2日間の研修で、指導者は確かに変わりました…ところが12か月後、その力は「研修前より下」に落ちていました
― 52人を1年間追いかけた研究が示す、学びが消える本当の理由と、消さないための3つの仕掛け ―
2日間の指導者研修は、3週間後には確かに効いていました。ところが12か月後、認める力は研修前を下回りました。52人を1年間追った研究から、学びが消える本当の理由と、消さないための設計を具体的に示します。
はじめに:あの研修は、どこへ行ったのでしょうか
一日がかりの講習会に出て、ノートを取って、「明日から変えよう」と思って帰る。
三週間後、たしかに少し変わっている。
半年後、気づけば元どおり。
多くの指導者が、そして多くの管理職が、この道を何度も往復しています。そして往復するたびに、こう思います。「自分の意志が弱いからだ」と。
今回は、その思い込みを、データで解体します。
スウェーデンのアイスホッケー協会が実施している、公式の基礎指導者研修があります。二日間かけて、短い講義、振り返り課題、ロールプレイ、そして実際に子どもを相手にした氷上での実習まで含む、かなりしっかりした内容です(Bengtsson ほか, 2026)。
研究チームは、この研修を受けた指導者52名を、1年間追いかけました。
測定したのは4回。研修前、1.5週間後、3週間後、そして12か月後です。
その結果が、指導者研修というものの正体を、静かに、しかしはっきりと示していました。
第1章 3週間後の数字は、たしかに上がっていました
まず、良い知らせからです。
研修から3週間後、指導者たちの行動は明確に変わっていました。
有能感を支える行動(できていることを具体的に伝える、期待をはっきり示す、建設的な指摘をする)が上昇(Δ=0.20、効果量 g=0.52)
自律性を支える行動(選択肢を渡す、理由を説明する、本人の意思を尊重する)が上昇(Δ=0.35、効果量 g=0.48)
効果量 g が0.5前後というのは、教育の介入としては「中くらい」に相当します。二日間の研修で、大人の対人行動がここまで動いたというのは、実はかなり立派な数字です。
なお、この3つの行動がなぜ大切なのかは、別の研究がはっきり示しています。11〜14歳のサッカー選手597名を1シーズン中に2回調査したところ、指導者の自律性を支える関わりは選手の3つの欲求の満足を高め、それが活力につながっていました。逆に、統制的な関わりは欲求の阻害を招き、燃え尽きにつながっていました(González, Tomás, Castillo, Duda, & Balaguer, 2016)。
つまり今回消えた数字は、「感じのいい指導」の話ではありません。選手が潰れるかどうかに直結する行動です。
この時点で研究が終わっていたら、「指導者研修には効果がある」という、気持ちのいい結論が出ていました。
実際、多くの研修評価は、ここで終わっています。
第2章 ところが12か月後、数字は研修前を下回りました
ここから先は
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?
