26歳まで、貯金がゼロでよかった
26歳まで、ガチで貯金がない人生を送っていた。
意味がわからないと思うが、仮に手取りが25万円だとしたら、わたしの月々のやりくりはクレジットカードの請求が20万円ある状態から始まっていた。通常なら「お金がないからあと5万円で生活しなきゃ…」となるところだが、残念なことにわたしにはクレジットカードがあった。
クレジットカードは、未来の自分が稼ぐであろう金を引き出せる魔法のアイテムである。「来月の自分、よろしくな!」という気持ちで「じゃあカードで〜」とバカスカ切っていた。正しくは「一文無しなのでカードで払わせていただいてもよろしいでしょうか」である。アホだ。
昔から、目の前にお金があると使ってしまう。「大事に使いなさいよ」と手渡されるお小遣いやお年玉も早々に使いきってしまうので、いつしか没収されるようになった。それでも、親元にいたころは「友だちと遊びに行くから」とか何とか理由をつけてちょっと多めのお昼ごはん代をもらったり、お手伝いをしてバイト代をもらったりしてなんとかやっていたのだが、大学生になってとうとう破産するに至った。すべてリボ払いのせいである。
「大きな買い物ができるのに、月々支払うお金はちょっとでいいジャン!」という革新的なことに気付いてしまった若かりしわたしは、どうでもいいことにまでリボを組み、そしてすぐに払えなくなった。リボ払いとは、高金利の借金のことだったのである。
カード会社からの不幸の手紙(振込の催促)によって親バレし、「貸してやるから今すぐ払え」とコンビニで一緒に8万円を振り込んだ日のことは忘れられない。8万円はわたしにとっては大金ではあるが、大学生に払えない金額でもない。しかしわたしにはお金がなかった。あぁ、情けないことこのうえない。
当時は大学4年生。バイトを頑張っている友人のATMに付き合ったとき「わー、90万になっちゃった。つねに口座に100万はないと不安にならない?」と言われて首をブンブン横に振る。ひゃひゃひゃひゃくまん!?!?!? そんな大金見たことないよ? マイナス2万円なら見たことあるけど?
そんな大学生を経て社会人になってから、散財癖は改善するどころか悪化した。とことん反省しない女である。だって、それまでどんなにバイトをしても、せいぜい月に8万程度しか稼げなかったのが、一気に18万円ももらえてしまうのだ。そりゃ小躍りしたくもなる。わーい、なんでも買えちゃうじゃん!!何も我慢しなくてもいいんだ!!!
…そして冒頭に戻る。18万円どころか18万円以上の金を使った結果、わたしは日々クレカの請求に喘ぐ生活を送っていた。あまりにお金がなかったので、社会人3年目まで実家で暮らし、片道1時間半かけて会社に通っていた。
なぜ自分にはこんなにお金がないのだろう。「ただ有金を使い切る」というシンプルな行為を繰り返しながら生きてきたせいで、お金の余らせ方がわからない。だって口座にお金があるから、クレジットカードが切れるから、お金が使えてしまう。使えてしまうのが悪い。
ここまで読んだ人には、一体全体わたしが何にお金を使っていたか気になっているかと思うが、やりたいこと全部にである。
飲み会には呼ばれれば行くし、ライブや旅行や遊びも我慢せずに行く。コミュニティには5つも入っていた。欲しい服やコスメがあれば買うし、「写真が撮りたい」と思ったらカメラを買って、「絵が描きたい」と思えばiPadを買う。「声優の勉強がしたい」と声優養成所に通ったり、「デザインを学びたい」とWebデザインのスクールに通ったりもしていた。
そんなわたしが、初めて口座残高にまとまったお金を確認したのは、26歳のことであった。口座に金が残っている。初めての経験にワナワナと手が震えた。やっと収入が支出を追い越したのだ。
当時は有給も取らずにバリバリ働き、夜ごはんは会社のビルに入っているコンビニで買ってきてデスクで食べ、深夜までパソコンと睨めっこしているような日々を過ごしていた。要するに、金を使う暇がなかったのである。
しかし、そのころにはどこか自分のなかで「やりきった感」が芽生えていたのもたしかだ。
ずっと貯金がなかった。でも、貯金をしていなかったぶん、やりたいことすべてにお金を注ぎ込めた自信がある。つねに先は見えなかったけれど、目の前の大切なものは全部掴んだ。そんな気がしたのだ。
いまのわたしは、声優養成所に行ったけれど声優として活動はしていないし、iPadで絵を描いているわけでもないし、カメラで写真を撮っているわけでもない。
でも、あのとき声優養成所に通って声優として少しでも仕事をしたからこそ夢を手放せたし、iPadを買ったからグラレコの仕事をして世界が広がったし、カメラがあったから大切な瞬間をたくさん残せた。
欲しい服やコスメをたくさん試したからこそ、自分に似合う服やメイクがわかるようになったし、あのとき入っていた5つのコミュニティの繋がりで今の仕事の礎が築けた感じがある。
アラサーのいま、早期投資の複利で生きている。
こんなに堂々と「全然貯金できませんでしたァ!」と言うもんではないと思うが、わたしはやりたいことに真っ直ぐに課金できた若かりしわたしのことを誇りに思う。
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