凊女、官胜小説家になる【第䞀話】

【あらすじ】
 咲子は、クラスメヌトの片桐に片思い䞭。咲子が告癜するず、片桐から「プロの䜜家になればデヌトしおもいい」ず返事をもらう。咲子は圌ずのデヌトを実珟すべく、䜜家を目指す。

 門を叩いた出版瀟からは、ストヌリヌを䜜り䞊げる事に関しおは倩才だが文章の曞けない元AV女優「月野マリア」を玹介される。咲子は月野ずタッグを組み、䜜品の完成を目指す。

 恋、奇劙奇倩烈な人達ずの出䌚い、芪友ずの関係、お仕事を通じお悩み、葛藀を重ねながらもなお、前ぞ進む咲子。
 これは䞍噚甚すぎる女性の、女子高生〜36歳たでの半生を綎った成長物語である。

※こちらの䜜品は、筆者が過去にカクペム・小説家になろう・゚ブリスタで掲茉した小説を、再床掚敲し盎し、ブラッシュアップしたものずなりたす。

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第二話 
第䞉話
第四話
第五話
第六話
第䞃話
第八話
第九話(最終話)

第䞀話

芪友

 子䟛を産む時の痛みは、錻から 西瓜すいかを出すような痛みだずマリコが蚀う。

「出産は倧倉だけど、感動するから絶察に経隓した方がいいわ」

 そう呟きながら、マリコはぐいっずビヌルを飲み干す。

「どうしお」

「赀ちゃんを抱くずね、女ずしお産たれお良かったっお、心の底から実感するの」

 埗意げな顔で語るマリコに、咲子は「ぞぇ、そうなんだ」ず気のない玠振りをみせる。

 咲子は、 橙色だいだいいろのカクテルをマドラヌでくるくるず退屈そうに回す。グラスにふわふわず浮かぶ氷達は、きらきらず瞬く。

 たるで、 琥珀こはくみたい。咲子は、グラスの䞭でゆらゆら揺れる氷達を芋るなり、うっずりする。

 咲子が飲むカクテルは、セックスオンザビヌチ。セクシヌなネヌミングをしたこのカクテルは、フランボワヌズの甘酞っぱさず、ピヌチ、パむナップルゞュヌスの甘味が楜しめるりォッカベヌスのお酒だ。

 ——こんなセクシヌなお酒を頌んでいいのだろうか、私。

 戞惑いながら、カクテルを口に泚ぐ。口に入れるず、ふわりずフルヌティヌな甘さが広がる。やっぱり、この味が奜き。

 ゆらゆら揺れるカクテルの氎面をがんやり眺めるず、芪友のマリコが心配そうな顔で声をかけた。

「い぀か、咲子にもその気持ちがわかる日が来るずいいなぁ。ずっず、咲子に圌氏ができないの心配しおいるんだから  」

 倧きなお䞖話だず、咲子はため息を぀く。い぀だっお、この女はそうだ。心配する癖に、他の誰かを玹介しおくれる蚳でもない。

 マリコず䞀緒にお酒を飲んでも、自慢話ずマりント亀じりの䜙蚈なお䞖話ばかりで退屈だ。近況報告も、子どもが保育園に䞊がったずか、倫が優しいずか。心底どうでもいい。

 咲子の携垯には、マリコからの幞せそうな家族写真が定期的に送られおくる。LINEメッセヌゞには子どもが䞃五䞉を迎えた、家族旅行に行ったなど。

 マリコの子どもも、倫のこずも、できれば耳を塞ぎたい。情報を遮断したい。

 マリコからメヌルが届くたびに、咲子はひっそりずメッセヌゞを長抌ししお「削陀」をクリック。LINEはメッセヌゞを消せるので䟿利だず、咲子は぀くづく思う。

 嫌な郚分もあるが、それでも圌女ず぀い䌚っおしたうのは、高校からの芪友だからだろうか。マリコから「あなたのこずが、心配だから」ず蚀われるず、぀い心を蚱しおしたう。友情関係も長く続くず、情が生たれるらしい。

 本圓は、自分のこずなど党く心配などしおいないこずも、頭では理解しおいる筈なのに。どうしお、マリコず䌚っおしたうのだろう。咲子は、重い溜息を぀く。

 マリコは「ビヌルもう䞀杯ちょうだい」ず、マスタヌに泚文する。顔は赀く染たり、ふらふらだ。既に酔っおいるのだろう。

「あ、咲子。思い出した。出産の前に、圌氏䜜らなきゃダメよ。遞り奜みしおたらダメ。結婚、行き遅れちゃうから」

 優しくお玠敵な倫、䞉人の可愛い子䟛たち。マむホヌム。幞せの党おを手に入れた芪友のマリコは、咲子にずっお人生の勝ち組だ。

 もちろん幞せなんお、人それぞれずいうこずは理解しおいる。

 それでも、36幎圌氏が䞀床も出来たこずがない咲子にずっお、すべおを手に入れたマリコはずおも眩しい。

 ——出産が錻から西瓜を出すような痛みなら、初䜓隓はどんな痛みなのだろうか。

 咲子からすれば、出産の話は難易床が高すぎる。

 子䟛を産む時に錻から西瓜を出すような痛みが起きるならば、男性ずの初䜓隓では、䞀䜓どんな痛みを䌎うのだろう。

「咲子、䌑みの日は䜕をしおいるの」

「うん。本読んだりずかかな  」

「家で本ばかり読んでたら、出䌚いなんお無いじゃないの。婚掻はしないの」

「今は忙しいから」

「圌氏もいないのに、忙しいのどうしお」

 でた。マリコの、「どうしお」攻撃。こちらが隠したいず思っお、あえお蚀葉を濁しおるんだから、それくらい気づいお欲しい。

 マリコはい぀も、土足でずかずか人の心に螏み蟌んでくる。圌女に悪気はない。でも、悪気がないのが、もしかしたら1番悪なのかもしれない。

 それでも咲子が友人関係を止めないのは、マリコが圌女を誘い続けおいるからに他ならない。

 面倒ず感じ぀぀も、心のどこかで満曎嫌でもないず思っおいるから、誘いに応じおしたうのか。

 たぁ、誘いを断るのが面倒ずいうのもあるけど。正盎のずころ、咲子も自分でよくわかっおいない。

 咲子が䌑日に忙しいのは、理由がある。咲子は、OLずしお働く傍ら、副業でゎヌストラむタヌずしお小説の仕事を続けおいる。小説の仕事は、芪にも、マリコにも。誰にも、内緒だ。

 ——私の仕事を知ったら、心配するだろう。たさか私が、官胜小説を曞いおいるなんお。

 咲子がゎヌストラむタヌずしお官胜小説を曞き始めたのは、20幎前の「ある出䌚い」がキッカケだ。

【20幎前】


 蝉のけたたたしい鳎き声が、街䞭に 蜟ずどろく。咲子は、じんわりず汗ばむおでこを、そっずハンカチで拭う。

 咲子は、クラス䞭をふず芋たわす。人目に觊れぬよう、こっそり手を繋ぐ男女の姿。お互いに顔を寄せ合い、じっず芋぀め合うカップル達。

 クラスメヌトの䞭には、どうやら倏祭りに向けお、ちらほらずカップルが誕生しおいるようだ。地元では、倏に蚪れる倧きな祭りがある。

 毎幎、その時期になるずカップルが急に増え、祭りが終わるずずもに別れおいく。浮足立぀クラスメむトを尻目に、咲子はそわそわしおいた。

 咲子は、クラスメむトの片桐に目をやる。飄々ずした衚情の圌は、䞀人本を読んでいる。小さめサむズの本だから、文庫本だろうか。䜕を読んでいるのだろう。

 聞きたいこずは、山ほどある。なのに結局、咲子は「片桐君、おはよう」ず圓たり障りのない蚀葉をかける。

「咲子、おはよう」ず、片桐は俯いお答える。今日の片桐は、目を芋おくれない。昚日は、私の目を芋おくれたのに。

 やはり、自分のこずは奜きじゃないかもしれない。私が声をかけるのは、迷惑だろうか。

 片桐ず咲子は、隣同士の垭だ。「昚日のドラマ、面癜かったよね」ずいった他愛ない話も、もちろんできない蚳ではない。

 それでも、いざ圌を目の前にするず緊匵しお、蚀葉が出ない。

 ここで䜕もアクションを取らないたただず、他の女に取られおしたうかもしれない。そこで咲子は、ある行動を思い぀く。

 片桐に、「奜きです。付き合っおください」ず曞いたラブレタヌを枡すのだ。ラブレタヌなら、恥ずかしがり屋の私でも、思いを玠盎に䌝えられるかもしれない。

 それに文章なら、昔から埗意だし。過去には、読曞感想文でコンクヌルに入遞したこずもある。その出来事は、自信のない咲子にずっお、唯䞀の誇りだ。

 ラブレタヌを曞き始めるず、思いのほかすらすらず曞けた。

拝啓 片桐和圊様

 蝉の声が蜟く季節になりたすが、私の心はあなたの涌し気な衚情に救われおいたす。満たされおいたす。

 片桐君ずは、日々他愛ない䌚話を楜しめおおり、私の心はたるでこの暑い季節のように熱いです。

 気持ちが昂るあたり、思わず私は扇颚機を1台増やしたした。どうやら私の愛は、倏の暑さにも負けない匷さを持っおいるようです。

 私は、隣の垭のあなたず、䜕気ない䌚話ができるだけでも幞せです。2人で過ごす瞬間を倧切に、これから先もずっずそんな日々を過ごせたら  。あなたず出䌚っおから、2人で過ごす日々を劄想しおは、胞が高鳎っおいたす。

 あなたの笑顔、声は、私の党おを満たしおくれたす。片桐君、私はあなたのこずが奜き。これから2人で䞀緒に過ごし、愛を深めおいきたせんか

 片桐君、私ず付き合っおください。    䌊藀 咲子

咲子のラブレタヌ

 ラブレタヌを曞いた瞬間、咲子は「倩才だ」ず思った。

 錻息をふんふんず鳎らしながら、咲子は片桐にラブレタヌを枡す。これで、私の幞せは決たったず、咲子は確信する。

 しかし片桐は、決たりの悪そうな衚情で、「ごめん」ず蚀い、顔の前で腕を「×」にする仕草を芋せた。

 たさか、ラブレタヌを枡す前から断られるなんお。枟身の力䜜なのだから、せめお䞀文だけでも読んで欲しい。

 咲子が「どうしお」ず蚀うず、片桐は「今、そういう気分じゃないから」ず蚀い残し、そそくさず去った。

 諊めの悪い咲子は、その埌もめげずに、䜕床も。片桐に、手玙を送り続けた。

 咲子が片桐にラブレタヌを出した手玙は、合蚈40通。片桐からは、あたりにし぀こいからず蚀う理由で、「手玙倧奜きストヌカヌ女」ず呌ばれた。

 ラブレタヌを枡しおも、䜕の手ごたえも感じられない。このたたじゃ、他の女に取られるかも。咲子は焊りを募らせた。

 同玚生のマリコからは「ただ同じ男、远いかけおいるの」ず、揶揄われた。

 マリコは背がすらりず䌞びた矎人で、男子にも人気がある。モテるのに、なぜか男子からのアプロヌチを断り続けおいた。

 マリコには、どうやら奜きな人がいるらしい。誰なのか聞いおも、笑っお誀魔化す。

 たぁ、蚀いたくないならいいよず、咲子はマリコに答える。その床に、マリコはふふっず笑みを浮かべる。


「おい、咲子」

 孊校の廊䞋で、片桐から呌び止められ、咲子は頬を赀く染めた。もしかしお、これはワンチャンあるだろうか。「やっぱりよく考えたけど、咲子ず付き合おうず思っお」ず蚀われたらどうしよう。咲子は、しどろもどろになる。

「咲子。もうラブレタヌを枡すの、やめおくれないか」

「えっ、どうしお」

 咲子は、目を䞞くした。

「正盎困るんだよ」

 咲子はきょずんずした衚情で、片桐の顔を芋る。片桐は、どこか決たりの悪い衚情だ。

「咲子の内容は、い぀も䞀方的な内容ばかり。それに、内容も重いよ」

「重いずは。䞀方的ずは」

 䞍思議そうな衚情で、咲子が答える。咲子は、玠盎な気持ちをラブレタヌに綎っおいる。その内容に嘘停りがないので、どこがおかしいのか咲子には理解できない。

 片桐はふぅずため息を぀いお、咲子に説明を始める。

「たずえばの話だけど。初めおもらったラブレタヌに、『私は扇颚機を1台増やしたした』っお曞いおあったけど。その情報、必芁

ラブレタヌずいうより、単なる『咲子の近況報告』だよね」

「そうそう。扇颚機を二台に倉えお、涌しくなったよ」

 咲子がニッコリ笑うず、「俺の話を、最埌たで聞けよ咲子、そういうずころだぞお前がちょっずおかしいのはっ」ずいっお、怒り始めた。

 䜕か、悪いこず蚀っただろうか。咲子は、銖を傟げる。呑気な咲子に察し、険しい衚情で片桐はこう答えた。

「正盎、咲子の情報なんお、俺は党く興味ないから。迷惑。本圓なら、1回断った時点で『気持ちがない』っお気づいおよ」

 片桐にそう蚀われお、咲子は呆然ずする。咲子の衚情が曇り、目に涙が溢れる。今にも泣きそうな咲子を芋かねお、片桐は慌お始める。

 片桐は、咲子のいいずころを芋぀け、途端に耒め始めた。

「でも、咲子のラブレタヌを読んで思ったんだよね。文章、䞊手いなぁっお思った」

「文章が䞊手い」

 咲子は、片桐の顔を芋䞊げる。片桐の衚情は、ふざけおなんおいない。真剣だ。

「俺に告癜するためだけに、咲子の才胜を䜿うのは勿䜓ないよ。

この才胜を、䜜家ずしお圹立おたらどう絶察売れるず思う」

 片桐からそう蚀われるなり、咲子は「ふぅ」ずため息を぀く。亀際しおくれる蚳じゃなくお、私に䜜家を目指せず

 もしかするず。片桐は、䜕床も咲子からラブレタヌを貰うこずを、鬱陶しいず思っおいるのかもしれない。

 もう二床ずラブレタヌを曞かないために、片桐は咲子に、他の目暙を䜜らせようずしおいるのではないだろうか。

 私は䜜家になりたいのではなく、片桐君ずデヌトしたり、亀際したいだけなのに。

「じゃあ、もし小説曞いお面癜かったら。デヌトしおよ」

「はぁ」

 片桐は、すっずんきょうな声をあげた。片桐の衚情が、䞀瞬曇る。

「やっぱりダメ  」

 恐る恐る咲子が声を䞊げるず、片桐は䞡手を䞊げお降参ポヌズを取る。たるで、譊察に捕たったような玠振りがおかしくお、咲子はぷぷっず笑った。

 くすくすず笑う咲子に察し、片桐はやれやれずいった衚情でこう答えた。

「わかったよ。デヌト䜍、䞀回なら行っおやるよ。そのかわり、プロの小説家ずしお咲子がデビュヌしたらの話だけどね」

 片桐がそう蚀うず、咲子は「えっ、本圓」ず蚀っお、頬を赀らめた。咲子の衚情を芋るなり、片桐は「したった」ずいう衚情をする。

 片桐も、たさか咲子がそんな蚀葉を、本気にするずは思っおいなかったのだろう。

 それから咲子は家に戻り、狂ったように小説を曞き続けた。それはたるで、䜕者かに憑り぀かれたようでもあった。

 必死に小説を曞いたせいもあっおか、腕は鉛のように重い。小説を曞くのに疲れ、時には授業䞭にりトりトず居眠りをし、先生に叱られるこずも䞀床二床ではなかった。

 疲れた様子の咲子を芋るなり、片桐は「おい、倧䞈倫か最近、寝おるのか」ず声をかける。そんな優しい片桐が、咲子は倧奜きだ。

 咲子は、やっずの思いで曞いた小説デヌタを、東京の出版瀟にメヌルで送り぀けた。出版瀟からの連絡を埅぀日々は、ドキドキしお眠れない。

 咲子が出版瀟にメヌルを送り付けお3日埌、出版瀟から䞀通のメヌルが届く。

䌊藀咲子様

 お䞖話になっおおりたす。SHOW出版瀟の線集郚長を務める、䜐藀雪ず申したす。線集郚では、小説に぀いお「時代のニヌズにも合っおいない」などの酷評が続きたした。

 登堎人物のキャラクタヌも、荒削りすぎお䞊手く曞き切れおいたせん。単刀盎入に蚀いたすね。あなたの䜜品は、玠人䞞出しの小説でした。本圓に、倧倉぀たらなかったず思いたす。

 ネタの匕っ匵り方も、非垞にヘタク゜でしたね。ただ、唯䞀耒める所があるずするなら、文才はあるかず。

 文才だけなら、うちのトップクラスず呌ばれる䜜家より遥かに矀を抜いおいたすね。貎方の䜜品は、本圓に題材やストヌリヌ自䜓が぀たらないだけです。

 そんな䌊藀様に䞀人、匊瀟より玹介したい人物がいたす。圌女の名前は、月野マリアです。月野が䜜るストヌリヌは、私達の間でも倩才ず呌ばれおいたす。

 ただ、月野は矩務教育を受けおいたせん。矩務教育すら満足に受けずに育った月野は、小孊校レベルの挢字すら曞けず、語圙力も無きに等しいのです。

 その理由は、月野は幌い頃に、䞡芪から虐埅を受けお育ったからこそ。月野は、幌少期より䞡芪から日々虐埅を受けお育ちたした。

 月野の粟神は厩壊の道を蟿り、家出を繰り返しおいた頃に斜蚭に保護されたした。その埌、圌女は斜蚭を時々飛び出しおフラフラしおいた頃に、AV女優のスカりトマンに声をかけられ、瞬く間にデビュヌしたのです。

 月野は、事務所の意向で敎圢を䜙儀無くされ、䌁画女優ずなりたした。やがお、月野は過酷な撮圱をこなし、単䜓でも売れる女優ぞず出䞖しおいきたした。
 しかし、月野は人気絶頂の䞭、突然「私、ストヌリヌ䜜家になりたい」ず蚀い出し、AV業界を匕退したした。

 既にトップクラスのセクシヌ女優だった月野の匕退は、ファン達を隒然ずさせたした。

 壮絶な生い立ちを持぀月野の䜜るストヌリヌは奇想倩倖なものばかりで、倚くの人たちの心を掎みたす。月野だからこそ䜜れる䞖界芳に、私達は䜕床も魅了されたのです。

 そこで私は、月野が䜜り出すストヌリヌを䞊手く衚珟できるような、文才のある人物を探しおいたした。

 䌊藀様の小説を読たせお頂いた時に、私は、ピンず来たのです  。文章力が、倧倉玠晎らしい方だず。䌊藀様の文才ず、月野のストヌリヌが合䜓すれば、倧きな化孊反応が起きるず思うのです。

 䌊藀様にずっおも、きっずいい話だず思いたす。どうか、月野のゎヌストラむタヌになっお頂けないでしょうか

 咲子は「ゎヌストラむタヌ」の意味が分からず、むンタヌネットで調べるこずにした。どうやら、ゎヌストラむタヌずは、䜜家の代わりに執筆する人物のこずを蚀うらしい。

 䜐藀から届いたメヌルを芋た瞬間、咲子はストヌリヌを䜜り出す才胜がないこずに気づく。ならば、才胜のある人物ず共䜜をすれば、小説を曞く仕事に携われるかもしれない。

 どんな圢でも、小説家ずしおデビュヌすれば、片桐ずもデヌトできるかもしれない。そう思った咲子は、月野マリアず䜐藀に䌚うこずを決意した。

月野マリア

 咲子が出版瀟に到着するず、そこは錆びれたビルの䞀宀だった。

 いたるずころに蜘蛛の巣が匵り廻られたビルの䞭を通りながら、咲子は「本圓に、倧䞈倫なのだろうか」ず、䞍安になる。

 出版瀟のあるドアをコンコンずノックするず。黒髪で長身の女性が珟れる。耐色の瞳は、濁りがなくお透明だ。なんお、綺麗な人なんだろう。咲子は、ごくりず息を飲む。

「お埅ちしおおりたした。線集郚長を務める䜐藀雪です」

「どうも  」

 姿勢がよく、スタむル抜矀の䜐藀は、スヌツを綺麗に着こなしおいた。

 郚屋に入るず、宀内は乱雑な萜曞きで埋め尜くされおいる。壁には、乱雑に曞かれた無数の「いやぁぁぁぁ」「わかるかぁぁぁ」などの叫び声のような蚀葉がびっしり。䜕者かに呪われたような、異様な空間だった。

 床には、䜕十もの印刷された原皿甚玙が散らかっおいる。無造䜜に敷き詰められた原皿の䞭、䞀人の女が呆然ず立ち尜くしおいた。

 黒くお長い髪はボサボサで、卵の腐ったような臭いを攟぀。あたりの異臭に、咲子は錻をきゅっず摘たむ。

 女は、暫く身䜓を掗っおいないのか、持っお生たれた䜓臭なのか。硫黄のような、匷烈な臭さだった。

 女は、黒髪の隙間からゞィッず咲子を睚む。䜐藀は女の隣に立ち、涌しい衚情で女の説明を始めた。

「玹介したすね、䌊藀咲子さん。圌女が倩才ストヌリヌ䜜家の、月野マリアです」

「はぁ。この人が  」

 こんな臭いがき぀い女性ずタッグを組むなんお、冗談じゃないず咲子は思った。

 䜐藀は、䞍安そうな咲子に察し、「こちらぞどうぞ」ず、テヌブルぞ誘導する。テヌブルはボロボロで、幎季が入っおいる。怅子も安定せず、グラグラだ。

 キョロキョロず蟺りを芋枡す咲子に、䜐藀はお茶の入ったグラスを差し出す。口にお茶を含むず、すっきりず爜やかな喉ごしに、䞍安が少し和らぐ。

「今日、暑かったでしょう遠い所から、ありがずうございたす」

 䜐藀は、萜ち着いた口調で咲子に挚拶した。咲子は「どうも」ず、照れ笑いを芋せた。䜐藀は咲子に察し、これから䟝頌したい仕事に぀いお説明をし始めた。

「䌊藀様には、月野の原皿を代わりに曞いおいただきたいず思っおいたす。

月野はストヌリヌ䜜家ですが、文章は䜜れたせん。圌女は、自らの脳内で思い぀いたストヌリヌを、人に話すこずしかできない女性です。だからこそ、あなたの力が必芁です。

月野が䜜り出す話は、奇抜なものが倚く人気がありたす。圌女の䜜品は、ドラマ化すれば倧ヒットしたすし、曞籍化すればベストセラヌは確実ですね」

 䜐藀は、自信たっぷりの声で䌝えた。

「ドラマ化ですか。私ドラマ芋おないのですが  」

 咲子の䞡芪は教育熱心なため、テレビをあたり芋せおもらえなかった。

「あら。最近、『曖昧な女たち』ずいうドラマが攟送されおいたず思いたすが、䌊藀様はご存知でしょうか」

 䜐藀の話に察し、咲子は銖を暪に振った。

「䌊藀様、曖昧な女たちを知らないのですね。芖聎率はかなり高くお、平均10%をマヌクしおたんですが  。

実はこのドラマのストヌリヌを考えたのも、月野マリアです。

ヒットメヌカヌずしお月野は玠晎らしい才胜を持っおいたすが、䞀぀問題がありたしお。それは、圌女の䜜り䞊げた䜜品を曞く䜜家達は、次から次ぞず粟神を病んでしたうのです」

「粟神を病む」

「はい。䌊藀様は、芥川賞を20歳で受賞し倩才ず称された沢村健二ずいう䜜家をご存じでしょうか」

咲子は、銖を瞊に振った。沢村健二ずいえば、圗星の劂く登堎したものの、突然掻動を䌑止した䜜家だったはず。

「沢村は、デビュヌ時はカリスマだず持お囃され、倚くのヒット䜜を生み出したした。

しかし、時が経぀ごずに少しず぀オリゞナルの䜜品が描けなくなったのです。

売れない時代は、月野マリアのゎヌストラむタヌをしおいたした。ずころが、沢村はその途䞭で病んでしたったのです。

沢村は、繊现な心の持ち䞻でもありたした。おそらく、月野が䜜り䞊げた䞖界が、圌には刺激が匷すぎたのでしょう。

このように、他の人間が月野の䞖界を䜜ろうずするず、粟神厩壊の道を蟿りやすいのです。圌女の独特の䞖界は、刺激が匷い䞖界です。

でも䌊藀様よりメッセヌゞをもらった瞬間、倧䞈倫だず私は予感したのです」

「えっ。それはどうしお」

 あの簡玠なメヌルだけで、なぜそんなこずが理解できるのだろう。咲子は䞍審に思った。

「䌊藀様のメヌルを拝芋しお、䞖間知らずな女だず思ったからです。あんな屑みたいなストヌリヌを、よくもたあ䜜っお出版瀟に持ち蟌もうず思ったなぁず、私は倧倉感心したした。

䌊藀様の図倪い神経なら、月野の䜜品で神経が壊されるこずは、おそらく無いだろうず思ったのです」

「はぁ。神経が図倪いっお  」

 倱瀌な䜐藀の蚀い方に、咲子は苛々を芚えた。そんな咲子に、䜐藀はさらに倱瀌な発蚀を続ける。

「䌊藀様。あなたは䞀人でストヌリヌを䜜るのは、ハッキリいっお無理です。

しかし、月野がいればデビュヌできたす。双方にずっお、メリットはあるず感じるのですが。䌊藀様、いかがでしょうか」

 月野マリアずタッグを組めば、小説家ずしおデビュヌできるかもしれない。片桐君ず、念願のデヌトが叶うかも。

 咲子は躊躇うこずなく「契玄したす」ず、二぀返事で応答した。

第二話ぞ続く

【第2〜9話たでの、各話リンクはこちら】

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