女に責任負わせんな
熊本地震で、多くの方が避難生活を送っています。
猛暑の中、クーラーのない避難所もあり、心身ともに限界に近い状況です。さらに、過去の災害では避難所で性被害が発生したことも報告されており、不安を抱えている方も少なくありません。
そんな中、Xでテレビ番組の一部を見かけました。
そこでは、ある専門家が避難所にいる「特に女性の方」に向けて、
「肌の露出を控える」
「一人で行動しない」
「黒やベージュなど目立たない服を着る」
などと呼びかけていました。
……あ、すみません。
「アドバイス」ではなく、私には「クソバイス」にしか聞こえませんでした。
避難所にいる人たちは、自宅を失い、着替えも十分に持ち出せず、命を守ることだけで精一杯です。
40度近い暑さの中で、「肌を隠してください」と言われても、それは熱中症の危険を高めることにもなりかねません。
そもそも、避難所で服装を自由に選べる人がどれほどいるのでしょうか。
私が本当に聞きたかったのは、
* 「災害用テントを増やしてプライバシーを守りましょう」
* 「女性・マイノリティなどが安心して眠れるスペースを確保しましょう」
* 「夜間の警備や避難所内の巡回を強化しましょう」
* 「性犯罪は絶対に許さないというメッセージを社会全体で発信しましょう」
という提案でした。
被害を受けるかもしれない人ではなく、社会や行政が何をすべきか。
そこにもっと焦点を当ててほしかったのです。
性犯罪対策とは、本来「女性の行動を変えること」ではなく、犯罪が起きにくい環境をつくること」のはずです。
昔、私の知人が防犯ブザーを借りようと警察署へ行ったところ、「暗くなる前に帰宅しなさい」と言われたそうです。
社会人ですよ??
仕事をしていれば、暗くなってから帰宅する日もあるでしょう。
現実には守れないことを「努力不足」のように言われても、苦しくなるだけです。
夜道では何度も後ろを振り返れ、早く帰れ、派手な服は着るな…
こうした助言は昔から繰り返されてきました。
でも、それは「犯罪を起こす側」を変える話ではなく、「被害に遭うかもしれない側」に制約を課す話になってしまいがちです。
そして、その延長線上には、
「そんな服を着ていたから」
「夜に歩いていたから」
という二次被害があります。
被害者に落ち度があったかのように語ること自体が大きな間違いです。
実際には、服装と性犯罪の関係を裏付ける確かな根拠はありません。
日本ファクトチェックセンターは、「挑発的な服装が性犯罪の原因になる」という言説について検証し、その根拠として引用される海外研究は誤って解釈されており、むしろ加害者の多くは被害者の服装を覚えていなかったという内容も含まれていると紹介しています。
また、日本の研究でも、「女性の服装が痴漢被害の原因になる」という考え方自体が、社会に存在する「痴漢神話」であることが指摘されています。
私自身、警察官時代に性犯罪の被害者支援に関わりましたが、被害者の年齢も、服装も、外見も本当にさまざまでした。
トレーニングウェアの人もいました。
ボーイッシュな外見の人もいました。
性犯罪は、「露出が多かったから」起きるのではありません。
多くの専門家が指摘しているように、性犯罪は性的欲求だけでなく、支配やコントロール欲求が背景にあるケースも少なくありません。
服装だけで説明できるものではないのです。
だからこそ、災害時に必要なのは、
「女性は気を付けて」
だけではありません。
避難所の環境を改善すること。
安心して眠れる空間をつくること。
地域全体で見守ること。
そして何より、犯罪を起こそうとする人間に対して、「絶対に許さない」という強いメッセージを社会全体で発信すること。
その方向に知恵と予算を使ってほしいと感じます。
しかし、クーラーの聞いた部屋から「肌を見せるな」「黒かベージュで」って…。勘弁してほしいです。
