日本で、再びインジェラを囲む夜
8月の金曜の夜、「インジェラ」を食べに出かけた。
わかちあえる人と食べる料理
娘は、いまも「インジェラ」をときどき恋しがる。
インジェラは、エチオピアの主食で、酸っぱいクレープのような料理。
日本人にはあまり馴染みのない味だと思う。
私たちは、エチオピアに住んでいた当時、ときどき食べていた。
エチオピアのインター同級生のY君も食べたがっているとY君ママからきいていて、ようやく「リトルエチオピアレストランバー」(四ツ木)に誘うことができた。
娘、同級生のY君とY君ママ、ちょうど日本に一時帰国中のK君、私の5人で店の前に17時に集合した。

店の扉を開けると、ワインレッドの絨毯のような壁。新人の頃、上司に連れて行ってもらった西新宿の飲屋街のスナックを思い出す。ムーディ。
「わかちあえる人としかインジェラは食べに行かない」
娘はそう言う。私も同感。
インジェラは、おいしさをわかっている人と食べるのが間違いない。
一朝一夕で好きになる食べ物じゃない、と経験上思うから。
最初の出会い
インジェラは、エチオピアに住み始めて初めて食べた。ネット上の情報や知人からきいた話だとクセのある味らしい。食に保守的な私は、インジェラを最初に口に入れる瞬間、少しドキドキした。
食べることはできた。でも、あまり食べられなかった。次女が一番苦手そうな表情をしていた。
そのうちに、日本人から紹介してもらったお店で、おいしいと思える味に出会った。
子どもたちは、学校のランチメニューにある肉(ティブス)のインジェラがおいしかったらしく、インジェラの日を楽しみにするようになった。
近所のインジェラ店のシュロ(ひよこ豆のカレーのようなもの)が口に合って、日本人補習校の終わった土曜か日曜の午後、ひんぱんに家族4人で通った。
エチオピア人にとっては一人前くらいを4人で食べる日本人家族。
不思議に見えたかもしれない。

じわじわと、そのおいしさを感じられるようになっていった。
エチオピアを離れる頃には、次女が、夫と同じくらいインジェラ好きになった。
インジェラを手で食べる
リトルエチオピアで、いよいよ待ちに待ったインジェラ登場。子どもたちのキラキラした目がインジェラに集まった。
みんな自然に手を伸ばし、慣れた手つきで、手でちぎったインジェラで具を包み、そのまま口に運ぶ。
インジェラは、フワフワでおいしかった。
酸味もあまり感じず食べやすい。
具が残ってインジェラが早々になくなったので、追加注文した。
追加のインジェラは少しぱさついて酸っぱかった。
すかさずK君が、「これは何日か前に作ったものだね」と言った。
そう、インジェラは、作って時間がたつと酸っぱくなる。
「ティブスは、エチオピアの学校で食べてたものがおいしい」
「ここのシュロはうまい」
子どもたちから、本場を知る通の発言が出る。
小学4年生の頃の味覚の体験は、覚えているもんだなあ。
夜の街に繰り出す同級生3人組
テーブルを囲んだときは、大人同士で食卓を囲んでいるようだった。
食後、同級生3人組は浅草へ行き、バッティングセンターやカラオケで遊んで夜遅く帰ってきた。
小学生の一時期を共にエチオピアで過ごした3人が、中高生では少し距離ができ、大学生になった今、親を介さず自分たちで動けるようになった。
子どもたちは、今月には東京、関西、ヨーロッパの大学に通う。
そんな3人が、一緒にインジェラを囲むことができた。
それがなんだかうれしくて、ニヤニヤしながら3人を眺めていた。
これからも、また会って同じ時間をすごせるといいな。
