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暑さ対策、空調の見積もりで止まっていませんか

暑さ対策、今年は何か変えましたか?

先に一つだけお断りしておきます。これから出てくる数字は、日本の飲食店全体の話ではありません。飲食店ドットコム(株式会社シンクロ・フード)が会員の飲食店経営者・運営者271人に聞いた調査(2026年8月1日〜8月4日、インターネット調査)の結果です。回答者の69.0%が1店舗運営、店舗所在地は東京都が49.4%、首都圏で64.9%。原文も「これらの背景が結果に影響していると推測されます」と書いています。都市部の小さなお店の声が濃く出た数字、として読んでください。

その前提で、気になる並びがありました。

「暑さによる客足の減少」を不安に挙げた店が70.1%。
なのに、昨年と比べて暑さ対策を「特に変更していない」店が59.4%。

不安なのに、動いていない。正直に言います。私は最初、これを「後回しにしているんだな」と読みました。調査を最後まで見て、考えを変えました。

【まず、客足は思ったより割れています】

7月の来店客数を前年7月と比べた回答は、「ほぼ横ばい」が37.6%で最多でした。「減少」31.4%、「増加」29.2%。減った店と増えた店が、ほぼ同数で並んでいます。

面白いのは自由回答です。同じ大阪府、同じカフェ、同じ1店舗運営から、正反対の声が出ています。

「気温が上がって体温に近くなってくると、店舗前の道路の通行人が激減して、誰一人として来店客が来ない日が出てきてしまうことです」(大阪府/カフェ/1店舗)

「気温が高いため、家で料理をするより外食、中食の需要が増えた気がする」(大阪府/カフェ/1店舗)

立地も業態も近いのに、暑さの出方は逆になる。「猛暑だから客が減る」を前提にすると、自分の店で実際に起きていることを見落とします。

【方向が揃ったのは、光熱費でした】

7月の光熱費の予測は「5〜10%増加」45.0%、「10%以上増加」16.2%。原文は「合わせて61.3%が増加を見込んでいる」と書いています。「ほぼ横ばい」は33.9%、減少を見込む回答は合わせて1.8%にとどまります。

実際の請求額ではなく予測です。それでも、来店客数の割れ方とは対照的でした。

客足は割れて、光熱費は揃う。猛暑がまず削るのは売上ではなく、利益率なんです。

【対策が「空調」しかないと、答えは毎年「お金がない」になります】

実施している対策を見ると、来店客向けの最多は「空調の増強、追加投資」41.3%。「冷たいおしぼりの提供」26.9%、「冷たいメニューの追加」24.7%と続きます。

問題はその下です。

「デリバリー、テイクアウトの強化」8.1%
「待ち列の日除け・ミスト・扇風機の設置」6.6%
「営業時間・ランチ時間の変更」4.8%

店の運営そのものを暑さに合わせて動かす対策が、揃って10%を下回りました。「実施しているものはない」も28.4%です。

対策の入口が空調しかなければ、次の質問は必ず「その予算はあるか」になりますよね。

実際、暑さ対策が「十分ではない」と答えたのは45.0%。その122店に理由を聞くと、「費用負担(設備投資・光熱費)」が69.7%で突出しています。この69.7%は122店の中での比率です。原文は全体換算も示していて、「全回答271店舗の31.4%にあたり、飲食店の約3割が費用面を理由に十分な暑さ対策を行えていない」と書かれています。

同じ122店の中で、「効果的な対策がわからない」も23.8%ありました。この声、すごく具体的なものが自由回答に載っています。

「夜中にエアコンを付けっぱなしで帰るのが吉なのか、消して帰るのが吉なのかが知りたい」(東京都/イタリア料理/1店舗)

光熱費が増えると61.3%が見込んでいるのに、その光熱費を左右する運用の答えは現場にない。お金の問題に見えて、判断材料の問題も混ざっています。

【ここからが本題です。ほぼ元手ゼロなのに、55.7%が知らない話】

2025年6月1日、改正労働安全衛生規則が施行されました。一定の暑熱環境で作業させる事業者に、三つのことが義務付けられています。

・熱中症のおそれがある人を早期に発見するための報告体制の整備
・重篤化を防ぐための対応手順の作成
・関係作業者への周知

この法改正、調査では「知らなかった」が55.7%でした。「義務化されたことは知っている」39.1%、「内容まで詳しく知っている」5.2%です。

「うちは屋外作業じゃないから関係ない」と思いましたか?

厚生労働省の施行通達(基発0520第6号)は、「暑熱な場所」をWBGT28度以上または気温31度以上の場所と定義した上で、「必ずしも事業場内外の特定の作業場のみを指すものではなく」と書いています。作業時間の条件は継続1時間以上、または1日4時間超が見込まれること。同じ通達は屋内作業場についても、この作業が行われるものが含まれるとしています。

夏の厨房が条件に当てはまるなら、対象に入るということです。

こんな声が自由回答にありました。

「酷暑の対策について、主に厨房の中が35度以上になるなど、スタッフの体調管理が不安である」(秋田県/居酒屋・ダイニングバー/4〜5店舗)

【実施状況を並べ替えると、構図が見えます】

スタッフ向けの熱中症対策で高いのは「水分・塩分補給の奨励・提供」56.8%、「空調・温度管理(厨房含む)」39.1%、「休憩時間の確保・指導」35.8%。

低いのは「体調確認・早期発見体制の構築」19.6%、「熱中症対策の周知・教育」14.8%、「労働時間の短縮・シフト調整」9.6%。「実施しているものはない」も17.7%あります。

気付きましたか。水を配る、涼しくする、休ませる——その場でできることは実施率が高い。体制を作る、周知する、ルールにする——法律が義務付けた側が、そのまま低い列に落ちています。

55.7%が法改正を知らないのだから、当然といえば当然の並びです。

【今週できること】

温度を測る。通達は実測を原則としています(天気予報などで代替できるのは「通風のよい屋外作業」の例です)。ピークタイムの厨房に温度計を一つ。

報告先を貼る。通達には掲示例が別添で付いています。責任者と代理の氏名・電話番号を書く様式です。

手順を一枚作る。作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じた医師の診察。通達は手順例を二つ示した上で、「事業場独自の手順等を定めて差し支えない」としています。迷ったら#7119等への相談が望ましい、とも書かれています。

周知する。掲示、メール、文書配布のほか、「朝礼における伝達等口頭によること」も原則差し支えないと書かれています。周知した結果の記録の保存までは法令で求められていません(ただし労働基準監督署の確認には適切に対応を、とあります)。

ここまで、設備投資はゼロです。

【そして、今年の夏を記録に残してください】

「天候(酷暑、豪雨)の影響が、どのように来客に反映されるのかがデータ的にわからないこと」(東京都/そば・うどん/1店舗)

来夏に空調へ投資するかを決めるのは、来夏の見積もりではありません。今年の気温と、客数と、光熱費を並べた記録です。

それがないと、判断はまた勘に戻ってしまいます。

【まとめ】

猛暑対策の本丸は、客を減らさないことではなく、利益とスタッフを守ることでした。

客足は割れ(横ばい37.6%、減少31.4%、増加29.2%)、光熱費は揃う(61.3%が増加予測)。不安を挙げた店は95.6%なのに、対策を強化した店は39.9%。その差を説明する筆頭は費用で、これは本物の壁です。

でも、費用の壁と知識の空白は別物です。「知らなかった」55.7%、「内容まで詳しく知っている」5.2%。この距離を詰めるのに要るのは、見積もりではなく貼り紙一枚と朝礼での一言でした。

調査の数字は飲食店ドットコム(株式会社シンクロ・フード)調べ、回答271人によるものです。法改正の内容は厚生労働省の施行通達(基発0520第6号)に基づいています。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。少しでも参考になったら、スキやフォローをいただけると励みになります。

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もう少し詳しい解説はブログに書きました。
https://menumenu.life/blog/heat-measures-271-restaurant-survey-heatstroke-law

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