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読書日記『教師教育学』 ~理論と実践の乖離を埋めるリアリスティック・アプローチ~

『教師教育学』(著者:F・コルトハーヘン[編著]、出版社:学文社、出版年:2010年)を読んでの教育行政・学校経営の視点からの読書日記です。

教育行政や学校経営に携わる中で、教師を育てることの難しさに直面する。研修を企画し、新しい理論や優れた指導法を現場に伝えても、それが実際の教室での子供たちへの指導に結びつくことは多いとはいえない。本書が指摘するように、「よい教育」の知識を教え実践させようとする従来の「技術的合理性アプローチ」には、明らかな限界がある。外部から変革の圧力をかけるだけでは、教師は表面上それに従うふりをするか、見えないところで抵抗するかに陥りがちだ。

無意識の「教師らしさ」という足かせ

そこで本書が提案する「リアリスティック・アプローチ」は、教師が実際の教室で直面する具体的な経験から出発する。その中で紹介されている「4欄の表」という技法が非常に興味深い。1欄から3欄までに「一般的な教育目標」や「次の1コマの授業で到達したい目標」といった理想を書き、4欄目に「実際の授業で起きた特定のエピソード」を書き込む。重要なのは、4欄目に単なる感想ではなく、授業を録音し、実際の言葉のやり取りを逐語的に文字に起こした客観的な「証拠」を書く点だ。 ある実習生は、「すぐに正解を教えず、子供自身に考えさせる」という目標を掲げていた。ところが、録音記録を文字に起こしてみると、実際には子供が質問に来た際、すぐに公式を教えてしまっている自分がいた。理想の目標と実際の行動の間に、ごまかしのきかない矛盾が生じていたのである。 この実習生は、自分の行動が自らの目標ではなく、「他人がこう教えるべきだと思っているやり方」に影響されていたと分析した。学校という組織の中で、若い教師たちは先輩や管理職の目、保護者の期待を敏感に感じ取っている。「正解をしっかり教え込み、教室を管理しなければならない」というプレッシャーが、無意識の先入観(ゲシュタルト)となって行動を支配しているのだ。私たちがよかれと思って示す「あるべき教師像」が、結果的に彼らを縛り、型にはまった授業を強いているのではないかと、自らの組織運営を顧みるきっかけとなった。

矛盾に向き合わせるための「証拠」

「レンガの壁」という別の技法でも、教師の頭の中にある矛盾が浮き彫りになる。「テスト対策をしてあげたい」「教室は静かにしなければならない」という現実的な目標と、「批判的な態度をとれるようになるべきだ」という理想的な目標が混在するレンガを組み立てる際、どれを最優先の土台に置くかで悩むことになる。他者と論理を比較し説明する中で、自分の教育観の偏りに気づかされる仕掛けだ。 このような矛盾に気づかせるためには、抽象的な一般論ではなく、客観的な事実に基づく「向き合わせ」が機能する。「あなたは生徒に解法を考えさせると言いながら、テストは答えだけで評価していますね」といったように、人格を評価するのではなく、事実のみを鏡のように映し出すアプローチだ。 面談の場で、私たちはつい相手の課題を肩代わりし、アドバイスを与えようとする。しかし、本人に証拠を突きつけ、理想と現実のズレを直視させることこそが、深い省察を促す。

沈黙して待つことの難しさと意味

矛盾に直面して沈黙したり、言葉に詰まったりしている教師に対し、指導者はどう寄り添うべきか。本書では「沈黙」を意図的で重要な指導スキルとして位置づけている。 管理職の立場にいると、限られた時間の中でつい先回りして解決策を与えがちだ。焦って別の質問を投げかけたり、自分の成功体験を語ったりしてしまう。だが、人が自身の経験を深く振り返り、問題の本質を自分の言葉で表現するためには、周囲が想像する以上に長い時間が必要になる。 すぐに答えを与える「過剰な援助」は、教師が自分で問題を解決し、自律的に省察する力を奪ってしまう。相手の感情や状況をありのままに受容し、共感しながら、内側から気づきが生まれるのをじっと待つこと。この「余裕」を保障することの重みを感じた。

独自のスタイルを築くための支援

「4欄の表」を1年間書き続けた先述の実習生は、この矛盾の自覚を出発点として、無批判に尊敬していた指導教諭のやり方を客観的に見られるようになり、他人の模倣ではない自分に合った授業スタイルを見つけたという。 外部の権威に盲従するのではなく、現場での葛藤や失敗を素材にしながら、より現実的な目標を再設定し、次なる実践の計画へとつなげる。その省察のサイクルを一人で回せるようになることが、専門家としての教師の自立である。 教育行政や学校経営が果たすべき役割は、教師を変えようと外から圧力をかけることではない。彼らが失敗や矛盾を安全に直視でき、仲間同士で問いかけ合える協同的な環境を作ることだ。一人ひとりの教師が自身の内なる偏りに気づき、自律的に成長するプロセスを、組織としていかに支えるか。その仕組みづくりに向けた具体的な手がかりがある一冊である。

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