みみひげしっぽ通信 第26号
京都からお届けする、小さな三本立て通信。
偏愛と日常と、ことば。
京都の秋は美しいです。
帰り道が大渋滞しても。
おひるごはんを食べるのに難儀しても。
秋の京都は、美しい。
🐈⬛ こちら、みみひげしっぽ通信社です。聞こえますかー。
三本立て、幕の内弁当です。
【ひと】「あなたの事務所」
(2018年のメモより)
ルイ・ヴィトンの鞄には一生縁がないだろうな、ましてやモノグラムなんてと思っていたのだが、どこかのサイトで見て一目ぼれしてしまった。「ひとりで仕事をしよう」と決めたころだったと思う。「BAG WITH HOLES」。

名前のとおり、穴の開いた鞄。そのままではモノが入らない(!)ので、インナーバッグがついている。デザインは川久保玲だと知って、なんだか「納得!」な気分だった。オットはこの鞄を「モーターショーに出展したコンセプトカーをそのまま売り出したみたい」という。上手いこと言うわね。
とはいえどう考えてもおサイフに見合わない。これから安定した仕事を辞めようというのに身の丈にも合わない。贅沢。無理無理…頭では理解しつつ、どうしても諦めきれないでいた。うじうじうじうじ…そんなわたしの背中を凄い殺し文句でどーんと押した人がいる。
「みみひげしっぽさん、あなたこれから独立するんでしょ?ひとりで仕事するんでしょ?だったらこの鞄、看板どころかあなたの『事務所』になるのよ。きっとそれだけの値打ちがあるよ。」
「あなたの『事務所』」!!
…結局、退職金を当て込んで清水ダイブしてしまった。
日本の若い作家のアクセサリーを扱うセレクトショップのオーナーNさん。お店を持つ前は、デパートのジョージ・ジェンセンですごい成績を上げていたらしいけれど、思うところあって独立したと聞いたことがある。大した買い物をするわけでもないのに、時々会いたくなって髙島屋の裏、高瀬川沿いのお店を訪ねると、いつも笑顔で迎えてくれた。
厳しい苦言もあたたかい言葉も惜しまない人で、ずいぶん年上なこともあり、わたしはいつも不安も希望も素直に口にできた。この鞄を提げて遊びに行くといつも、「さ、大事な事務所はこちらへどーぞ。」と、きれいな籠をすすめてくれるような人だった。
過去形になってしまった。
昨年のお正月、戎神社への初詣の帰りに会いに行ったのが最後。長いお付き合いだったけれど、一緒に写真なんか撮ったことないのに、その時オットに撮ってもらったツーショットが、そのままお別れの挨拶になってしまった。
いつも変わらないおだやかな笑顔と話しぶり、ちょっと毒舌でへたれている時にはわざと辛口。ここで買った、質の良い生地で仕立てたハンチングは息子に取られちゃったと話したらすごく喜んでくれた。
あまりにも突然のことだったので、もう1年になるのにまだ実感が湧かない。
Nさんの言ったとおり、この鞄はまさしくわたしの「事務所」「看板」になった。
初めて会う人にもすぐ覚えてもらえる。話の糸口になる。「ここぞ」という顔合わせや取材の時、ちょっとだけ自信が持てる…確かに自分の身の丈に合わない無理な買い物だったけれど、十分元は取れている。というか、収支はだいぶプラスだ。モノはモノとしてだけそこにあるのではないような気がする。
Nさんとわたしとの間にあるたくさんの「おはなし」と一緒に、わたしはこの「事務所」をずっと大切にすると思う。
🐾この鞄、実際に使ってみての使用感や面白さはまた改めて。いやはや、ヴィトン侮るべからず。
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【たなごころ】シロクロつけようぜ。(パンダ編)
「ぺもの」って、何のことかわかりますか?
「ペンギングッズ」のことだそうだ。
とすると、パンダグッズは…「パもの」だろうか。
「みみひげしっぽ」が屋号なのに(そして家には3匹もいるのに)、わたしのきものまわりにネコものはほとんどない。
なのに、自慢の「パもの」がふたつもある。
【1】パンダが連続回転している半幅帯。
メーカーが「半幅帯に何が転んでいたら可愛いか?」を考えて作ったそうで、ねこと、パンダと、「だるまさん」がリリースされた。
このパンダが可愛い。ねこより断然かわいい。
アスリートの動きの連続写真のように(走り幅跳びとか、クラウチングスタートとか)、ながーーーい半幅帯に、パンダがゴロンゴロンと、しかもなんだかすごい技を繰り出しながら連続回転している。
裏はシロクロの大柄なギンガムチェック。白と黒の細かい千鳥格子のお召にこの帯を結んで、深紅の帯締めを合わせてベレー帽をかぶると、「女の子ホイホイ」のコーディネート、一丁上がり。
【2】パンダ×しろくま×くろくまの羽裏。
生まれて初めて、羽織を誂えた。
黒地に大柄な、抽象化された意匠の、おそらくチューリップがグレーと金の線で描かれた小紋の着尺(B反お値打ち)。
羽裏に選んだのは、4センチくらいのパンダが整然と並ぶ柄。
ところがこれ、よーく見ると、ところどころにしろくまとくろくまが混じっているではないか。
即決である。
羽裏というのは、意外なほど人目につくものらしい。
会う人会う人、「ええ柄のうわものですね…え、その裏…パンダ?」
パンダなんです。で、しろくまとくろくまもいるんです。
見る人見る人大喜び。
初めて自分の寸法で作った袷の羽織は温かく、心地よく肩を滑るが、「スベらない羽織」、この秋デビュー。
🐾余談:きもの好きとねこ好きにははっきりした相関関係があると思っている。
いちど興味本位で「きもの 猫」と「きもの 犬」でweb検索してみたら、57,100,000 対31,700,000。
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【しっぽ】いらっしゃいませ。
うちの3匹のねこたちは、お客さんが大嫌いだ。
ピンポンが鳴ると一目散に逃げる。
が、クロイナーズ(15歳)のうちの1匹、小太郎は、たまにお客さんをしげしげと見に来ることがある(多分、怖すぎて来てしまうんだと思う)。
取り寄せの野菜が届いた。
小太郎は玄関できちんと前足をそろえ、ちょっと斜めの角度でお迎えした。
ヤマト便のおねーさんはひとこと、
「あ、クロネコだ。」
🐾オマエモナー
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さーて、来週のみみひげしっぽ通信(第27号)は?
新シリーズ、始まります。
「ミリしら人物簿」
スタートダッシュ、三本立てでお届けします。
どうぞ、お楽しみに。
【今週のしっぽの先】
今週も、あなたのみみとひげを向けてくださって、ありがとうございます。
初めてのオープンハウス、ありがたいことに大盛況でした。
絶対に出会わなかったはずの方々の人生を少しだけ垣間見て、…
オットは知恵熱を出しました(笑)。
ご感想、おたずね、
取材やインタビュー、執筆のご依頼も、
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