沿革に載らない歴史
どうも、まさたかです。
あなたが会社に入ったばかりのころ、研修で創業の物語を聞かされた経験などはありますか?
創業者が苦労を乗り越えて、こんな思いで会社を立ち上げて、いまの自分たちがある、という、きれいに整った話です。ホームページの沿革にも、立派なできごとが順番に並んでいます。
ところが、何年か働いていると、それとはまったく違う話が耳に入ってきます。飲みの席や給湯室の雑談で、「あのとき会社、本当はつぶれかけてたんだよ」とか、「実はあの事業を立て直したのは、もう辞めちゃったあの人なんだよね」といった話です。
会社の沿革には一行も載っていない物語です。
そういうとき、会社には表の歴史と裏の歴史があるんだなと、いつも思います。
表の歴史というのは、会社が「こう記憶しておきたい」と選んだ物語です。成功や成長、きれいな理念が並びます。
一方で裏の歴史は、記録に残されなかったほうの本当のできごとです。あやうく潰れかけた話や、いつのまにか消えていったプロジェクト、誰かと誰かの対立、そして静かに去っていった人たちのことです。
おもしろいのは、会社の本当の姿が、たいてい後者のほうに宿っているということです。なぜいまこのルールがあるのか、なぜあの部署だけ空気が違うのか。その理由は、表の沿革ではなく、語り継がれない裏の歴史をたどらないと見えてこないのだと思います。
ここまで読んで、気づいた方もいるかもしれませんが、これは会社だけの話ではないんです。
私たち一人ひとりにも、表の歴史と裏の歴史があります。履歴書やプロフィールに書くのは、いつも表の歴史のほうです。入った会社や、続けた年数や、それなりに見栄えのする実績といったものです。
でも、そこに至るまでには、書けないできごとがたくさんあったはずなんです。途中で逃げ出した仕事、誰にも言えなかった失敗、たまたま運がよかっただけのこと、そして、そっと助けてくれた人がいたことです。
私たちが苦しくなるのは、たぶんここなんですよね。他人の表の歴史と、自分の裏の歴史を、無意識のうちに比べてしまうからです。
相手のきれいに整った成功物語と、自分のぐちゃぐちゃした舞台裏を並べたら、自分のほうが見劣りして当然なんですよね。
でも、それはそもそもフェアな比べ方ではありません。相手にも、見えていないだけで、同じように泥くさい裏の歴史があるはずなんです。
正直に言うと、裏の歴史がいつも美しいわけではありません。会社のなかには、本当はごまかしや隠しごとだった、語りたくない裏もあります。個人の人生でも、思い出したくない過去はあると思います。だから「裏の歴史こそ尊い」と単純に言い切るつもりはありません。
それでも、ひとつだけ言えそうなことがあります。
あなたがいま「自分には立派な物語がない」と感じているとしたら、それはたぶん、自分の裏の歴史を、誰かの表の歴史と見比べてしまっているだけなのではないでしょうか。
記録に残らなかったできごとや、回り道や、人に言えなかった失敗こそが、たぶんあなたを本当に形づくってきたものなのだと思います。きれいな沿革には載らなくても、そこにあなたの本当の歴史があります。
今日からいきなり、自分の過去を誇らしく思えるようにはならないかもしれません。それでも、自分の舞台裏をそんなに恥じなくてもいいのかもしれないと思えるだけで、少しだけ呼吸がしやすくなるかもしれません。
それでは、また次の記事でお会いしましょう。
まさたかでした。
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