夫のスペックと、偏見を増改築する妻
~26歳下セネガル人夫とのチグハグな週末婚の記録
アフリカ人と聞くと、槍を手にしてジャンプしてる雑なイメージしかなかった。
自覚はある。私は偏見の塊だ。
そんな思い込みと偏見まみれの私なので、セネガル人の夫に対しても「自然の中でこそ息ができる人」と勝手に決めつけていた。
日本の暮らしでは窮屈ではないか。コンクリートに囲まれた部屋では息苦しいのでは。
そんなことを考えて、ある日キャンプに誘ってみた。私は一人でキャンプツーリングに行くアウトドア強者だ。
「うん、いいね」
まったくよくなさそうなトーンである。
そうだった。夫はシティーボーイなのだ。(シティーボーイって笑)
実家はセネガルでも有数の都市にあり、家族は服を着てるしスマホも持っている。あたりまえだ。
偏見の改築が必要だ。
シティーボーイな夫は、テントで寝袋に潜り込んで一夜を明かす、などという経験はないだろうし、したくもないだろう。
セネガルでテント泊などしていたら、身ぐるみ剥がされるか、野生動物の餌食だ。脳内でナショジオ風の映像が再生された。
私の偏見は、改築と増築を繰り返す。
週末、夫の部屋でランチを楽しんでいると、夫が突然、何かにロックオンした。
「どうしたの?」
言い終わる前に、夫が玄関まで走っていた。
勢いよくドアを開け、何かを手で払っている。
私には何も見えない。見えないものを追い払う夫が、一瞬怖かった。
誇らしげに戻ってきた夫に、恐る恐る尋ねた。
「なにかいたの?」
「スパイダー」
クモ?全然見えなかった。
食卓から玄関まで五メートルはある。しかも薄暗い。
そんな遠くから目視できるのはアシダカグモ級ではないか?実家で見かけると「ヒッ!」と声が出ちゃう益虫だ。
夫と一緒に玄関まで確認しに行くと、小さなハエトリグモが床で息絶えていた。
「この距離で、このちっちゃいのが見えたの?」
「イエス」
「私、ぜんぜん見えなかったよ」
夫は平然と食事を再開した。
ギニア出身のタレント、オスマン・サンコンは視力が5.0以上だという話を聞いたことがある。
都会育ちの夫でさえこのスペックだ。
いろいろと敵わないなと白旗上げつつ、今日も私の偏見は改築と増築を続ける。
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