こんな夜に聴きたい曲は
昭和40年代後半の夜の国道は、とても煌びやかだった。
当時大人気の映画に出てきそうな各々のトラックたちが、行き交っていたから。
自慢の装飾は、すれ違うこちらにとっては、まばゆいスポットライトのようである。
小学生の時、母の妹である叔母が、仕事終わりに実家(祖母の家)に帰る際には、私も時々便乗していた。
祖母の家に行くのが楽しみというよりも、すれ違うトラックの灯りを見たいというのが、本当の気持ちであった。
車内では、大きなカーカセットから流れる演歌をひたすら聴いていた。
哀愁漂う演歌と、暗闇に浮かぶ煌びやかなトラックのネオン。
そこはまるで、ミラーボールの回る、まばゆいステージのようであった。
若干10歳の私は、この世界観に魅了されてしまったのである。
私は、それ以来、昭和のムード歌謡曲というものの虜になった。
あれは、平成に変わって数年経った頃。
友人達と入ったスナックで、中学生の時に大好きでレコードも買った「敏いとうとハッピー&ブルー」の曲を、お酒の酔いに任せて、歌いあげた時だった。
1人のお客さんから、声がかかった。
「君、若いのに、よく知ってるね!」
「いや、嬉しいよ!これあげるよ、僕も歌ってるから」
と、渡されたのは、「敏いとうとハッピー&ブルー」のカセットテープ。
くれた人は、メンバーの1人だったのだ。
思いがけない出来事に、嬉しいやら、びっくりで、ちょっと舞い上がってしまった。
さすがに2曲目は、恥ずかしくなり、ムード歌謡曲とは違うジャンルにしたけれど。
幼い頃から、人とは違うものを好みがちな私。
そういえば、中学の卒業文集にも、好きなタレント「敏いとうとハッピー&ブルー」って書いたな。
ボーカルの「森本さん」って。
国道を走るトラックのネオンが、いつのまにか、なくなっている。
もし戻れるなら、あの頃のトラックのネオンを浴びながら、今人気の「罪と罰と××と××」を聴きたい。けど、それは、罪と罰、でしょうか。
新旧融合
笑う門には福来る
