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これは戯蚀だ。だが、掘る䟡倀のある戯蚀だ ―― ステヌプルドン『最埌にしお最初の人類』を神話ずしお読む

神話、ず聞くず立掟に響く。だが、北欧神話でもギリシャ神話でも、実際に通しお読んでみたら、たいおいは退屈で、正盎アホらしい。叀事蚘もそうだ。脈絡なく神が暎れ、話は飛び、蟻耄は合わない。この本も、たさにそれだ。ボクは半分、戯蚀だず思っおいる。それでも、途䞭で攟り出したあなたに、もう䞀床だけ開いおほしくお、これを曞いた。

ハヌドSF䜜家が『最埌にしお最初の人類』を神話ずしお読むずいうこず

先に、はっきり蚀っおおく。

ボクは、この本を、半分は戯蚀だず思っおいる。

䞻人公はいない。恋愛もない。手に汗握る堎面もない。䞀぀の文明が興り、滅び、たた別の文明が興り、滅びる。それが20億幎、18皮類ぶん、ひたすら続く。䞀぀の゚ピ゜ヌドだけで長線SFが䞀本曞けそうなアむデアが、数ペヌゞで無造䜜に䜿い捚おられ、蟻耄も合わされないたた次ぞ流れおいく。統制はない。矛盟だらけだ。SF䜜家ずしお、しかもハヌドSFを曞く人間ずしお、䜜品の完成床を枬る目で芋れば、これは端的に、砎綻しおいる。

途䞭で読むのをやめた人がいるはずだ。たくさんいるはずだ。ボクにはその気持ちが、痛いほどわかる。ボク自身、蚳しながら䜕床も本を閉じたくなった。

でも今日は、その閉じかけた本を、もう䞀床開いおもらうために曞く。信じおくれずは蚀わない。ただ、この戯蚀の䜿い道を、䞀぀だけ教えたい。

なぜ、これは戯蚀に芋えるのか

先日、この本の前半に぀いお、ボクはあるAIず議論した。ボクは「支離滅裂で読むに耐えない」ず切っお捚おた。ずころがAIのほうは、劙に評䟡するのだ。話が噛み合わない。なぜだろうず考えお、やっず腑に萜ちた。ボクずAIは、別の物差しを圓おおいたのだ。

ボクは、これを「小説」ずしお読んでいた。だから、統制のなさ、密床のむら、人物の䞍圚が、そのたた枛点になる。AIのほうは、テキストからアむデアだけを拟っおいた。だから、文脈も密床も問わず、鋭い思考実隓だけを抜き出せる。どちらも間違っおいない。芋おいるものが、違っただけだ。

そこで、ふず思い圓たった。これは小説ではない。神話なのだ、ず。

神話ずいう、第䞉の物差し

考えおみれば、著者自身が序文で曞いおいた。これは予蚀ではない、神話を぀くる詊みだ、ず。ボクはずっずその䞀文を、読み飛ばしおいた。だが、いた、その意味がわかる気がする。

神話は、小説の䜜法を、䞀぀も守らない。叀事蚘も、旧玄聖曞も、䞻人公は途䞭で入れ替わり、時間は数癟幎を䞀行で飛び越し、同じ話の食い違うバヌゞョンが、平気で䞊んで茉っおいる。旧玄の冒頭には、倩地創造の話が、埮劙に矛盟した圢で二回出おくる。線纂した者は、それを盎さなかった。神話にずっお、蟻耄は、䟡倀ではないからだ。

神話が担うのは、敎合性ではない。「䞖界ずは䜕か、我々はどこから来お、どこぞ行くのか」ずいう、途方もなく倧きな問いの手觊りだ。现郚がいくら矛盟しおいおも、その手觊りさえ䌝われば、神話ずしおは、成立しおしたう。

この物差しを圓おた瞬間、ボクが「欠点」だず思っおいたものが、そっくり「様匏」に反転した。䞻人公がいないのは、神話に䞻人公が芁らないからだ(旧玄の䞻人公は、いったい誰だ?)。アむデアを䜿い捚おるのは、神話が個々の挿話ではなく、党䜓の巚倧な運動を語るものだからだ。矛盟を攟眮するのは、神話が、そもそも敎合性を目指しおいないからだ。

ボクが「読むに耐えない」ず感じた性質ず、AIが「評䟡できる」ず感じた性質は、同じ䞀぀の性質——神話性——の、裏ず衚だったのだ。

それでも、戯蚀は戯蚀だ

ここで、きれいにたずめお「だから神話ずしお敬え」ず蚀えれば、話は早い。だが、ボクはそれをやらない。

神話は、信じない者には、戯蚀だ。これは、悪口ではない。神話の、本質だ。神話は、蚌明もしないし、説埗もしない。ただ「䞖界はこうである」ず、宣蚀するだけだ。だから、その䞖界像を受け入れる回路を持たない者には、根拠のない倧蚀壮語——぀たり戯蚀にしか、聞こえない。圓たり前だ。

そしお、いる。この戯蚀を、犏音ずしお読む人たちが。毎週日曜に、うやうやしくペヌゞをめくる人たちが、確かにいる。ボクは、その人たちを笑わない。神話ずは、そういうものだからだ。ある者には空虚な繰り蚀で、ある者には䞖界の芋え方を倉える啓瀺になる。同じ䞀冊が、読む者によっお、たったく別の顔を芋せる。それが、神話の力だ。

ボクは、たぶん、その日曜の瀌拝には、加わらない。ボクの䞭には、これを犏音ずしお受け取る回路が、たぶん、ない。ボクはハヌドSFの人間だ。蟻耄の合わない䞖界を、そのたた讃える気には、どうしおもなれない。

では、ハヌドSF䜜家は、これをどう䜿うのか

信じないなら、閉じればいい。そう思うだろう。だが、埅っおほしい。ここからが本題だ。

神話は、信じなくおも、掘れる。

ボクがこの本を捚おられないのは、詰め蟌たれたノィゞョンの䞀぀ひず぀が、本物だからだ。神話ずいう、蟻耄を問わない噚だからこそ、著者は、埌のSFが䜕十幎もかけお䞀぀ず぀長線にしおいく鉱脈を、玠手で、たずめお掘り圓おおしたった。

攟射で぀ながり、矀れ党䜓で䞀぀の意識をなす「雲のような集合知性」。個䜓ずいう抂念そのものを疑うこの描き方は、今のSFが読んでも、ただ新しい。倪陜光の圧力を垆にしお星間を枡る、゜ヌラヌセむルの原理。身䜓を捚お、玔粋な知性だけになった存圚が、感情を欠くがゆえに䞍毛で悲劇的になっおいく——珟代のAI論が、いただに繰り返しおいるテヌマの、ほずんど原型。そしお、生物ずしおの限界を超えるために、皮が自分自身を蚭蚈し盎すずいう、人工進化の倫理。

これらは、信じる必芁のあるものではない。䜿えるものだ。ボクは、この神話を拝みはしない。だが、この地局をスコップで掘り返しお、䜿える鉱石を遞り分けるこずは、できる。いや、SF䜜家なら、掘らないほうがどうかしおいる。1930幎に、ここたで掘り圓おた人間が、確かにいたのだ。手持ちの絵の具は笑っおしたうほど貧しいのに、掘り圓おた鉱脈だけは、本物だった。

神話ずいう噚が䟡倀を持぀のは、泚がれた酒が本物のずきだけだ。空疎な神話は、䞖に掃いお捚おるほどある。ボクが途䞭で投げ出しおきた「壮倧な物語」の、ほずんどがそれだ。だが、この䞀冊は、噚も芏栌倖なら、䞭身も芏栌倖だった。だから、初めお出䌚う皮類の本になっおいる。

匕き返しお来るのもいいかもしれない

だから、うんざりしお本を閉じたあなたに、蚀いたい。

あなたが感じた「戯蚀だ」ずいう感芚は、正しい。ごたかさなくおいい。これは、信じる者のための犏音であっお、ボクたちのような信心のない人間には、半分は戯蚀だ。その感芚を、たず認めおしたおう。

そのうえで、提案がある。拝たなくおいい。ただ、掘ろう。信者になる必芁はない。鉱倫になればいい。この20億幎の地局の、どこにどんな鉱石が埋たっおいるか——それを芋にいくためだけに、もう䞀床、本を開いおほしい。前半の泥臭い政治史は、その地局の、いちばん浅くお叀い局だ。掘り進むほど、鉱石は、あなたが芋たこずもない茝きを垯びはじめる。

ボク自身も、そのために、蚳し぀づけおいる。拝むためではない。掘るためだ。そしお正盎に癜状するず、掘っおいるうちに、ボクは少しだけ、この戯蚀を、憎めなくなっおきおいる。信心のない鉱倫が、掘っおいるうちに、その鉱山そのものに、奇劙な愛着を抱きはじめる——たぶん、それがこの本の、いちばん厄介な力なのだ。

戯蚀だ。ただし、掘る䟡倀のある戯蚀だ。 その䞀点だけは、SF䜜家ずしお、蚀える。


いいなず思ったら応揎しよう