【ショートショート】『ブーケトス』
【ショートショート】『ブーケトス』
元バレー部のキャプテンである歩美のウエディングドレス姿は、女性の私から見ても美しかった。
高身長同士の二人は、
まるで海外のモデルのような佇まいだった。
新婦の歩く姿は、
まるでハレー彗星のようにドレスをなびかせていた。
披露宴も終盤に差しかかり、
司会者がマイクを握る。
「それでは皆様、お待ちかねのブーケトスです!」
会場が沸く。
独身女性たちが前方へ集まった。
私もその一人だった。
歩美は振り返る。
そして、ゆっくりとブーケを掲げた。
その瞬間だった。
私は気づいてしまった。
歩美の足の向き。
腰の入り方。
肩甲骨の開き。
そして。
右肘が高い。
嫌な予感がした。
いや。
嫌な予感ではない。
確信だった。
歩美は。
元バレー部キャプテンだった。
「まずい!!」
私が叫んだ時には遅かった。
歩美は高く跳んだ。
ウエディングドレスが、
まるで翼のように大きく広がる。
最高打点。
完璧な空中姿勢から放たれたのは、
渾身の。
ブーケアタック。
花束は音を置き去りにして飛んだ。
私は反射的にレシーブした。
バシィッ!!
会場が静まり返る。
天井近くまで舞い上がるブーケ。
沈黙。
そして。
後ろから誰かが叫んだ。
「ナイスレシーブ!!」
その瞬間。
元バレー部たちの目が輝く。
「繋げ!!」
「落とすな!!」
「まだ終わってない!!」
ブーケは宙を舞った。
レシーブ。
トス。
レシーブ。
トス。
アタック。
レシーブ。
新郎は呆然としていた。
司会者は苦笑いしながら実況を始めた。
五分後。
ブーケラリーは百回を超えていた。
結局。
その日ブーケを受け取った人はいなかった。
後日。
結婚式場のホームページには
新しい注意書きが追加された。
⸻
※元バレー部が多数出席する場合、
ブーケトスは中止となる場合があります。

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