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クールな時代| 現代美術の見方

雑誌『草月』 284号(2006年2月)ー 300号(2008年10月)に連載

ケース・ノーランド 横尾忠則

ケネス・ノーランド「サマータイム」 1964年 綿カンバスにアクリル絵具 175.0×175.0cm
原美術館
cKenneth Noland / VAGA, New York & SPDA, Tokyo, 2007
 クールな反応の時代というのがあった。60年代から70年代の、ベトナム戦争文化の時代だった。観衆の反応は冷ややかな感じが支配的だった。表現は切り口の鮮やかさを強調したものがクールだった。
 色彩派のノーランドは円が主。だが彼を一躍有名にしたのは、尖ったV字型の絵である。色彩は交わっていない。はっきりしている。
 「絵の具は缶の中にある時が一番美しい」と、ミニマリズムの画家が言った時代である。色彩は絵の具が容器に保たれている状態が、最も鮮やかだと言うのである。
 ノーランドも綿のカンバスに絵の具をしみ込ませる技法で、色彩を美しいまま純粋に保とうとした。容器の中にある純色に、できるだけ人間の手を加えまいとしたのである。
 「色彩は目の中で混ざる」、という印象派の理論を受け継いでいた。印象派は色をパレットで混ぜるよりは、カンバス上に隣り合わせるように塗ることで、絵を見る人の目の中で混ざるようにした。
 ノーランドは印象派以来掲げてきたモダニズムのたいまつの火を、先に進ませる旗手と見なされた。
 彼の当時の絵を今見ると、時代だったのだと思う。何となく懐かしい。でも今でも明快で純枠なものへ行き着こうとする力を感じる。シンプルだが力がある。
 ここに欠けているものは何だろうか。土着性。80年代になると、この土着性が注目され、世界の美術の潮流となっていく。
 明快さは影を潜め、固有の風俗を取り入れた表現にも、美術界は寛容になっていく。
 欧米の品がみな高級に見えたころ、日本人の作家がニューヨーク近代美術館で個展を開いたと聞いて、すごいと思ったものだ。作家は横尾忠則。
 「葬列I」の背景の色彩はノーランドと同じで、交わっていない。平べったく、明快である。横尾が印刷媒体の仕事に慣れているせいか。喪服にサングラスの映像はこの時代の空気を伝えていて、クールである。
 横尾はアンダーグラウンド文化のデザイナーとして、土着的あるいは固有の風俗に関心を寄せていた。クールだが情念的なデザインを展開していた。
 「葬列I」からは見事なほど、情念や土着的なものが欠落している。映像ははっきりしているが、平べったい感じ。
 この絵は横尾がポスターなどで多用した、中心から発する日章旗のような放射状の背景ではない。だが「葬列I」はカラフルで平べったい。日章旗を背にしたような、土着的あるいは情念的な作品とは違っている。
 これらのノーランドと横尾の作品は、深みはないが、冷たそうで鋭く、他人には干渉しないが自分にもしてほしくない、というクールな時代の特徴が出ている

横尾忠則「葬列 I」
1969年 6枚のアクリル版にシルクスクリーン 74.5×113.5×9.0cm
東京都現代美術館

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