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ピアノがある家

子どもの頃。

ピアノがある家って、お金持ちの家だと思っていた。

電子ピアノなら実家にもあった。

でも、私が憧れていたのは、あの黒くて大きい、本物のピアノ。

「ピアノがある家。」

それだけで、なんだか特別に見えた。

そんなピアノが、妻のおじいちゃんの家にあった。アップライトピアノというらしい。

長い年月を過ごしてきた、年季の入った一台だ。

家を買った時、妻が言った。

「このピアノを家に置きたい。」

正直、少し迷った。

うちのリビングはそこまで広くない。

それに、ピアノってまぁー大きい。

でも、妻にとっては思い出の詰まった大切なピアノだった。

だから迎えることにした。

すると驚いた。

ピアノって、自分たちでは運べない。

専門の業者さんが来て、専用の道具で慎重に運んでいく。

さらに設置したら終わりではない。

調律も必要。

「ピアノって、こんなに手がかかるんだ。」

初めて知った。

もちろん、それなりにお金もかかった。

でも、不思議と「もったいない」とは思わなかった。

妻は、お母さんがこのピアノを弾く姿を見て育った。

そして今、その妻が同じピアノを弾いている。

その音を、娘がじっと見つめている。

最近では、娘も見よう見まねで鍵盤を叩くようになった。

まだ音楽なんて分かっていないと思う。

でも、その姿を見ていると、

おじいちゃんの家にあった一台のピアノが、

少しずつ次の世代へ受け継がれている気がする。

子どもの頃は、

「ピアノがある家って、お金持ちなんだ。」

と思っていた。

でも大人になって分かった。

本当に価値があるのは、ピアノそのものじゃない。

そのピアノと一緒に流れてきた時間なんだ。

そう考えると、ピアノって楽器というより

思い出を受け継ぐ家具なのかもしれない。

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