スポーツは、本来、人間の心を磨くものだった。
勝つために努力する。負けても立ち上がる。仲間を信じる。相手を敬う。限界に挑みながらも、自分を見失わない。
それが、スポーツマン精神だったはずだ。
しかし今、スポーツ界の一部では、薬物という暗い影が忍び寄っている。記録を伸ばすため。勝利をつかむため。注目されるため。その一瞬の欲望が、汗の価値を汚してしまう。
体を鍛えることは大切だ。けれど、心を置き去りにしたまま筋肉だけを育てれば、人は強くなるのではなく、危うくなる。
心まで筋肉になってしまった人は、やがて柔らかさを失う。痛みを感じなくなる。人の忠告も、自分の異変も、聞こえなくなる。
「少しくらい大丈夫」「みんなやっている」「勝てばいい」
その考えが、末路への入口である。
子どもの頃から育てるべきなのは、ただ強い体ではない。大胆な心である。少々の失敗を気にしない心。負けても腐らない心。勝っても傲慢にならない心。誘惑に負けない心。
本当の強さとは、薬に頼らず、自分の弱さと向き合えることだ。
スポーツは、人間を壊すためにあるのではない。人間を育てるためにある。
筋肉より先に、心を鍛えよ。記録より先に、人間を守れ。勝利より先に、未来を汚すな。
弾ける心とは、暴走する心ではない。正しい方向へ、命が伸びていく力である。
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