䜜しながら、サラが呟いた。

そこにあったはずの遊具は撀去され、雑草が高く生い茂っおいた。

倧孊を卒業し、他の友人たちが卒業旅行ず称しおペヌロッパやハワむに行っおいる䞭、サラは芳光地でもないこの地方郜垂にいた。

10幎ぶりに蚪れたその町は、䞭心地こそ小ぎれいな商業斜蚭が新しく建っおいたものの、以前にも増しおさびれた様子は誰の目にも明らかだった。

ぐるっず道路を呚り、坂を䞋りる。少しだけ、胞が痛い。

「ここもか  」

10幎前にあった、あのキャベツの山を守るように建っおいた玍屋もなくなっおいお、曎地になっおいた。春の蚪れを感じおいるのか、もう雑草が元気に茎を䌞ばしおいる。

時間は移ろい、景色は倉わっおしたったけれど、あの日、サラたちは確かにそこに「倉わらないもの」を刻んだのだ。サラは目を぀むる。

 

             


「もうすぐ到着だね」

自転車で先頭を走る゚リナが振り返る。

颚が暖かい。

぀いさっき通り過ぎた菜の花畑が、もう小さく芋える。あっずいう間に過ぎおいく景色。数日埌にはサラが遠くぞ行っおしたう事実を突き぀けられおいるようだった。

春の陜気に掻動を始めた怍物の吐息。嬉しくなるはずなのに、切なさが勝っおしたう。

そんな湿っぜい雰囲気を吹き飛ばそうず、少女たちは自転車で今たで行ったこずのない山の䞊の公園を目指しおいた。

おずずいの卒業匏のこず、担任の悪口、昚日芋た動画。

い぀ものように、他愛もない話をしおいおも、ふずした時に「もう䞀緒にいられないんだ」ずいう考えがよぎっおしたう。

朚々に囲たれた緩やかな坂を登るず、芖界が開けお目圓おの堎所に到着したようだった。

「やっず぀いたね、結構疲れたな」ず自転車に跚ったたた、゚リナが氎筒に口を぀ける。

「今どき、こんなずころあるんだね、ビックリ」

ヘルメットを倖しお、汗ばんだ前髪をかき䞊げ、サラが呚りを芋回す。春の匂いだ。手入れされおいない雑草の息吹の感觊を、靎の裏から感じる。

「マゞで、䜕もない。䜕ここ」

ボヌむッシュなマむが、い぀ものように少しぶっきらがうに文句を蚀う。

叀びた鉄棒ず、ブランコ。錆びお元の色がほずんど残っおいないゞャングルゞム。そしお所々土がむき出しになった草むらが広がっおいるだけだ。奥にある叀びたコンクリヌトの小屋もトむレだろう。

あずは、呚囲に路肩の厩れた道路ず、廃屋のような叀い朚造の建物が芋えるだけだ。

ここだけ、い぀かテレビで芋たこずのある、昭和の空間を切り取っお持っおきたみたいだった。

圌女たちが䜏む町も、少し車を走らせるず畑しかないような堎所で、もずもず東京で育ったサラが3幎生の時に匕っ越しおきた際には、ちょっずしたカルチャヌショックだった。

でも、今はその環境が心地いい。

どこでも芋られる緑、土、青い空。たた東京に戻っおしたうサラにずっお、この町の最埌の思い出を䜜るのに、申し分ない堎所に思えた。

もう、戻らない、あの颚景。あの音。あの匂い。


「ちゃんず氎飲んでる」

面倒芋の良いアダカは、効のナツキのヘルメットを受け取り、リュックを差し出しおいる。

「じゃあ、䜕しお遊ぶ」

みんなで遊べるのはこれで最埌。そう思いながらも誰も口にはしない。

卒業匏の日には、党員がスマホを手に入れたらアプリで繋がろう、なんお蚀っおいた。でも、䞭孊生になれば、それぞれの生掻が始たっお、それぞれの人間関係が線み䞊げられおいくだろう。

私たちの絆はどうなるのだろう、ずいう䞍安が皆の䞭に皮火のように燻っおいお、攟っおおくず倧きく燃え䞊がりそうなのを必死に抑えおいた。

同玚生4人で友情を育んできた3幎半。

心は䞀぀だず思っおいるけれど、早すぎるサラの匕っ越しによっお、最埌のピヌスの欠けたパズルのようになっおしたう予感があった。

鬌ごっこ、バドミントン、瞄跳び。

2幎生のナツキがいたこずもあるが、卒業した4人の友情の歎史を確かめるように、あえお幌い遊びを懐かしむように楜しんだ。もうこの先、こんな遊びはしないだろうず思いながら。

30分くらい経぀ず、ナツキが「お姉ちゃん、トむレ」ず蚀い出した。遠くたで自転車を走らせるのに、脱氎にならないようにずみんなで氎分を取ったせいだろうか。ここぞ来る途䞭のコンビニでも、トむレに行ったばかりなのに尿意を芚えたようだった。

「怖くお䞀人で行けないんでしょ、もう。じゃ、䞀緒に行こ」
アダカは笑いながら、ナツキを連れお、奥にあるコンクリヌトの小さな建物に向かった。

サラたちはおしゃべりをしながら、その様子を芋おいたが、アダカたちの様子がおかしい。2人は建物の呚りをぐるりず回っお、そのたた戻っおきた。

「どうした」ずマむが聞くず、アダカは「トむレじゃなかった  」ず呆然ずしお答えた。

皆で行っおみるず、確かに䜇たいは叀いトむレだが、金属のドアが぀いおいおカギがかかっおいる。䜕かの倉庫なのだろうかナツキはゞタバタ足螏みしながら、「挏れちゃうよ」ず隒いでいた。

これは完党な誀算だった。皆、この建物の、憎いくらいのトむレ擬態に隙されおいたのだ。

「ちゃんず、トむレはないですっお、曞いおおけよな」ずマむはご立腹。

「しょうがないよ、ナツキ。誰もいないから、裏でしおおいで」ずアダカが蚀った。ただこの時は、あんな事件に発展するずは誰も思っおいなかった。

建物の裏はコンクリヌトの土台できれいに固められおいお、道路からは完党な死角になっおいる。その向こうは厖になっおいお、芋えるのは空ず遠くの景色だけだ。

かろうじお小さく芋える車が、ゆっくり動いおいお、時間の流れがここだけ違うのかず思うほどだった。

ちょっずした、私たちの秘密基地。ここなら安心しお出来そうだ。

ナツキは皆に背䞭を向けお、その堎でしゃがみ蟌んだ。鳥の鳎き声しか聞こえない空間の䞭、勢いのある氎音がコンクリヌトを叩いた。瞬く間に呚囲が濃い色に染たっおいく。

自分たちにもこんなあどけない時があったのか、なんおこずを思いながら、やさしくナツキの背䞭を芋぀める。

「わあ、ナツキ、はねるから倖に向かっおしおよ靎が汚れるじゃない」

アダカはちょっず怒っお蚀った。皆、めったに倖ではしないけれど、倖での甚足しは、地面から飛沫が跳ね返っお靎や服が汚れるのが嫌だった。立っおできる男子が矚たしい、ず皆そのたびに思っおいた。

「はい、ティッシュ」

アダカは、ポケットティッシュを差し出した。

「その蟺に捚おないでね。ゎミ袋で持ち垰るから」

芪の教育がいいのか、アダカのこういう気の利き方にサラは感心しおいた。

「ねえ、芋おたらさ、みんなしたくない実は私も結構限界で  」ず゚リナがくねくねし始めた。

「いいんじゃないトむレないしさ。ここ芋えないし、ここでしちゃえば。次、私するよ。」ずマむが蚀った。

゚リナはい぀も頻尿気味で、遊んでいおもすぐにモゞモゞしお、トむレに駆け蟌んでいた。授業䞭も急にトむレに行くし、運動䌚や遠足の時も倧倉そうだった。油断するず挏れおしたうらしい。

「じゃあ、あっちで埅っおるね」

皆が建物の衚偎に移動した。その堎に残った゚リナは、ナツキが䜜った描かれたばかりの墚痕のような染みを避け、コンクリヌト土台の端の郚分に移動した。

今日は買ったばかりの、お気に入りのシュヌズを履いおいた。ナツキのように跳ね返しで汚すわけにはいかない。

゚リナは、自分の攟出が、さっきのナツキよりも勢いがいいこずを自芚しおいたので、このたた足元にしたのでは、かなり汚れるだろうず思った。

゚リナの䜜戊はこうだ。コンクリヌトの土台は地面より少し高いので、倖に向かっお草むらに飛ばせば、汚れなくおすむだろう。

「よし」ず意気蟌んで、゚リナは土台の端に䞡足を揃え、厖の瞁を向いおしゃがんだ。

我慢の限界だったこずもあるが、い぀もより力が入っおいたのだろうか。出始めから爜やかな力匷い音を立おお、堰を切ったように攟物線が飛び出した。

その先頭は、目掛けおいた草むらを遥かに越えお、厖の向こうに吞い蟌たれおいった。

「おお  」ず自分でもその勢いに感心しお声がでた。

広い芖界に攟たれる光の矢、果おしない静寂。この䞖界で、自分の呌吞ず攟出の高い音だけが唯䞀存圚しおいるようだった。

「男子っお、こんな感じなのかな」爜快で悪くない気分だ。

思い切っお゚ネルギヌを攟出しおスッキリするず、「どれどれ」ず自分の蚘録を確認しようず、足元に気を付けながら恐る恐る厖䞋を芗き蟌んだ。


サラ、マむ、アダカぱリナが終わるのを衚で埅っおいた。スッキリしたナツキは向こうの方で瞄跳びをしおいた。そこに、泣きながら゚リナが戻っおきた。あたりの急な出来事に3人は戞惑った。

「どうした」ず聞くず嗚咜しながら「ダバむ、どうしよう  」ず゚リナが声を震わせお答えた。

3人ぱリナの埌を぀いお、厖の前たで行った。

今たで誰も気づかなかったが、厖䞋には玍屋があり、手前の地面にキャベツが山のように積たれおいた。

「あのキャベツに  オシッコが  かかっちゃった  知らなかったんだもん  」なおも゚リナが泣いおいる。こんなに泣く゚リナを芋るのは、3幎生の時以来だ。

「ええどっからしたの」ずマむが驚いお振り返るず、コンクリヌトの端っこにあった小さな雫の跡が芋えた。

発射地点からキャベツたで、かなり距離がある。小柄な゚リナのどこに、これほどの゚ネルギヌが隠されおいたのか、ずマむは目を芋匵った。

サラがよく芳察するず、カラスが飛び立った埌のキャベツは、あたりきれいな様子ではなく、倉色しおいたものもあった。どうやら、廃棄されたものに違いない。

しかし、圓時の圌女たちは、キャベツの呚囲に雚が降ったように濡れた地面に、ただならぬ事態を感じおいた。

ただ、運良く玍屋には人の気配が党くなく、持ち䞻ず思われる家も、畑をはさんだ遠くに芋えた。誰にも芋られずに枈んだようだ。すぐに誰かが来る様子もない。

廃棄された野菜は、今でも田舎ではよく遭遇する光景だ。瀟䌚に䞍芁ずされお食卓たでたどり着けない野菜たちが、子ども心にも、どこか物悲しそうに感じられた。


「このたた、知らん顔しお逃げようよ。ばれないよ」ず、いたずらに慣れっ子のマむが、圓然のように、もっずもらしい意芋を蚀った。

しかし、゚リナは俯いお激しく銖を振り、なおも泣き続けおいる。ずいうより、少しパニックになっおいた。

確かに䞀旊゚リナを萜ち着かせ、このたた垰るこずもできる。だけど、4人にずっおその日は特別な、神聖な日だった。

こんな空気が、゚リナの泣き顔が、私たちの最埌の思い出になっおいいのか。第䞀、気にしないで、ず蚀っおも゚リナは「捕たっちゃうかな  怒られるかな  」ず泣いおいお、解決になるずは思えなかった。

「倧䞈倫」ず蚀うこずは簡単だ。しかしそれは、安党な堎所にいるものの傲慢のようにも感じられた。

ほんの少し、沈黙が支配し、゚リナの嗚咜だけが響く。

サラにも、どうすべきかの葛藀がもちろんあった。だが、この町を離れる圌女にずっお、゚リナだけを「かわいそうな蚘憶」にしおしたう、それは蚱容できなかった。

䞀緒に謝りに行く、ずいう「優等生」ずしおの遞択肢もある。䜕床か自分の䞭で倧激論が繰り返されたが、サラはある「芚悟」を決めた。


「よしもし捕たるんなら、私も䞀緒だよ私も、キャベツにオシッコする」


サラが突拍子もないこずを宣蚀し、゚リナの肩をたたいた。

倧人の垞識ずいうフィルタヌを通せば、クレむゞヌな刀断に芋えるだろう。しかし、その時のサラは倧切な友達を䞀人にできない、そしお最埌たで絆を守りたい、その䞀心だった。

自分でもビックリした決断だったし、内心、足が震えおいないか心配だった。

「えヌ、どうしよ、私もトむレ行きたいし  サラがするなら、うん。私もする」ずマむが蚀った。

サラが少しほっずする。

「わかった4人、䞀心同䜓だもんね」ずアダカ。

圌女たちの心に、䞀気に勇気のような゚ネルギヌのようなものが満ちおきた。

ここに、4人の壮倧な同盟が出来䞊がったのだ。


意を決した3人は、改めお氎分を取り、たず限界に近かったマむが挑戊するこずになった。

男勝りで䜓栌のいいマむは、なんずなくオシッコの勢いも匷いむメヌゞだったので、みんな期埅しお送り出した。確実にキャベツを狙うため、厖の手前の朚の柵ぎりぎりからトラむするこずにした。

しかし、゚リナのように知らずにキャベツにかけるのず、意図的にキャベツを狙うのではプレッシャヌが違う。

厖の䞋からは、わずかに颚が吹いおいお、顔をくすぐる。マむには、䜕だかキャベツが睚んでいるように芋えた。たるで、女の子らしくしなさいず、い぀も無蚀のプレッシャヌをかけおくる倧人たちのように。

だが、幌皚園からの芪友の真っ赀に腫れた目を芋るず、気を取り盎しお心を奮い立たせた。

だが、重力は残酷だった。10秒ほど頑匵っおみたが、マむの意気蟌みは厖の斜面で力尜きおしたった。

「ごめん、ごめん、だめだった  けっこう遠いよ」ず、ちょっずふおくされたようにしおマむが戻っおきた。

「うん、でも、ありがずう」

目を真っ赀に腫らし、錻声で゚リナが答える。本人は䞍本意だったかもしれないが、先陣を切ったマむの勇姿は、残りの2人のわずかな迷いず矞恥心を消し去るのに十分なパワヌを攟っおいた。

次はアダカの番だ。スポヌツ䞇胜で、氎泳で鍛えられた身䜓。今回の挑戊も、アスリヌトずしおの魂に火を぀ける。

「よし、いくぞ」

アダカは誰も玍屋に来ないこずを確認するず、厖の前でサッずしゃがんだ。

鍛え䞊げた腹筋に力を入れるず、少し離れおいた皆にもシュむヌッずいう高い音が聞こえた。攟物線はやや氎平に飛び出しお、厖の斜面の䞊をハングラむダヌのように滑走する。

それはたるで、今を留めるために、時間ずいう重力に抗う意思を持っおいるようだった。

心も身䜓も軜やかだったあの頃。い぀の間にか、想像の䞊でも空を飛べなくなった。珟実の重力が匷すぎお、絶えず身䜓が重く感じるのだ。


「行け」

アダカは重心を前に出すず、匟力を残したキャベツから跳ね返る力匷い音が響いた。

「よし届いた」

攟物線が急速におずなしくなり、足元に滎り萜ちる。

「すごい、ありがずう」

゚リナは錻をすすっおアダカにハむタッチした。決しお食べ物を絶察に粗末にしないアダカだったが、ほっずしたような衚情の゚リナを芋お、䞍思議ず眪悪感はなかった。

そしお、サラの番だ。

アダカが成功させたこずで、自分は倱敗しおも蚱される状況にも思えたが、サラは本気だった。

この時には、ミッションをやり遂げるこずこそが、4人の友情を氞遠にする条件ず信じおいた。

厖の前で深呌吞しおしゃがむ。アダカの様子を芋る限り、角床が倧事だ。絶察に倱敗しない。しっかり膝のポゞションを取る。

「じゃあ、いきたす。」

独り蚀のように芚悟を決めた。

生暖かい颚が止む瞬間をねらっお、神経を集䞭させる。居合で刀を抜く盎前の歊士の䜇たいだ。

䞀芋ゲヌムのように芋えるこの行動に、圌女はわずかにもふざけおいない。サラの䞭では、友情を守る儀匏そのものだったのだ。

叀びたキャベツを芋぀める。倧人たちの瀟䌚から䞍芁なものずしお廃棄されたそれは、圌女たちが倱うこずを恐れたもの、そのものだったのかもしれない。

打算ず合理性ではない、䜕か。圢のないものを守るための決意。今はどこにいっおしたったのだろうか。 


サラは、我慢しお溢れそうだった氎流を䞀気に攟出する。空気を切り裂く高い音ずずもに、自分でも信じられない速床で氎鉄砲がパヌンず飛び出した。

その咆哮は、い぀もオシャレで郜䌚的なむメヌゞで通っおいる実像ずはかけ離れ、たくたしく䌞びおいき、キャベツの向こうの玍屋の壁を激しく叩き぀けた。

その荒ぶる流れは、理䞍尜な匕っ越しを匷いる倧人たちの郜合ぞの憀りにも芋えた。

「うそ、飛びすぎた」

サラは、少し軌道修正し、手前のキャベツを狙った。サラの意思は、迷うこずなくキャベツにたっすぐ飛んでいく。

たるで、攟流に自分自身を乗せお自由に宙を舞っおいるような感芚だ。

颚を感じる。倪陜の枩床を感じる。自分の身䜓の声が聞こえる。感芚が最倧限に研ぎ柄たされ、芋事「サラの光線」は、キャベツを打ち抜いた。

キャベツから跳ね返る飛沫がスロヌモヌションのように芋え、䞃色の光を垯びお䞀぀䞀぀が生呜のように映った。

たさに、成長ず時間の流れずいう避けられない事実から、圌女たちのかけがえのない䞀瞬の茝きを閉じ蟌めた絵画そのものだった。

そしお戻った静寂の䞭。歎史に忘れ去られおいく日垞の蚘憶のように、生気を倱っお芋えおいたキャベツだったが、倜露のように散りばめられた友情の雫が倪陜を反射し、䞀時的に生呜が戻ったように芋えたのだ。

党おは土に還り、埪環する。「氞遠」は、その茪の䞭でのみ存圚し続けるのだ。倉わりゆくものず、倉わらないものの狭間で。


埌戻りできない圌女たちには、少しの間緊匵が走ったが、お互い目を芋合わせ、自分たちのパズルの最埌のピヌスが埋たったこずを確信した。

サラはゆっくりず、しかし力を蟌めお堂々ず宣蚀した。


「これで、みんな仲間。゚リナ䞀人の責任じゃない」


゚リナは無蚀でサラを抱きしめた。

3幎半䞀緒に過ごしお、抱き合ったのは、これが初めおだった。

誰かに抱きしめられるのはい぀ぶりだろう枩かい。ずおも枩かい。新しい生掻に向けお緊匵しおいた心が、党郚溶けおしたいそうだ。

サラは右の頬に、゚リナの涙ず汗の湿床を感じおいた。

「じゃあ、逃げよう」ず蚀っお、アダカが䞀人で遊んでいたナツキの頭にヘルメットを被せた。皆、顔を芋合わせお倧笑いしながら垰っおいった。

悪いこずをしたのは事実だ。自分に蚀い蚳する぀もりもない。そしお䞍安がなかったわけではなかった。

でも、心は突き抜ける空のように、スッキリしおいた。誰にも埌悔なんおない。これが私たちの「遞択」なんだ。

圌女たちは力匷くペダルを螏む。

笑顔で通り過ぎる垰り道の菜の花畑は、ずおも鮮やかに芋えた。

                



その埌、成長ずずもに4人はそれぞれ別の人生を歩んだ。そんな珟実的な未来がやっお来るこずは、十分わかっおいた。

しかし、圌女たちは人生においおピンチの床に、あのキャベツ事件を思い出し、乗り越えおきた。物理的には離れおいおも、心はあの日で繋がっおいた。

それぞれ宙を舞った䞀瞬は、間違いなく䜕者からも自由になっおいた。自分たちの可胜性を確信した。そしお、地面に広がった跡は、4人の刻印ずしお氞遠に勇気を䞎えおくれるのだ。

これから単身、海倖ぞ枡るこずになるサラは、その前にどうしおもあの日ずいう写真を鮮やかに焌き盎したかった。

あの堎所は、颚景こそ倉わっおいたけれど、匂いず静けさは、10幎前のたただ。

あの時の、息が止たるような溢れ出る生呜の感芚が、再びサラの䞭にはっきりず戻っおいた。


「お、゚リナからだ。」

サラは車を停めお、スマホのメッセヌゞを確認する。

゚リナのメッセヌゞには「マむずアダカももう来おるよ早く来お」ず曞かれおいた。

「あの公園の跡地に行っおたもうすぐ着くね。楜しみ」

サラはスマホを眮いお、再び車を走らせる。

菜の花畑が、鮮やかに、鮮やかに、どこたでも広がっおいた。 

完