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地球温暖化防止の可能性とその道筋

  • 1.地球温暖化の現状と1.5度目標

  • 地球温暖化は現代社会が直面する最も深刻な課題の一つであり、その防止が可能であるかという問いは人類の未来を左右する。この問題について、政府間パネルの報告書は次のように述べている。

  • 人間活動が主に温室効果ガスの排出を通して地球温暖化を引き起こしてきたことには疑う余地がなく、1850から1900年を基準とした世界平均気温は2011から2020年に1.1℃の温暖化に達した。⑴

  • さらに「1970年以降の世界平均気温の上昇は、過去2000年間のどの50年間よりも加速している」という事実は、現在の温暖化が自然のサイクルを超えた異常な速度で進行していることを示している。⑵温暖化を抑制するための具体的な目標について、環境省の資料は「地球温暖化は、現在の進行速度で増加し続けると、2030年から2052年の間に1.5℃に達する可能性が高い」と警告を発している。⑶

  • 2.温暖化阻止の条件

  • このような危機的な状況において、温暖化を止めるための物理学的な条件は明確に定義されている。報告書によれば「世界全体で正味ゼロの人為起源CO2排出量の達成及び継続、並びにCO2以外の正味の放射強制力の低減は、数十年の時間スケールで人為起源の地球温暖化を停止するだろう」とされている。⑷具体的な削減の目標として

  • オーバーシュートしないまたは限られたオーバーシュートを伴って地球温暖化を1.5℃に抑えるモデルの排出経路においては、世界全体の人為起源のCO2の正味排出量が、2030年までに、2010年水準から約45%減少し、2050年前後に正味ゼロに達する⑸

  • ことが必要である。これらの数値目標の達成は非常に難しいことではあるが、科学的には「現在の進行速度で増加し続ける」ことを食い止める手段が存在している。⑹

  • 3.日本国内の排出削減の進展と目標

  • 日本国内の現状に目を向けると、排出削減に向けた取り組みは一定の進展を見せている。最新の統計では「2024年度の我が国の排出量と吸収量は、2013年度の我が国の排出量と比べて、28.7%減少」⑺しており、排出量そのものも「10億4,600万トン」と前年度比で減少している。⑻この減少の要因は「製造業の生産量の減少等によるエネルギー消費量の減少及び電力の脱炭素化に伴う電力由来のCO2排出量の減少」に取りまとめられている。⑼日本政府はさらに高い目標を掲げ

  • 世界全体での1.5℃目標と整合的で、2050年ネット・ゼロの実現に向けた直線的な経路にある野心的な目標として、我が国は、2035年度、2040年度において、温室効果ガスを2013年度からそれぞれ60%、73%削減することを目指す⑽

  • という意思を示している。

4.新しい技術としてのネガティブエミッション

しかし、単なる排出削減だけでは不十分な部分もある。そこで注目されているのが、大気中から炭素を取り除く技術である。国立研究開発法人は
2050年のカーボンニュートラル実現に向け、エネルギー、運輸、産業など様々な分野で大幅なCO2排出削減が求められている。しかし、完全に排出量をゼロにすることは難しく、排出せざるを得ないCO2を削減するためにはネガティブエミッション技術で相殺する必要がある⑾
と論じている。具体的には「ネガティブエミッション技術とは、大気中のCO2を回収・吸収、貯留・固定するCO2除去に資する技術である」⑿と定義され、その一つである風化促進については「玄武岩などの岩石を粉砕・散布し風化を人為的に促進する技術」⒀であり「CO2を吸収する鉱物が国内に豊富に存在し、採掘・粉砕や散布などの技術要素は鉱業や農業など産業の既存技術が利用できる可能性があり、早期の実現が期待される」とされている。⒁
5.社会の仕組みを変える必要性
また、社会システム全体の変革も同時に進めなければならない。国立環境研究所によれば
2050年脱炭素社会の実現には、エネルギー供給、産業構造、都市や交通システム、そして生活者の行動まで、社会全体の包括的な転換が不可欠であり、段階的かつ統合的な政策を含む戦略的な総合計画が求められる⒂
としている。具体的には「高断熱住宅の普及と電化」⒃や「自動車の電動化」⒄、「水素利用や電化、CCUSなどの革新的プロセスへの移行」が各部門で緊急の課題であるとされている。⒅特に産業部門においては「製造工程の大幅な見直しを伴うため、企業にとって経済的負担が大きい」⒆という課題があり、これに対しては「グリーンイノベーション基金やカーボンプライシングなど長期的な投資環境整備」による政府の支援が重要な役割を担っている。⒇

6.温暖化に対する科学の答え
一方で、温暖化の事実そのものや人為的な要因に疑問を投げかける声も存在するが、科学的な反論は明確にある。例えば、気温上昇が停止したという主張に対しては気温の変化は海洋を含めた気候システムのごく一部であり、気候システム全体への熱の蓄積量の増大は継続していると指摘されている。また、自然のサイクルであるとする説に対しても20世紀後半から起こっている気温上昇速度はその約10倍も速いなど、20世紀後半から起きている気温上昇は、過去の推移とは明らかに異なると反論されている。さらに、将来的な暴走を懸念する声に対しても、地球には「温度が上がるほどたくさんの赤外線を宇宙に放出して、温度を安定に保とうとするメカニズムが備わっている」(21)ため、現在の予測では「温暖化が暴走するという予測結果は出てきていない」とされている。(22)私自身も疑問を感じていた部分であったが納得のいく答えがあるのだと分かった。
7.これからの予想と私たちの責任
将来の予測について、IPCCは「大幅で急速かつ持続的な温室効果ガスの排出削減は、約20年以内に地球温暖化の識別可能な減速をもたらし、数年以内に大気組成に識別可能な変化をもたらすだろう」との見通しを示している。(23)しかし、対策が遅れることのリスクは非常に大きく「温暖化が1.5℃などの特定の水準を超えたとしても、世界全体で正味負のCO2排出量を実現し持続させることによって、温暖化を徐々に再び低減させうるだろう」(24)とされる一方で、そのようなオーバーシュートは「悪影響を伴い、その一部は不可逆的であり、人間と自然のシステムにとって追加的なリスクをもたらす」ことが懸念されている。(25)特に「2030年に排出が少ないほど、2030年以降にオーバーシュートしないまたは限られたオーバーシュートを伴って地球温暖化を1.5℃に抑えるための課題が少なくなる」という指摘は、この10年の行動の重要性を強調している。(26)
結論として、地球温暖化を防ぐことは科学的かつ技術的には可能であるといえる。ただし、それは「エネルギー、土地、都市及びインフラ、並びに産業システムにおける、急速かつ広範囲に及ぶ移行」を前提としたものである。(27)この移行は「規模の面では前例がない」(28)ものであり、人類がこれまで経験したことのない速度での社会の変革を求めている。(29)私たちには「全ての人々にとって住みやすく持続可能な将来を確保するための機会の窓が急速に閉じている」(30)という認識が必要であり、今この瞬間にとる行動が「現在から数千年先まで影響を持つ」という重い責任を自覚しなければならない。(31)



(1)気候変動に関する政府間パネル. “IPCC 第 6 次評価報告書 統合報告書 政策決定者向け要約”. 国立環境研究所. 2023. https://www-iam.nies.go.jp/aim/pdf/IPCC_AR6_SYR_SPM_231110.pdf, (2026-07-13).
(2)気候変動に関する政府間パネル. “IPCC 第 6 次評価報告書 統合報告書 政策決定者向け要約”. 国立環境研究所. 2023. https://www-iam.nies.go.jp/aim/pdf/IPCC_AR6_SYR_SPM_231110.pdf, (2026-07-13).
(3)気候変動に関する政府間パネル. “1.5℃の地球温暖化:気候変動の脅威への世界的な対応の強化 政策決定者向け(SPM)要約”. 環境省. 2019. https://www.env.go.jp/earth/ipcc/special_reports/sr15_summary.pdf, (2026-07-13).
(4)気候変動に関する政府間パネル. “1.5℃の地球温暖化:気候変動の脅威への世界的な対応の強化 政策決定者向け(SPM)要約”. 環境省. 2019. https://www.env.go.jp/earth/ipcc/special_reports/sr15_summary.pdf, (2026-07-13).
(5)気候変動に関する政府間パネル. “1.5℃の地球温暖化:気候変動の脅威への世界的な対応の強化 政策決定者向け(SPM)要約”. 環境省. 2019. https://www.env.go.jp/earth/ipcc/special_reports/sr15_summary.pdf, (2026-07-13).
(6)気候変動に関する政府間パネル. “1.5℃の地球温暖化:気候変動の脅威への世界的な対応の強化 政策決定者向け(SPM)要約”. 環境省. 2019. https://www.env.go.jp/earth/ipcc/special_reports/sr15_summary.pdf, (2026-07-13).
(7) 環境省. “2024 年度の我が国の温室効果ガス排出量及び吸収量(詳細)”. 環境省. 2024. https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/ghg-inventory/index.html, (2026-07-13).
(8) 環境省. “2024 年度の我が国の温室効果ガス排出量及び吸収量(詳細)”. 環境省. 2024. https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/ghg-inventory/index.html, (2026-07-13).
(9)環境省. “2024 年度の我が国の温室効果ガス排出量及び吸収量(詳細)”. 環境省. 2024. https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/ghg-inventory/index.html, (2026-07-13).
(10)環境省. “2024 年度の我が国の温室効果ガス排出量及び吸収量(詳細)”. 環境省. 2024. https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/ghg-inventory/index.html, (2026-07-13).
(11)国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構. “ネガティブエミッション技術への期待と 「風化促進」の技術課題”. NEDO. 2022. https://www.nedo.go.jp/library/foresight/reports/202212_01.html, (2026-07-13). 
(12)国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構. “ネガティブエミッション技術への期待と 「風化促進」の技術課題”. NEDO. 2022. https://www.nedo.go.jp/library/foresight/reports/202212_01.html, (2026-07-13). 
(13)国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構. “ネガティブエミッション技術への期待と 「風化促進」の技術課題”. NEDO. 2022. https://www.nedo.go.jp/library/foresight/reports/202212_01.html, (2026-07-13). 
(14)国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構. “ネガティブエミッション技術への期待と 「風化促進」の技術課題”. NEDO. 2022. https://www.nedo.go.jp/library/foresight/reports/202212_01.html, (2026-07-13). 
(15)日比野剛ほか. “日本における2050年脱炭素社会実現に向けたロードマップ”. 国立環境研究所. 2026. https://esd.nies.go.jp/ja/research/archives/, (2026-07-13).
(16)日比野剛ほか. “日本における2050年脱炭素社会実現に向けたロードマップ”. 国立環境研究所. 2026. https://esd.nies.go.jp/ja/research/archives/, (2026-07-13).
(17)日比野剛ほか. “日本における2050年脱炭素社会実現に向けたロードマップ”. 国立環境研究所. 2026. https://esd.nies.go.jp/ja/research/archives/, (2026-07-13).
(18)日比野剛ほか. “日本における2050年脱炭素社会実現に向けたロードマップ”. 国立環境研究所. 2026. https://esd.nies.go.jp/ja/research/archives/, (2026-07-13).
(19)日比野剛ほか. “日本における2050年脱炭素社会実現に向けたロードマップ”. 国立環境研究所. 2026. https://esd.nies.go.jp/ja/research/archives/, (2026-07-13).
(20)日比野剛ほか. “日本における2050年脱炭素社会実現に向けたロードマップ”. 国立環境研究所. 2026. https://esd.nies.go.jp/ja/research/archives/, (2026-07-13).
(21) 国立環境研究所地球環境研究センター. “温暖化の科学 Q15 温暖化は暴走する?”. ココが知りたい地球温暖化. 2024. https://www.cger.nies.go.jp/ja/library/qa/science/s001/, (2026-07-13).
(22) 国立環境研究所地球環境研究センター. “温暖化の科学 Q15 温暖化は暴走する?”. ココが知りたい地球温暖化. 2024. https://www.cger.nies.go.jp/ja/library/qa/science/s001/, (2026-07-13).
(23)気候変動に関する政府間パネル. “IPCC 第 6 次評価報告書 統合報告書 政策決定者向け要約”. 国立環境研究所. 2023. https://www-iam.nies.go.jp/aim/pdf/IPCC_AR6_SYR_SPM_231110.pdf, (2026-07-13).
(24)気候変動に関する政府間パネル. “IPCC 第 6 次評価報告書 統合報告書 政策決定者向け要約”. 国立環境研究所. 2023. https://www-iam.nies.go.jp/aim/pdf/IPCC_AR6_SYR_SPM_231110.pdf, (2026-07-13).
(25)気候変動に関する政府間パネル. “IPCC 第 6 次評価報告書 統合報告書 政策決定者向け要約”. 国立環境研究所. 2023. https://www-iam.nies.go.jp/aim/pdf/IPCC_AR6_SYR_SPM_231110.pdf, (2026-07-13).
(26)気候変動に関する政府間パネル. “1.5℃の地球温暖化:気候変動の脅威への世界的な対応の強化 政策決定者向け(SPM)要約”. 環境省. 2019. https://www.env.go.jp/earth/ipcc/special_reports/sr15_summary.pdf, (2026-07-13).
(27)気候変動に関する政府間パネル. “1.5℃の地球温暖化:気候変動の脅威への世界的な対応の強化 政策決定者向け(SPM)要約”. 環境省. 2019. https://www.env.go.jp/earth/ipcc/special_reports/sr15_summary.pdf, (2026-07-13).
(28)気候変動に関する政府間パネル. “1.5℃の地球温暖化:気候変動の脅威への世界的な対応の強化 政策決定者向け(SPM)要約”. 環境省. 2019. https://www.env.go.jp/earth/ipcc/special_reports/sr15_summary.pdf, (2026-07-13).
(29)気候変動に関する政府間パネル. “1.5℃の地球温暖化:気候変動の脅威への世界的な対応の強化 政策決定者向け(SPM)要約”. 環境省. 2019. https://www.env.go.jp/earth/ipcc/special_reports/sr15_summary.pdf, (2026-07-13).
(30)気候変動に関する政府間パネル. “IPCC 第 6 次評価報告書 統合報告書 政策決定者向け要約”. 国立環境研究所. 2023. https://www-iam.nies.go.jp/aim/pdf/IPCC_AR6_SYR_SPM_231110.pdf, (2026-07-13).
(31)気候変動に関する政府間パネル. “IPCC 第 6 次評価報告書 統合報告書 政策決定者向け要約”. 国立環境研究所. 2023. https://www-iam.nies.go.jp/aim/pdf/IPCC_AR6_SYR_SPM_231110.pdf, (2026-07-13).


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