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国連でメルカトル図法見直しを呼び掛けたのがなぜトーゴなのか

国連総会で「メルカトル図法」に代わって、「イコールアース図法」の使用を促す決議案を賛成多数で採択されました。

メルカトル図法は教科書などで私達が見慣れた地図ですが、北極や南極に近い高緯度地域ほど面積が大きく描かれ、赤道付近の低緯度地域ほど面積が小さく描かれるというデメリットがありました。

このメルカトル図法からイコールアース図法への見直しを主導したのはアフリカのトーゴなのですが、「なぜトーゴ?」という疑問を持った方も多いと思います。


地図の図法は沢山ある

今回、メルカトル図法とイコールアース図法が取り上げられていますが、実は世界地図には様々な図法があります。

メルカトル図法、イコールアース図法の他に、モルワーデ図法、サンソン図法、グード図法、正距方位図法などなど。

なぜこんなにも沢山図法があるのかというと、その理由は「正解が定まらないから」です。

そもそも、地球は球体ですので、球体を完全に平面に落とし込もうとすると必ずどこかで歪みが生じることになります。

メルカトル図法は形を正確に表すのに優れている一方で、冒頭で述べたように極付近と赤道付近での大きさが著しく差が出ることになります。

一方のイコールアース図法は面積を正確に表すのに優れる一方で、逆に形はいびつになってしまいます。

他にもウィンケル・トリプル図法ロビンソン図法など、極力デメリットを少なくしようと工夫しょうとしている図法もあるのですが、これ以上お話ししようとすると、それだけでかなり長い記事になってしまいますし、ネットで検索すると結構簡単に情報を集められると思いますので、今回はこの程度に留めます。

とにかく、どの図法を選択したとて必ず何かのデメリットは存在することになるので、地図の用途にしたがって、そのときそのときで最適な図法を選ぶことということになっているのです。

今回の例でいうと、面積の大きさが違って見えることが、ヨーロッパ、ロシア、北アメリカといった先進国が多く位置する地域と、アジア、アフリカのような発展途上国が多く位置する赤道付近の国のプレゼンスの格差を助長するという主張に対して、丁寧に対処しようとする意志の現れであるということです。


トーゴがアフリカを代表した

では、本題に戻ります。

報道する機関にもよりますが、今回の動きはトーゴが主導したという情報が載っているものがあります。

何となく、こういう動きって大きな国が主導するようなイメージがありますが、「なぜトーゴ?」って思いませんでしたか。

トーゴの主張はこうです。

「メルカトル図法ではアフリカが相対的に小さく見え、アフリカの過小評価につながる」

これまで、こういったアフリカのプレゼンスを高める情報発信は、南アフリカ共和国とかナイジェリアなど、他にもエジプト、アルジェリア、エチオピアなどが行ってきた印象です。

なぜ、トーゴなのでしょうか。


トーゴ共和国という国

実は、トーゴは周辺の西アフリカ諸国の中で経済規模がそこまで大きな国ではありません。

トーゴ周辺の西アフリカにはナイジェリアガーナコートジボワールといった国々があるのですが、実はこれらの国はトーゴに比べてかなり経済が発展しています。

まずナイジェリアは今やアフリカを代表する地域大国まで成長しています。

2億人以上の圧倒的な人口規模を誇り、石油や天然ガスといった天然資源にも恵まれる押しも押されぬ地域のドンです。

次に、コートジボワールはカカオ・ゴム・カシューナッツなどの輸出で知られる世界一の農業国です。

さらに西アフリカのフラン経済圏の中心地となり、金融センターの地位も獲得し、農業と金融で安定的に外貨を稼いでいます。

そして、ガーナをはじめとする鉱物資源とコートジボワールに次ぐカカオの生産量で、これまた安定的に外貨を獲得しています。

しかも、西アフリカ諸国ではめずらしく英語圏の国でもあるので、グローバル企業の進出もしやすく、そういった面でも経済成長を見込みやすい国でもあります。

一方、トーゴはそういった国々に比べて人口も少なく、近隣諸国のような金、石油、農産物といった外貨を稼げるドル箱産業もありません

どうしても、相対的に経済成長の面で見劣りしてしまう状況でした。


トーゴの経済成長施策

そこで、トーゴはどうしたのかというと、周辺の内陸国の輸出をサポートする道を選びます。

トーゴはギニア湾に面するロメ港の開発に力を注ぎます。

実はロメ港は、西アフリカでは貴重な、大きな船が寄港できる深い港です。

そこで、トーゴはこのロメ港に投資して港湾能力を高めるとともに、周辺内陸国が利用しやすくなるような制度をどんどんと整備していったのです。

トーゴの北側には、マリブルキナファソニジェールといった内陸国が展開しています。

私たちのような海に面した日本に住んでいると実感がわかないかも知れませんが、アフリカのような大陸では内陸部にも発展した街が非常に沢山あります

日本のような国で海沿いに大きな街が出来るのは海洋交易をおこなうからであり、アフリカのような陸上交易が重要な地域では陸路で四方に移動できる地域の方が重要性が高かったのです。

かつて西アフリカで栄えたマリ王国ガーナ王国も、主要な都市は内陸部にありました。

それはマリ王国やガーナ王国の交易が、キャラバンと呼ばれる隊商がメインで、海を越えて海外に輸出するということが重要視されていなかったからです。

ちなみに、今のガーナ共和国はギニア湾に面する国ですが、かつて繁栄を誇ったガーナ王国は、今のガーナ共和国の位置ではなくもっと北側の今のマリの辺りにありました。

今のガーナ共和国は、ガーナ王国をリスペクトして名前を借りただけのようですね。

さて、そんな、かつてはキャラバンを組んで陸上交易で繁栄していた地域の国々が、世界にも自分たちの商品を売りたいと思うのは無理もありません。

そこで、トーゴ王国はこれらの国々の意欲を取り込み、自国の経済成長に活かすため、ロマ港を開発して内陸国からの交易路のハブになろうとしているのです。


トーゴのブランディング戦略

そんなトーゴにとって、西アフリカ地域で国際協調や地域外構で積極的な姿勢をアピールするということは極めて重要なブランディングになります。

実際、トーゴは西アフリカ諸国経済共同体での活動にも比較的積極的で、さらにはデジタル広報や人権・文化的な不均衡の是正といった面でも昔からかなり力を入れてきました。

しかも、先述のマリブルキナファソニジェールといった内陸部の国々は軍事政権で、実は西アフリカ諸国経済共同体とは対立関係にあります。

そういった状況においても、先ほどの交易ハブを狙うトーゴは様々な国とのパイプを維持し、人権の擁護者アフリカ全体の利益の代弁者という立場を強く打ち出すことで、自国の存在価値を高めてきたという経緯もあります。

そういった意味で、今回のメルカトル図法からイコールアース図法への切り替えは、トーゴが西アフリカ諸国に対してちょうど良いアピールになる題材であったことから、トーゴは自らアフリカの代表として主張することを買って出たのでした。

こういう国としてのブランディグは、きっとトーゴの長期的な近隣諸国との友好関係の向上に役立っていくことですし、ひいてはそれがトーゴの経済成長にも繋がっていくことでしょう。

日本もこういったソフトパワーが強い国ですが、私たちもトーゴを見習って、今の日本の“財産”を大切にしていきたいですね。



松本 佑介 @ 枚方を動かす新しいチカラ


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