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刈りたい人間と、降りたい空。

昨日の大雨。
しかも、僕が住む岐阜県恵那市には大雨警報まで出ていた。
中部地方、近隣の市町村では特別警報が出ていたところもあった。
まずは皆さんのご無事をお祈りします。


いや。
今じゃない。
本当に今じゃないんよ。

春に田植えをして、
水を見て、草を見て、暑さを気にして、
なんとかここまで稲が育ってきた。

そして、いよいよ稲刈りシーズン。

農家としては一番、

「よし、あとは刈るだけ」と言いたくなる時期だ。

でも農業で
「あとは○○するだけ」という言葉は、
「オレ、この戦いが終わったらアイツと結婚するんだ」という
フラグ行為になる。


刈るだけ。
乾かすだけ。
収穫するだけ。

その「だけ」の前に、だいたい天の気分が左右する。

そして昨日の大雨。

人間は稲刈りの予定を立てる。
空は知らない。

Googleカレンダーにも入っていない。

「ナオさん、今週稲刈りなんで雨は来週にしておきますね」

なんて気遣いも当然ない。


自然栽培なんて言っていると、自然と仲良く暮らしているように聞こえるかもしれない。

実際は、

自然にお願いし、自然に振り回され、
自然に予定を壊されながら暮らしている。


田んぼを見ると、穂はもうしっかり垂れている。

人間の都合だけなら、早く刈りたい。
でも雨が続けば田んぼに機械が入れない。

稲が倒れることもある。

ここまで何か月もかけてきても、最後の数日はこちらでは決められない。

農業を始めた頃は、それがもどかしかった。
今も普通にもどかしい。

悟ってはいない。
むしろ天気予報を更新しては、

「変わってないな」

と何度も確認して、ため息をつく。


僕はたぶん、自分で決められることに慣れすぎた。

農業をしていると、予定表が予定表じゃなくなる。
「火曜、稲刈り」
と書いてあっても、空が雨と言えば雨だ。
予定というより、希望に近い。

でも田んぼでは、

「今日は無理」

の一言を、空が平気で言ってくる。

そこには交渉の余地がない。


ただ今日は、稲の心配より先に人間の安全。

警報が出るほどの雨なら、田んぼを見に行くより家にいる。

稲は心配だけど、田んぼは逃げない。
僕まで流されたら、たぶん笑えない。

刈りたい人間と、降りたい空。

人間の都合は、かなわない。


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