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「あの人はどうやっおわたしの家を芋぀けるの」から幟星霜を経お─さすらい駅わすれもの宀「ずくべ぀な地図」

2023.6.27 お知らせ📢「さすらい駅わすれもの宀」をkindle出版したした。kindle unlimited月額980円 初回利甚は30日間無料では0円でお読みいただけたす。



目芚めるず枕元にはプレれントが

倢芋がちな子どもだったから、「あの人」のこずはもちろん信じおいた。幎に䞀床のその日、朝目芚めるず、枕元にはあの人が真倜䞭に眮いおいったプレれントがあった。それが最寄駅のショッピングセンタヌにあるサンリオショップ「ギフトゲヌト」ずいう名前だったのお楜しみ袋であっおも、あの人からだず信じる子どもだった。

いちご柄の玙袋を開けるず、キキララや颚の子さっちゃんずいったキャラが人気だったの文房具やポヌチがでおきた。品物に぀いた倀段を足し䞊げるず3000円を超え、「こんなにたくさんくれた」ずあの人の倪っ腹ぶりに感激した。おそらく1000円のお楜しみ袋だったず思われる。

サンリオショップもお楜しみ袋も倧奜きだった。袋にシヌルで貌り぀けられる小さなオマケを集めおいた。「わたしの奜きなもん、なんでわかるんやろ」ず思っおいた。

もうひず぀、「なんでわたしがここに䜏んでるこず知っおるんやろ」が䞍思議だった。わたしの家も、友だちの家も。なんでどの家に子どもが䜏んでいるか知っおいお、迷わんず来れるんやろ。遠い囜の人やのに。

むンタヌネットが登堎する䜕十幎も前。もちろんGoogle mapもなかった。その頃の蚘憶が根っこになっお生たれたお話。

今井雅子䜜 さすらい駅わすれもの宀「ずくべ぀な地図」

さすらい駅の片隅に、ひっそりず䜇む、わすれもの宀。そこがわたしの仕事堎です。ここでは、ありずあらゆるわすれものが、持ち䞻が珟れるのを埅っおいたす。

傘も鞄も癟円で買える時代、わすれものを取りに来る人は、枛るばかり。倚くの人たちは、どこかに䜕かをわすれたこずさえ、わすれおしたっおいたす。だから、わたしは思うのです。ここに来る人は幞せだ、ず。

駅に舞い戻り、窓口のわたしに説明し、曞類に蚘入する、そんな手間をかけおたで取り戻したいものがあるのですから。

その倜も、わたしは、い぀ものように䞀人でわすれもの宀を守っおいたした。おくりものの包みやケヌキの箱を抱えた人たちが、軜やかな足取りで通り過ぎお行きたす。

わすれもの宀の前で足を留める人は、誰もいたせん。今倜は幎に䞀床のずくべ぀な倜なのです。

「わすれもの宀の人、いたすか お客さんです」

駅長の嚘さんが、冷たい颚ずずずもに駆け蟌んで来たのは、柄んだ空に星がたたたき始めた頃でした。

わたしは、手袋を倖しながら「はい」ず返事をしお振り向きたした。ストヌブをいくらたいおも手がかじかむほど寒い日だったのです。

駅長の嚘さんの埌ろには、恰幅のいい男性が立っおいたした。よっぜどあわおふためいおいたのでしょう。男性の豊かな癜いあごひげの間からは、癜い息が湯気のようにこがれおいたした。

䞀目芋おわたしは、圌が有名なあのお方だずわかりたした。わたしが幌い頃からずっずあこがれおいたお方でもありたした。

「お探しのものは、なんですか」

そう尋ねるわたしの声は、少し震えおいたした。たさかこんな颚に蚀葉を亀わせる日が来るずは思っおいなかったのです。

「゚ム プレ ティ パム ラむセプス ゚ット ツォル むヌ」

男性は、息を切らせながら答えたした。

「さっきから、同じこずを繰り返しおいるんだけど  」

駅長の嚘さんが困ったように蚀いたした。

「パム パム ラむセプス」

それは、わたしたちの囜で䜿われおいる蚀葉ではありたせんでした。けれど、わたしには探しものが䜕であるか、すぐにわかりたした。

男性がたず自分を指しおから、壁に貌られた䞖界地図を指差したからです。

「地図のわすれもの、ありたせんでしたか」

圌はそう聞いたのです。

「パム ゚ット ツォヌティゥ ストフィグ リノァむルド トニャック む ディトニオッッパ ゚ブ リゥ ナヌドリンク むナム」

男性は、腕を倧きく広げ、癜いひげを揺らしお、蚎えたした。

「ねえ、なんお蚀っおるの」

駅長の嚘さんがわたしの顔をのぞきこみたす。

「たぶん、こう蚀っおいるんだず思う。『地図がないず、私は仕事ができたせん。たくさんの人が悲しむこずになりたす』っお」
「この人の囜の蚀葉がわかるの」
「どんな囜の人でも、困ったずきは、こんな顔をするものだから」

しかし、残念ながら、地図のわすれものは届いおいたせんでした。

「もしかしお、この人が探しおいる地図っお  」

駅長の嚘さんが、わたしを芋たした。

そうです。異囜からやっお来た癜いひげの男性が探しおいるのは、ただの地図ではありたせん。決たった家にだけ印が぀いおいるずくべ぀な地図でした。

か぀おは、わたしの家にも印が぀いおいたしたが、今はもう぀いおいたせん。でも、駅長の嚘さんの家には、きっず印が぀いおいるはずです。

癜いひげの男性は、どうしおも倜のうちに仕事を終えなくおはなりたせんでした。

しかも、幎に䞀床のその倜のうちに。

壁の䞖界地図の隣には、カレンダヌが貌っおありたした。最埌の䞀枚ずなったカレンダヌの䞀日䞀日が過ぎ、あず䞀週間で新しい幎を迎えようずしおいたした。

わたしの心は、幌い日々に垰っおいたした。秋が終わり、カレンダヌをめくっお最埌の䞀枚になるず、わたしも、わたしのきょうだいも、そわそわしたした。

町䞭の子どもたちみんなが圌の噂をし、圌がやっお来る日を指折り数えたものでした。ず同時に、今幎もあのお方はうちに来おくれるかしらず䞍安になったものです。

「あのお方は、いい子のずころにしか来おくれないのだよ」ず倧人たちに蚀い聞かされおいたしたから。

「どうしよう。もし、地図が芋぀からなかったら  」

駅長の嚘さんは、扉のそばにある柱時蚈に目をやりたした。

「ぐずぐずしおいるず、倜が明けお、朝が来ちゃう」

わたしも、同じ心配をしおいたした。もし、来るはずのあのお方が来おくれなかったら、「ああ、がくは、わたしは、いい子じゃなかったんだな」ず、どれだけの子どもたちががっかりしおしたうこずでしょう。

「そうだ、地図が芋぀からないなら、䜜っちゃえばいい」

駅長の嚘さんが蚀いたした。

「地図を䜜るの」

わたしは思わず聞き返したした。

「そう。だっお、わたしたち、この町のこずなら、誰よりもよく知っおいる。どの家に誰が䜏んでいるか、䜕が奜きかもわかっおいるもの」

わたしず駅長の嚘さんは、倧急ぎでずくべ぀な地図をこしらえたした。この町の地図の子どもがいる家の䞀軒䞀軒に、わたしが名前ず幎霢を曞き入れ、駅長の嚘さんが子どもの䌌顔絵を描きたした。

どの家に、どんな子が䜏んでいるのか。

男の子か女の子か。

䜕歳くらいか。

奜きなものは䜕か。

駅長の嚘さんは、子どもたちの特長を぀かんで、䞊手に描いおくれたした。い぀もお父さんの仕事が終わるのを埅぀間、駅を行き来する人たちの絵を描いお、過ごしおいるのです。

郚屋が冷えきっおいるこずも、手がかじかんでいるこずも忘れお、わたしたちは倢䞭で色ずりどりのペンを地図に走らせたした。

「ワゥ パム ラむセプス ゚ット スィ ティ ゚ム スプレヌ ティ りォむ クナヌト」

手䜜りの地図を受け取るず、こわばっおいた男性の衚情がようやくやわらぎ、豊かな癜いひげに芆われた口元がにっこりず笑いたした。

「ありがずう。この地図があれば、間違いなくプレれントを届けられたすよ」

歌うような異囜の蚀葉は、きっずそんなこずを告げおいたのだず思いたす。

「サムトシァルク むレヌム」

高らかにひず声かけるず、男性は駅の前に埅たせおあったトナカむのそりに乗り蟌み、地図に曞かれた家々ぞず旅立っおいきたした。

「メリヌクリスマス」

わたしず駅長の嚘さんは、元気よく手を振りたした。

癜い瞁取りのある赀い䞊着ずズボンが倜空に吞い蟌たれるように遠ざかっお行くのを芋届けるず、ちょうど仕事を終えた駅長さんが嚘さんを迎えに来たした。たった今起きた事件を報告する嚘さんの匟むような声ず、駅長さんがあいづちを打぀穏やかな声。それもたた、今宵ならではの莈りものでした。

長い間胞の奥にしたっおいた幌い日々の思い出が、わたしの心をあたたかく満たしおいたした。くすぐったいようなうれしさに頬がゆるみ、遠い昔きょうだいで歌ったクリスマスキャロルが唇からこがれたした。

「倧人になっおもあのお方からクリスマスプレれントを受け取れるなんお、すおきな仕事じゃないか」

返事をする者はいたせん。ここにいるのは、匕き取り手がないたた聖なる日を迎えようずしおいるわすれものたちだけでした。

「メリヌクリスマス」

わたしは、そのものたちに、心からの祝犏を告げたした。

※2023.6.15 kindle版出版準備の線集にあたりラストを加筆

「さすらい駅わすれもの宀」のクリスマス

「ずくべ぀な地図」は、地方ラゞオ局の䟝頌を受けお曞いた「さすらい駅わすれもの宀」ず題した短線シリヌズのひず぀。

䌁画は立ち消えになっおしたったけれど、2015幎、NHK宮厎攟送局制䜜の県域番組「いっちゃがラゞオ」で読たれる機䌚があった。

11月に「センセむずいう名の鳥」ずいう䜜品を県内圚䜏の圹者・濱けい子さんが朗読されたのに続いお、12月に地元の高校の挔劇郚メンバヌに『ずくべ぀な地図』を朗読しおもらうこずになった。

基本は「わすれもの宀」の䞻である「わたし」のモノロヌグに「わすれものを探しに来る人」のセリフが挟たれる圢だが、出挔者3人に圹を割り振れるよう「駅長の嚘」の圹を䜜った。

元々は具䜓的に曞いおいなかったあの人のセリフも曞き起こした。お気づきの方も倚いず思うが、英語を逆さ読みにしおいる。声に出しお読むず、聞いたこずのない異囜の蚀語のような謎めいた響きになる。

挔劇郚の高校生たちは、誰がどの圹に合うのかみんなで話し合いを重ね、圹䜜りをし、攟送に臚んでくれたらしい。あの人を信じおいた子ども時代から幟星霜を経お、あの人ぞの疑問が物語になり、゜リではなくラゞオの電波に乗っお家々に届けられた。

同じ幎に『さすらい駅わすれもの宀』に光を圓おおくれたのが、蚀葉ず音楜のナニット「音due.おんでゅ」だった。オリゞナル䜜品を曞き䞋ろし、翌幎の朗読ラむブで䞊挔が実珟した。その経緯は、こちらのnoteに。

そのnoteの䞭でも玹介しおいるが、今幎のステむホヌム䞭に「音ラむン音due.」ず銘打っお、『さすらい駅わすれもの宀』の動画西村ちなみさんず倧原さやかさんの朗読ず、窪田ミナさんのピアノのリモヌト共挔が公開された。眠っおいたのを音due.に起こしおもらい、ラむブで䞊挔しおもらった『䞖界にたったひず぀の垜子』ず『指茪の春』。

あらためおこちらでもご玹介しお、音のクリスマスプレれントを。

『䞖界にたったひず぀の垜子』

『指茪の春』

今月はじめ、「亡き劻の指茪が畑に」のニュヌスがネットで話題になったずき、「リアルわすれもの宀だ‌」ず音due.メンバヌで驚きを分かち合った。さすらい駅の片隅に䜇むわすれもの宀のように、心の片隅に小さな居堎所を䜜っお、時々思い出される。そんな物語たち。

Clubhouseで続々読たれる2021幎

12/17金さんが぀亭しょこらさんず氎野智苗さん

2121/12/7火Atsuko Fukuokaさん3人目

12/9朚琵琶語りのコタロりさんが肥埌琵琶語り

12/22氎埳田祐介さんw/山口䞉重子さんのピアノ2䜜目

2023.7.1 おもにゃん犏岡敊子さん

2023.12.21 埳田祐介さん


いいなず思ったら応揎しよう

脚本家・今井雅子📚蚀葉遊びが奜きな物曞き 目に留めおいただき、ありがずうございたす。わたしが物曞きでいられるのは、面癜がっおくださる方々のおかげです。