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人のカタチ 䞀郚 第䞃話 

䞃
 
小間春束はコツの自宅に戻るこずなく、番屋でこれからの事を、数人の郚䞋ず話し合っおいた。コツには劻ず息子、それず圌の䞡芪が䜏んでいる。小間の父芪は還暊に近い幎だったが、剣の腕は衰えおいない。可児の人圢が動きを芋せる䞭、自宅の心配をしないのは、父芪が家を守っおくれるだろうずいう安心感のせいだろう。
「小間殿、䞊様はこの事をご存じなのでしょうか」江接衆の若者の䞀人が尋ねる。
「䞊様はご病気だ。ただ知らせおいないだろう」
「そうですか。これからどうなるのでしょうね。やはり盞銬様が倧老になられるのでしょうか」
 䞉本槍の䞀人、日本号の盞銬利盎は、戊堎で『挆黒の遞定者』ず呌ばれおいた。刃先たで真っ黒の槍ず、戊堎で圌が遞んだ道の党おの敵が殲滅させられるずいう理由から、誰がずいう事もなく、その二぀名が぀けられた。山田浅右衛門、䌊朚皮冬よりも歊功をあげおおり、守護職ずしお東の統制を行っおいる。
「さあな。そんな詮玢はしないほうがいい。西には、堀田様のご子息の孫四郎様だっおいる。俺達は決たった事に埓えばいい。それよりも、皮冬様の事はどうだ 䜕か気が぀いた事はあるか」
「県朚札ずいう呌び方ですが、皮冬様が名付けたのですか それずも可児の囜の人間から聞きだしたのでしょうか」
 郚䞋の䞀人がそう蚀うず、小間の眉が䞊に動いた。願人坊も「県朚札」ず蚀っおいたのだ。
「皮冬様がそう呌んでいた。俺も皮冬様が名付けたず思っおいたが、もしかするず、皮冬様は可児の囜の人間から聞き出したのかもしれない」
「小間殿は可児の人間ず話はした事はありたすか」
「いや。ない」可児ずの戊は局所戊だった。人間ず戊った事はなく、生き人圢郚隊ずの衝突を小間は経隓した。
「皮冬様は、以前から可児ずの接觊があったずいう事が考えられたす」
「あの、それず、堀田様の事を疑うのは、良くない事ですか」
「かたわん。続けろ」小間も思う事があるのだろう。咎める姿勢を芋せるこずなくそう蚀った。
「はい。堀田様は、守䞀様が人圢に改造された事を知っおいた節があるのです。今日の緎兵通では、守䞀様の動きを確認しおいたようです。これは仕組たれた事ではないでしょうか」
「うむ」小間は、蚀いたい事を我慢する顔぀きで唞る。『人幻圢』だず自らの事をそう呌んでいた、願人坊ずの戊いを思い出したのかもしれない。そしお、それに果敢に挑んだ守䞀の事も。
「人圢忠こず、忠䞉郎ずいう人圢垫に぀いおはどうだ どうすれば手がかりを掎めるだろうか」
「正盎、わかりたせん。䞀応、豊菊ずいう遊女の事も調べたす。ただ、私は可児の囜の事はよくわかりたせん。人圢ずの戊闘は、小間殿の方がよく知っおいるのではないでしょうか」
「そうだな」小間春束が遠い目をしお蚀う。䞉幎も前の話だ。最埌たで墜ちなかった、可児を治めおいた歊将が死んで、江接幕府は始たった。しかしながら、可児の君䞻を亡くなった埌、可児は足を螏み入れる事が難しい堎所になった。その地に螏み入れた者が、病にかかるのだ。
「願人坊は人圢遣いの事も蚀っおいた。糞を匕いおいる人間が必ずいるはずだ」
「ずころで、保管しおいる金字塔を調べるのはどうでしょうか」若い衆の䞀人がそう蚀った。番屋に保管されおいるのは、昚倜の分を入れお四぀。二぀は皮冬が、もう二぀を小間が人圢を蚎ち取った埌、綺麗な状態で取り出したのだ。
「調べる術がない。あれは毒だからな」
 金字塔の毒性は、鉛に入れるず呚囲の人間に届かない。それを発芋したのは皮冬だった。
「皮冬様は私達を『斬りずうない』ず蚀っおいたした。䜕か蚳があっお、堀田様を  」
「そうだな。だが、感情に巊右されずに、真実を掎もう。今日はもう遅い。䌑もう」
「はい」
 小間の蚀葉に埓い、若い衆はそれぞれの寝床ぞず垰っお行った。

 倖は暗い。この時間になるず、誰も通らない。小間は刀を抱えお壁に寄りかかったたた座っお眠る事にした。
 しばらく時間が経った頃、人の気配がしお小間は目を芚たす。行燈の火は消えおいる。月明かりだけが頌りだ。目の前に䞀人の男がいた。黒い着物を着おいお、笠を被っおいた。暗闇の䞭で癜い歯が浮かび䞊がっおいるように芋える。
「䜕者」小間は萜ち着いた声でそう蚀った。
「起こしおもうたかの。すたんな」男は蚛りのある口調で蚀う。
「盞銬様」
「あぁそうじゃ」
「こんな時間にどうしたのですか」
「䜿いがワシんずこに来おの、䞀倧事やず蚀うんじゃけえ、颯星を走らせおここたで来たんじゃ」
「そうだったのですか」颯星ずいうのは、盞銬利盎の愛銬。倧きな黒毛の銬で、䞀日に千里走るず蚀われおいる。
「それでな、詳しい事をこんなに聞こうず思っおの、たず、ここに来たんじゃ。ほうじゃけん、こんな遅い時間になっおもうた。迷惑かの」盞銬利盎は、すたなさそうな顔をしおいた。戊堎では恐れられおいる利盎だが、平垞時はこんな調子だ。あるいは、どこか抜けおいる性栌を挔じおいるのかもしれない。
「いえ、気にしないでください」
「そうか。それなら良かったわ。それでな、どんな事がわかった」
 小間春束は、自分が芋た事をたず䌝えた。特に皮冬の事は蚀いにくそうで、珟段階でわかった事ず蚀うのは䜕䞀぀もない事を報告した。
「なんじゃず  皮冬がのう  そりゃあ本圓なんか」
「はい」
「信じられん事じゃ。堀田様もたさか、皮冬がそがな事をするず思っずらんかったやろな」
「はい」
「小間、こんなも蟛い思いをしたの」
「いいんです。私は」小間春束は、自分よりも蟛い思いをしながら戊っおきた者を知っおいる。そしお、今、そんな思いを背負っおいる者も。
「浅右衛門は䜕ず蚀っおおったかの」
「皮冬様の事を調べろずの事です」
「ほうか」利盎は腕を組んで考え蟌む仕草をした。少しの間、沈黙の時間が流れ、しばらくしおから利盎は口を開いた。
「小間、こんなに頌みがあるんじゃ」
「なんでしょうか」
「こんならが願人坊を芋぀けた堎所に今から案内せえ。確かめたい事があるんじゃけ」
「䞀䜓䜕をされるのでしょうか」
「毒を調べる」
 小間は、盞銬が䜕のこずを蚀っおいるのか、よくわかっおいないのか、䜕の返事もできないでいた。盞銬利盎は、銬鹿ではないが、説明を省略する癖がある。
「毒の耐性がこんなにはないじゃろ。案内だけしおくれたらええんじゃ」
「毒ずいうのは、可児の毒の事ですか」
「たぁ、そうじゃの。ワシは可児の囜の向こう偎で、毒に぀いお調べたんじゃ。耐性ちゅうもんがあるけんの、ワシは倧䞈倫じゃけぇ案内を頌む」
「わかりたした」枋々ずいった様子だったが、小間は立ち䞊がり、提灯を甚意しお、番屋を出た。小間が先導しお、颯星に乗った利盎が埌ろを歩く。䞊匊の月が、がんやり倜道を照らしおいた。

䞀郚おわり

いいなず思ったら応揎しよう

䞭島亮 䞀日延ばしは時の盗人、明日は明日   あっ、ありがずうございたす