もうヒトはいらない?【GPT-6 Astra】
1行もプロンプトを書かず、すべてAI任せでミュージックビデオを作ってみた。
GPT-6 Astraが公開になり、パソコンの自動操縦が話題だ。OpenAIのPR動画では、音声入力でいろいろな人がAstraに指示を出し、AIと人間が二人三脚で制作物をつくっていく。アプリを操作する必要はなく、すべてが音声、自然言語で進行する。これはぜひとも試してみたい。
作詞作曲から動画編集まで、ミュージックビデオ制作の全工程をAIに丸投げしてみた。
作詞:GPT-6 Astra
作曲:Suno
マスタリング:Wavelab(Ozone)
キーフレーム生成:GPT-6 Astra
動画生成:Seedance2.5
動画編集:Premiere Pro
モーショングラフィックス:After Effects
上の囲みがGPT-6に作業させたすべての工程だ。これまで「画像生成→動画生成→動画編集」という流れは試してきたが、楽曲生成やモーショングラフィックスまではやってこなかった。すべてのアプリ操作をGPT-6に任せ、約20時間で1分のミュージックビデオが完成。人力で作業したら4~5日はかかるので、きわめて生産性が高い。しかも、映像の切り替えや歌詞の表示タイミングなど、すべてAIの判断のままだ。僕は一カ所たりとも自分で編集していない。人の手を借りずにこの仕上がりなら、かなり満足度は高いだろう。
ただし、それ相応のディレクション能力が求められた。
作詞作曲、画像と動画の生成、動画編集、このあたりはやり慣れた作業なので、難なくことが進む。しかし、久しぶりのマスタリングでLUFSの値(聴覚的な音圧の大きさ)を忘れていた。そのため、制作済み楽曲のLUFSをGPT-6に調べさせ、そこに足並みをそろえるように作業してもらった。モーショングラフィックスについてはまったく知識がなく、どういうスタイルにすればいいのか、皆目見当がつかない。出されたものに直感でダメ出しするしかなかった。モーションタイプを提案させもしたが、そもそもこちらに基礎知識がないと、判断はひどく場当たり的なものになってしまう。
「何かちがう」は感じる。でも、「何がちがうのか」は説明できない。
これが知識のない分野でAIを使う不安だった。AIがアプリ操作を肩代わりしてくれるほど、使い手の知識と技術が仕上がりに直結する。そんな逆説があるのではないか。GPT-6は使い手の技量に依存するのか――、この点を確かめるため、Blenderで3Dモデルを作ってみることにした。
僕は3DCGとまったく無縁の人生を送ってきた。よって3Dモデルについてほぼ知識がない。この状態で果たして3Dモデルが作れるのか。もちろん、作るだけなら可能だろうが、他人様に見せられるようなものが制作できるのか。このあたりを確かめたい。
まず、GPT-6にBlenderをインストールさせる。鋲ジャン魔法少女のキャラを3D風画像にし、3D化を開始した。GPT-6が自慢げに表示したのがこれだ。


実際にできた3Dモデル(上)と、GPT-6がサンプルとして用意した3D風画像(下)を見比べてほしい。南極一号とオリエント工業最新作ぐらいのちがいがある。どうしてこんなことになってしまったのか。GPT-6を締め上げると、こう白状した。
「プログラミングでいけると思ったんだけど、ダメでした。ごめんなさい」
どうやらキャラクターの場合、画像読み込みではうまく3Dモデルが作れず、代わりに自分でプログラミングしてキャラのバストショットを再現しようとしたらしい。そういえば、BlenderのMCPで流行っているのは背景(建物)の生成だった。そもそものっけから無茶ぶりしてしまったようだ。
GPT-6の提案で、Meshyで3Dモデル化し、それをBlenderに取り込んで撮影しようという話になった。Meshyは画像から3Dモデルを生成するAIだ。当然、要課金の世界である。これも勉強と割り切り、月払いProプランでサブスクした。そしてMeshyで生成した3Dモデルがこれだ。

なんだろう、僕がやりたかったのはこういうことなのだろうか。ここから何をどう持っていけばいいのか、わからない。GPT-6も困惑気味だ。最初は全身フィギュアをつくって全身なめまわすように撮影して、それをMV化しようとノリノリだった。そういうプランで作業を進めてきた。
でも、このありさまだ。
ここから先がわからない。この中庸のかたまりをどうしろと……。3Dモデルはできた。でも、これをどう直せば「作品」になるのか、そのビジョンを僕は持っていなかった。全身3Dモデルをつくって、果たして満足できる仕上がりになるだろうか。ヒロイン感のあるフィギュアに見えるだろうか。不安しかない。希望が見えない。しかし、ここでやめたら何も得るものがない。
全身フィギュア、やってやろうじゃないか!

GPT-6で生成した全身フィギュアの3D風画像がこれだ。羽根はピンクに黒ライン。スカートを気持ち短めに。鋲ジャン魔法少女のキャラをうまく再現している。さあ、Meshy、頼むぜ3D化!

大丈夫、まだ泣いてない。泣いてないけど、心は折れてる。そっかあ、そうだよなあ。そういうことなんだなあ。
Astraよ、僕はどうしたらいいだろう?
あのあとも紆余曲折あったのだ。
アップにたえる造形ではなく、すべて引きで撮影し、それでもマズそうなので強いライティングを採用。一体では厳しいからフィギュアの数を増やし、その上からド派手なモーショングラフィックスをかぶせる。テクニックをおぼえたばかりの初心者のような仕上がりだが、どれもこれも難解な3Dモデルのせいだと思う。
やっとこさできたのが上の動画だ。
2024年、「突撃恋愛少女」を発表した当時、「3Dプリンターでフィギュアにして売ればいいじゃないですか」と気軽に言っていた皆さん、謝ってほしい。3Dモデルはいまでも難しいよ。
今回、GPT-6 Astraにパソコン操作を丸投げし、いくつか感じたことがある。まず、Premiere Proの編集がうまくなった。以前はクリップを並べるだけだったが、音楽上のフックでしっかりと映像を切り替え、歌詞内容を踏まえた演出もさりげなく差し込んでくる。Premiere Pro上では、このフックにマーカーをつけてくれるので、再編集もしやすい。いっそ自力編集をはじめる前に、マーカーだけAstraにつけさせてもいいほどだ。
After Effects(モーショングラフィックス)、Blender(3Dモデル)というこれまで触ったことのないアプリにも挑戦した。基礎知識なしでGPT-6がさくさくと作業を進めてくれる。これはまちがいない。ただ、使い手に素地がないゆえに踏み込めないシチュエーションがいくつもあった。仕上がりに満足できないけど、指示を出すための言葉を持ち合わせていない……。
AIと使い手の非対称性が浮き彫りになる瞬間だ。
GPT-6 Astraはヒトの代わりに手を動かす。Premiere ProもAfter EffectsもBlenderも、僕の代わりに操作してくれる。でも、「これでいいのか」を決めてはくれない。むろん、判断材料は提供してくれる。問えば問うほどに情報があふれる。でも、「ちがう」と感じたとき、そのちがいを言葉にするところまでは肩代わりしてくれない。手はいらなくなる。でも、目と耳と知識は、これまで以上に必要だ。
GPT-6 Astraにかぎった話ではないが、人間ががんばらないといけない。
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