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日記 人はときどき自分の限界を知りたくなる生き物

朝。家を出て、あれっ、と思った。まだ涼しいとまでは言えないまでも、暑さが一段和らいできた気がする。季節がほんの少し動いた感じがしてうれしい。

駅に着いて、世間がお盆休みに入ったことを知った。通勤電車に人が少なく、会社に着いても人がまばらで今日はどこも静かだった。うちの会社はお盆休みというものがなく、各々好きなタイミングで夏休みを取る。なので私は今日も普通に出社している。電話も少ないし、話しかけてくる人もいない。上司もいない。自分の仕事だけを黙々と進められて、思いのほか捗った。会社、人がいないとこんなに働きやすいんだな。まあ休めるなら普通に休みたいけども。

仕事終わり、ひとり暮らし中なので外食して帰ってもよかったのだけど、なんとなくお腹の調子がよくなかったので家で蒸ししゃぶを作った。キャベツときのこと豚肉を重ねて料理酒をまぶしてレンジでチンするだけ。できあがったやつに柚子胡椒をちょこんと乗せて、ポン酢で食べるとうまい。特に映えないけど、料理はもう全部これでいいかもしれない。

食後、ゴミの日だったので家中のゴミをまとめる。冷蔵庫の中を整理していると、ずっと前からそこにあった食べかけのチョコとコーヒー味のクッキーを見つけた。食べてみると、案の定しっかり湿気ていて、もそっとする。もう捨ててもいい気はしたけど、食べられないわけでもない。

そこでふと「これ、一度に何枚まで口の中に入るんだろう」と思った。なぜそんなことを思ったのかはわからない。人はときどき自分の限界を知りたくなる生き物なんだと思う。マラソンを走る人もいる。山に登る人もいる。海を泳いで渡る人もいる。そうやって人類は、自分はどこまで行けるのかを確かめながら生きてきた。そしてその長い挑戦の歴史の末端で、私は湿気たクッキーを口に詰めようとしている。

一枚、もう一枚。まだいける。さらにもう一枚。クッキーに押されて頬が膨らんでいく。もう少しいけるか。そう思ったところで盛大にむせた。咳と一緒にクッキーのかけらが床に飛び散って大惨事になった。結局、何枚入ったのかはわからなかった。

帰省中の妻から「ひとり暮らし楽しんでる?」とLINEがきていたので、床に散らばったクッキーを拾いながら「それなりにね」と返した。

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