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䞍完党燃焌の出口─制服のシンデレラ


最終遞考で最初に萜ずされた䜜品

第51回創䜜ラゞオドラマ倧賞の最終遞考に遞考委員の䞀人ずしお参加した。

《私は修行時代にこのコンクヌルに応募しお、最終遞考に残ったのですが、真っ先に萜ずされたした。その䜜品に぀いおも遞考委員の皆さんが意芋を蚀っおくださっお、「ここに䞊がっおくるだけでもすごいこずなんだ」ず蚀っおいただき、励たされ、力をいただきたしたので、今回の方々も同じように思っおもらえればいいなず思いたす》

「月刊ドラマ」5月号に掲茉された遞考委員座談䌚でのわたしの発蚀。今回は遞ぶ偎だったが、以前は遞ばれるかもしれない偎だった。

NHK地方局䞻催のラゞオドラマ脚本コンクヌルもあるなかで、創䜜ラゞオドラマ倧賞は総本山のようにそびえる存圚だった。振り向いおもらえお舞い䞊がり、結局振られた。束の間の倢を芋せおくれた、ほろ苊い思い出のある賞だ。

最終遞考に関わったのは2床目だが、前回から時間が経っおいるので、初めおのように新鮮に感じた。「わたしの䜜品も、こんな颚に読たれお、話し合われたんだな」ず前回も思ったかもしれないこずを思う。

最初に萜ずされたずいうこずは、もう少しこの䜜品に぀いお話そうよず匕き留めおくれる誰かがいなかったずいうこずだ。それだけこの䜜品にチカラがなかったずいうこずだ。

《圓時「ラストが匱い」ずいうこずで遞倖になったのですが、今回の最終遞考察象䜜品もラストが匱い䜜品から倖れおいった印象がありたした。䜕を残せるか、䜕を残したいかずいう思い、それを衚す技術が必芁だなず改めお感じたした》

最終遞考では脚本家ずNHKのディレクタヌが5人ず぀、あわせお10人の遞考委員が、勝ち䞊がっおきた10篇を読み、話し合いで「倧賞」ず「䜳䜜」を遞ぶ。

今回は、たず各遞考委員が掚したい䜜品を3篇ず぀投祚し、埗祚の少ない䜜品から議論し、残すかどうかを吟味した。話の流れで生き残る䜜品もあれば、あっさり「ここたで」ずなる䜜品もある。最初の埗祚が少ない䜜品が受賞を぀かむこずもある。

座談䌚で遞考委員10人それぞれ蚀っおいるこずは違うのだが、より倚く、より匷く、遞考委員を匕き぀けた䜜品が勝ち残る。䜕が䜜品の力になるのか、のヒントが発蚀に詰たっおいお、わたしも倧いに刺激をもらった。コンクヌルに応募する人は、曞く前にぜひ読んで欲しい。

キズがかえっお愛おしい

最終で真っ先に萜ずされた応募䜜品のタむトルは「制服のシンデレラ」。

手元に残っおいる原皿のファむル名は「制服のシンデレラ 20050816埮劙改蚂」ずなっおいる。埮劙に手盎ししお、どこかに出したのだろうか。遞考委員の顔ぶれが倉われば拟っおくれる人がいるかずいう期埅もあったかもしれない。

曞いたのは1999幎頃だず思う。初めお曞いたラゞオドラマ脚本がNHK札幌攟送局のコンクヌルで入遞し、FMシアタヌ枠で攟送されたのが1999幎。その受賞がきっかけで「タカラゞマ」ずいうFMシアタヌを曞かせおもらい、「雪だるたの詩」よりも前に攟送されたので、そちらがデビュヌ䜜ずなった。デビュヌしおからもしばらくはコンクヌル応募を続けおいたから、その頃に曞いお出したのだず思う。

今読み返すず、「ここが匱い」がハむラむトされたようにくっきりず芋える。

圓時の遞考䌚でも蚀われたように、ラストが匱い。コンクヌルでは特に぀かみずラストが倧事だが、読み終えお、「で」ずなるようなラストになっおいるのは臎呜的だ。

着地点を決めず、勢いで曞き出し、曞きながら続きを考えおいる。これは「プロットから箱曞きに進んで脚本にする」ずいう王道の道筋を知らなかったせいだが、党䜓的に行き圓たりばったりになっおいる。

攟火する女子高生ず、火灜珟堎を嬉々ずしお撮りに来るカメラ小僧が、ほんのりず心を通わせる話。登堎人物の行動にも必然性がないし、共感し蟛い。ラストの手前ですでに぀いお行けなくなった遞考委員もいただろうず思う。

遞ばれなかった理由はいく぀もある。けれど、そのキズの䞀぀䞀぀が魅力的にも映る。足りないずころがある分、はみ出しおいるずころがある。そのいび぀さが、未成幎の䞍安定さを衚しおいるようでもある。今より20歳あたり若く、その分、䞻人公に近かったわたしだから曞けたのだず思う。

スマホもなく、堎所や個人をあっずいう間に特定されおSNSで拡散されるこずもなかった時代でしか成立しない話でもある。いろんな意味で登堎人物だけでなく䜜品そのものが䞍噚甚で生き䞋手なのだが、そこも愛おしい。

前回最終遞考に参加したずきも「制服のシンデレラ」のこずを思い出したはずなのだが、公開しようず思わなかったのは、たぶんnoteもclubhouseも始めおいなかったから。今ならnoteを読んだ誰かがclubhouseで読んでくれるかもしれない。

2025.10.21远蚘。
遞考結果を知らせるハガキ消印は00.3.27を発掘。応募䜜品274のうち12篇が最終遞考に進んだらしい。二重投皿で入賞を取り消された䜜品があったずのこずなので13篇だったかもしれない。コンクヌルは、曞く宝くじ。同じ䜜品を別々のコンクヌルに応募しお入遞確率を䞊げたいずいう気持ちはわかる。

お知らせ

瀟団法人日本攟送䜜家協䌚䞻催、NHK・日本攟送出版協䌚埌揎、第二十八回創䜜ラゞオドラマ脚本懞賞公募攟送文化基金助成の遞考が終了したした。

入遞 岡村朗䜜「キゞムナヌのいた倏」
䜳䜜 叀川壬生䜜「断腞亭ずの日々」

今回の応募総数は二䞃四。五次にわたる審査を経お䜜品十二篇を残し、平成十二幎䞉月六日月にNHK六〇䞀スタゞオに斌いお、最終審査䌚を行ないたした。入賞䜜が決定した埌、䜳䜜二篇の内䞀篇が二重投皿・二重受賞の䜜品ず刀明したため、残念ながら圓協䌚の入賞を取り消したした。たた繰り䞊げ入賞䜜を審議したしたが、残念ながら無しず臎したした。詳现は「ドラマ」五月号

尚、最終審査遞考に残った䜜品は先の二篇の他、次の十篇でした。

朚村掋䜜「十勝石」・䞭前矎智子䜜「䞋町のレクむ゚ム」・桜朚銙䜜「君ずいる、今」・井䞊矎穂䜜「レグ」・原田明実䜜「シュガヌ・ビヌト」・今井雅子䜜「制服のシンデレラ」・䞉奜理恵子䜜「ラむフ・サヌクル」・怍田寛䜜「恋電話」・前原䞀磚䜜「バスドラむバヌの孀独」・梶田祐子䜜「僕」

今幎も公募臎したすので次回の挑戊に期埅したす。

平成十二幎䞉月
瀟団法人日本攟送䜜家協䌚
理事長代行 氎原明人

今井雅子䜜「制服のシンデレラ」

家の䞭。
テレビのニュヌスが流れおいる。
スナックをボリボリかじる音。
掗い物の音がで聞こえおいる。

お母さん「あかね。空いたお皿、持っおきお」 
あかね「けだるくちょっず埅っお」

アナりンサヌテレビ「続いお、火事のニュヌスです。今日午埌時10分頃、墚田区緑䞁目の朚造アパヌトの階玄関郚分より火が出お、建物ひず棟が党焌したした。アパヌトは幎前より居䜏者がおらず、この火事による死傷者はありたせん。火の気のない空き家から火が出たこずに぀いお、譊察では、墚田区内で盞次いでいる連続攟火事件ず同䞀犯人によるものずの可胜性も考えられるずしお、珟堎呚蟺で䞍審な人物を芋かけなかったかどうか、聞き蟌みを行っおいたす」

掗い物の音、止たる。
足音、近づいおきお、

お母さん「たた攟火 角曲がったずこの空き家、狙われないかしら あんな草ボヌボヌじゃ、買い手぀かないわよね。あかね、気を぀けなさいよ。あんた、がんやりしおるから。火事に巻き蟌たれお火傷したりしないでよ」

スナックかじる音が止み、

あかね「けだるくそんなドゞしないっお」  

再びスナックをかじる。

あかね「だっお、連続攟火事件の犯人は、あたしなんだもの」

タむトル『制服のシンデレラ』。

孊校女子校の教宀。
「おはよう」「宿題やった」などずおしゃべりしおいる女生埒たち。

女生埒「ねえねえ。マリ゚、タバコ吞ったこずないんだっお」
女生埒「いヌじゃん、別に」
女生埒「意倖。ずっくにやっおるず思っおた」
女生埒「だっお、肌に悪いっお蚀うしヌ」

あかね「連続攟火事件のきっかけは、偶然だった。その日、あたしは、生たれお初めお、タバコを買った。クラスメヌトたちの話題に入っおいけないあたしは、せめお、圌女たちず同じ冒険をしたかったのかもしれない。なんずなく立ち止たった目の前に、自動販売機があった」

回想。自動販売機にお金を入れ、たばこを買う。

あかね「人生で最初の本を吞う堎所に、あたしが遞んだのは、さびれた印刷所の跡地だった。背䌞びしたくおも、クラスの女の子たちみたいに倧胆になれない。先生の目が怖くお口玅さえ塗れないあたしには、駅のトむレで隠れお吞う勇気なんおなかった。  誰も来ない、誰の声も届かない、光も差さないような幜霊ビルに忍び蟌み、震える手でラむタヌの火を灯した」

回想。ラむタヌが点火する。
タバコに火を぀け、ひず口吞った途端、激しくむせる。

あかね回想「咳蟌みうわっ、なんなの 咳蟌み続ける」

回想。火が燃える気配。

あかね回想「あ、やだ」

あかね「あたしの手を離れたタバコが、誰かが捚おおいった垃団を燃やしおいた」

回想。火を消そうず垃団を叩く。

あかね回想「消えお 消えお お願い」

回想。炎が倧きくなっおいく。
煙りにむせる。

あかね回想「だめだ  」

回想。逃げ出す靎音。荒い息。

あかね「あたしは、タバコ本ちゃんず吞えないダメなダツだ」

回想。「火事だ」「誰か通報したのか」「番だ」などの怒号。
集たっおくる野次銬。
近づいおくる消防車のサむレン。

あかね「火が消えるたで、タバコを買った自動販売機の陰で芋おた。そのずきは、怖くお、怖くお、こんなこずになるならタバコなんかに手を出すんじゃなかったっお、死ぬほど埌悔した。あたしのタバコの火で火事になったっおバレたら、譊察に぀かたるんだろうか。新聞に目隠しした写真が茉るんだろうか。  その倜は、眠れなかった。でも、眠れなかった理由は、それだけじゃない」

回想。火事珟堎の興奮ず熱気。
燃え䞊がる火。鎮める氎。
野次銬の怒号。
枋滞した車のクラクション。

あかね「あたしは、興奮しおた。クラスでいちばん目立たないあたしが、新聞に茉るようなすごいこずをやっおしたったこずに。子どもの頃からお母さんに『いけたせん』ず口酞っぱく蚀われおきた火遊びを、こんなにも掟手にやっおしたったこずに。あたしの぀けた火が、消防車を走らせ、枋滞を匕き起こし、人だかりを぀くったこずに。  あたしの䞭で火事が続いおいるみたいに、䜓が熱くなっおいた」

授業䞭の教宀。
黒板をすべるチョヌクの音。

数孊教垫「はい、教科曞51ペヌゞ䟋題。サむコロを぀同時に振ったずき、奇数の目の出る確率は  」

あかね「数孊の時間。あたしは確率を蚈算する。攟火がバレお、぀かたる確率。぀かたらない確率。印刷所を燃やしおから週間の間に、぀ぶれたクリヌニング屋ずボロアパヌトを灰にした。火を぀けるたび、誰かに芋぀かる確率は高くなる。あたしが安党でいられる確率は䜎くなる。だけど、火遊びはスリルがなきゃ、぀たんない」

英語教垫「ヒヌ りィル カム スヌン。圌はすぐ来たす。これを付加疑問文にしおください。倧石さん」

あかね「英語の時間。が『火』に聞こえお、赀い炎のむメヌゞがあたしを誘惑する。圌氏は、いない。恋なんか、いらない。クラスの女の子たちが自慢しおるラブブな話なんお、今じゃ、ちっずもうらやたしくない。恋愛よりも熱くおドキドキするものを、あたしは知っおる」

英語教垫「倧石さん。倧石あかねさん」 
あかね「あ  はい」 
英語教垫「ヒヌ りィル カム スヌンを付加疑問文にするず、どうなりたすか」
あかね「ヒヌ  ヒヌ りィル カム スヌン  りォント ヒヌ」
英語教垫「はい、そうですね。ヒヌ りィル を吊定圢ヒヌりォントにしお、ひっくり返すず 」

あかね「勉匷は奜きじゃないのに、みんなの前でわかりたせんず開き盎る勇気がなくお、毎日ちゃんず予習埩習しおしたう。そんな自分がキラむ。あたしが連続攟火事件の犯人だず知ったら、孊校の先生たちは、きっず口をそろえおこう蚀う。『倧石さんはおずなしくお目立たない、いい子でした。攟火なんおするような生埒には芋えたせんでした』。先生ずもクラスメヌトずもほずんど口をきかない生埒が、いい子だなんお、どうしお蚀えるんだろう。䜕も蚀わない人間がどんなこずを考えおいるか、少しは譊戒したほうがいい。ヒヌ りィル カム スヌン。火はすぐにやっおくる。その火を灯すのは、あたし」

終業のチャむム。「起立、瀌」の号什。
䌑み時間のざわめき。

あかね「あず時間、あず時間ガマンしたら攟課埌になる」

女生埒たちのざわめきを擊り抜け、
アスファルトを駆ける靎音。

あかね「攟課埌、あたしの攟火タむムが始たる」

車道脇を駆ける靎音。車の急ブレヌキ。
「バカダロヌ」のどなり声。

あかね「今日の暙的は、孊校ず家の䞭間にある、腐りかけた倉庫。昔は建物の前たで鉄クズが積み䞊げおあったけど、あたしが小孊校の幎生のずき、䌚瀟が倒産しお、今では近所のゎミ捚お堎になっおる」

すれ違う人々の気配。靎音や声。
廃品回収車のアナりンスなど。

あかね「倉庫に近づくあたしを怪しむ人は、いない。攟課埌に街をうろ぀く制服姿の高校生は、あたりにも圓たり前だから」

あかね「誰かが持ち去ったのか、空掞になったドアから、あたしは薄暗がりに滑り蟌む」

ビンや猶が転がる床をザクザク歩く。
捚おられたギタヌが蹎られお音を立おる。
通りから人の声が小さく聞こえる。

あかね「倉庫の䞭身を匕き䞊げたばかりの頃は、お金のないカップルがしけこんだりしおた。ランドセルをしょったあたしは、腕を組んで䞭ぞ消える男女を芋かけるたび、芋おはいけないものを芋おしたった気がした。でも今、この倉庫で愛を語り合うカップルなんおいない。気をきかせた誰かが䜕幎も前に持ち蟌んだ垃団に寝転んだりしたら、䜓じゅうに割れたガラス瓶の棘が突き刺さる」

ラむタヌで火を぀ける。

あかね「カラカラに也いた雑誌ず垃団ず朚の床は、炎の倧奜物だ」

炎が燃え䞊がる。急いで立ち去る。

あかね「初めおのずきは、膝が震えおた。  今は、胞が震える」

「あれ、臭くない」「火が出おる」「火事だ」「電話、電話」「早く」ず人々の声、緊迫しおいく。
駆け寄る野次銬たちの慌ただしい靎音。
燃えさかる火。はぜる音。

あかね「あたしが぀けた火に、みんなが集たっおくる。干しかけの掗濯物や晩ご飯の支床をほったらかしにしお、お母さんたちが抌しかける。背広の背䞭を䞞め、自分の圱を芋぀めお歩いおいたセヌルスマンが目を茝かせおやっおくる。犬に匕っ匵られおよがよが歩いおいるおじいさんが、炎に吞い寄せられるように走り出す。サむレンを鳎らした消防車が回りの車を蹎散らしお駆け぀ける」

消防車のサむレン、近づいおくる。
犬が䞀斉に吠える。
野次銬の数が膚れ䞊がっおいく。

あかね「゚キストラがそろったら、あたしはさりげなくその䞭に玛れ蟌む。あたしがこのショヌの仕掛け人だっおこずは、誰も知らない」

野次銬たち、「たた攟火かな」「同じ犯人」「譊察は、この倉庫、マヌクしおなかったのか」などず噂。
攟氎するが、火の勢いは匱たらない。

あかね「独り蚀あれ アむツ、こないだも、いた」

シャッタヌを切る連続音、で。

野次銬「お兄さん、新聞瀟の人なの」
野次銬「そんなにバシャバシャ撮っお、どうすんの」
燐倪郎「すいたせん。ちょっず邪魔なんですけど」

あかね「独り蚀芚えおる。あのボサボサ頭ずニキビ面。フィルムを䜕本も取り替えお、写真撮りたくっおた。カメラ小僧っおや぀かなあ。  あ、目が合っちゃった」

燐倪郎「近づきあれ 君  」
あかね「あ  駆け出す」
燐倪郎「远っおねえ。こないだも、いたよね ちょっず、埅っおよ」

駆け出す靎音。远う靎音。

あかね「誰かに芋぀かったら、ゲヌムオヌバヌ。火遊びは、おしたい」

走る。走る。息が䞊がっおくる。
人、続いお立ち止たる。
ハアハアず荒い息。

あかね「ハアハア䜕で远いかけおくるのよ」
燐倪郎「ハアハア君が逃げるから。  息を敎え先週、空き家が燃えたずき、いたよね」
あかね「䜕のこず」
燐倪郎「ほら、連続攟火事件の  そうだよ、印刷所が燃えたずきも、クリヌニング屋が燃えたずきも、いた。その制服、芚えおいるんだ。昔、ボクのお気に入りだった子が行っおた高校だから」
あかね「だから」
燐倪郎「あ、いい顔。その、ちょっずすねた感じ、いいね」

バシャッずシャッタヌを切る。

あかね「撮らないでよ」

シャッタヌを続けお切りながら、

燐倪郎「今の衚情も、いいなあ。君の高校、可愛い子が倚いよね。それずも、制服が可愛いのかな」

ガシッずカメラをおさえ、

あかね「撮るなっおば」
燐倪郎「おっず、気を぀けおよ。いいカメラなんだから。消防車のサむレンが聞こえたら、こい぀を持っおバむクで远いかけるんだ。そのために消防眲のすぐ隣に匕っ越したんだからさ。そういや、君、い぀もボクより先に珟堎に着いおるよね。今日も、こないだも。どうやっお  」
あかね「遮りあたし、カメラ小僧に぀きあっおるほどヒマじゃないんだけど」燐倪郎「ヒマじゃないけど火マニア、なんじゃないの」
あかね「ヒマニア」
燐倪郎「火を芋るずゟクゟクするタむプ。ほらね、図星 なんたっお火はセクシヌだよね。ボク、高校生のずき、目の前でビル火灜を芋お、しびれちゃっおさ。初めおヌヌド写真芋たずき以䞊の衝撃だったな。この䞖にしがみ぀いおるものを有無を蚀わさず断ち切る朔いさぎよさ。瀟長宀も札束も容赊なく灰にしおしたう残酷さ。滅びの矎孊っおいうのかな。身終わったずき、憑き物が萜ちたみたいにすっきりした。それ以来、虜になっちゃっお  」
あかね「遮り女の子に盞手にされないから、火事の远っかけしおるわけ バッカみたい」
燐倪郎「君だっお、そうなんでしょ 火を芋おるずきの君の目  」
あかね「䞀緒にしないでよ あたしは、みんながあたしのいたずらで倧隒ぎするのがナカむなだけ」
燐倪郎「え 君が火を  ぀けたの」
あかね「あ蚀っちゃった」
燐倪郎「君が連続攟火事件の  」
あかね「だったら、どうなの」
燐倪郎「どうっお す、すごいよ 君みたいな可愛い子が  」
あかね「譊察に蚀う」
燐倪郎「蚀わないよ。絶察、蚀わない」
あかね「なんで」
燐倪郎「蚀ったら、火事が枛っおしたうじゃないか」
あかね「バカ立ち去る」
燐倪郎「今日は、ありがずヌ いい写真が撮れたよヌ」
あかね「䜕なの、アむツ」

あかね「芋たこずもないバカ。床ず芋たくない気色悪いダツ。だけど、カメラ小僧に蚀われた蚀葉が匕っかかっおた」

燐倪郎回想「火はセクシヌだよね  この䞖にしがみ぀いおるものを有無を蚀わさず断ち切る朔さ  滅びの矎孊っおいうのかな  憑き物が萜ちたみたいにすっきりした  君だっお、そうなんだろ」

あかね「あたしが火遊びをやめられない本圓の理由は、そこなのかもしれない。いくじなしのあたしは、炎の䞭で、りゞりゞした自分が燃える幻を芋おるのかもしれない。誰にも䜏んでもらえず、みっずもない姿で幎を取っおいく家。お金がなくお取り壊しおもらえないお店。窓ガラスを党郚割られおも、ゎミ捚お堎にされおも、ヘラヘラしお立っおいるビル。甚もないのに、この䞖にしがみ぀いおる建物たちにケゞメを぀けさせるために、あたしは火を぀けお回る。いらないものは、灰になっお消えればいい。  だけど、いちばん未緎ったらしいのは、このあたしなんだ。友だちもいない、勉匷も面癜くない、䜕のために孊校に行くのかわからない。だけど、仮病で䌑む勇気もないから、毎日決たった時間に家を出お、授業をきっちり受けおしたう。飛び䞋りる床胞も手銖を切る芚悟もないから生きおるだけのあたしは、抜け殻になった自分の身代わりに、空っぜの建物を燃やしおいるのかもしれない」

食事のテヌブル。黙々ず食べる。
テレビのニュヌスが流れおいる。

アナりンサヌテレビ「連続攟火事件を譊戒し、譊察では無人の建物呚蟺を亀替でパトロヌルするなど  」

お母さん「犯人、ただ぀かたっおないのよね。この近所もパトロヌルしおくれないかしら。角曲がったずこの空き家が心配で、買い物ものんびり行けないわ。ねえ、あなた。聞いおる」
お父さん「生返事そうだな」
お母さん「あかねも、孊校から真っ盎ぐ垰っおくるのよ。攟火魔っお、远い詰められるず䜕するかわからないから」
あかね「けだるくテレビの声、倧きくしお」

テレビの音、倧きくなる。

アナりンサヌテレビ「これたでの぀の攟火を結び぀ける決定的な蚌拠はなく、同䞀犯人によるものかどうかも断定できない状況です。たた、今のずころ犯人を特定する有力な情報も埗られおいたせん」

テレビの音、。

お母さん「譊察は䜕やっおるのかしら。目撃者くらい、いるでしょう。ほっずいたら、墚田区が焌け野原になっちゃうわ。ねえ、あなた」
お父さん「生返事ああ」

あかね「あたしが犯人だよず蚀ったら、お父さんずお母さんは、どんな顔をするだろう。お父さんは、ひず蚀くらいたずもなこずを蚀うだろうか。お母さんは、黙り蟌むだろうか」

孊校のチャむム。
䞋校する女生埒たちのざわめき。
「ねえねえ、うちでお茶しおいかない」
「行く行く」「いいねヌ」
などず明るい声が通り過ぎおいく。

あかね「譊察が諊めおくれないから、あたしは長い長い攟課埌を持お䜙した」

消防車のサむレン、近づいおくる。
女生埒たち、「火事だ」「たた攟火」「犯人぀かたらないよねヌ」「でも、ボロい建物ばっかりなんでしょ」などず噂。
サむレン、すぐ近くを過ぎる。
ずがずが歩いおいた靎音、駆け足になる。

あかね「あたしの䜓が、火を呌んでた」

火事珟堎の興奮ず熱気。燃える火。
鎮める氎。野次銬のざわめき。
「䞋がっおください。危ないですよ」ずがなるマむク。
野次銬たちの声、ずぎれずぎれに、

野次銬「80才のおじいちゃんず78才のおばあちゃんが  」
野次銬「おばあちゃんのほうが寝たきりだったでしょう おじいちゃんが運び出そうずしたらしいんだけど、間に合わなかったみたいで  」
野次銬「嚘さん倫婊が䞀緒に䜏もうっお蚀っおくれおたらしいけどねえ  」

靎音が近づき、

燐倪郎「今日は遅かったじゃないか、シンデレラ」
あかね「びくっな、䜕よ」
燐倪郎「シンデレラの意味は灰かぶり姫。君にぎったりだよね」
あかね「声が倧きいよ」
燐倪郎「これも君がやったの」
あかね「声が倧きいっお」
燐倪郎「君じゃないのはわかっおる。この建物は、地球にしがみ぀いおいる理由があった。必芁ずされおいたんだ」
あかね「  」
燐倪郎「火の䞍始末なんだろね。幎寄りの人暮らしだっおいうから」
あかね「いい写真撮れた」
燐倪郎「ダメだね。こういう湿っぜい火事は。カメラ向ける気になれない」
あかね「ふヌん。意倖ずマトモなんだ」
燐倪郎「君が仕掛けるや぀は、思い切りがよくお、いいよ。この䞖での最埌のひず仕事っお感じで掟手に燃えお、フォトゞェニックな火になる」
あかね「シヌッ。声が倧きいっお」
燐倪郎「声を萜ずし次、い぀やるの」
あかね「声を萜ずしそんなのわかんないよ。  そうだ」

あかね「燃やしたいものがあったのを思い出した。火を぀けお、ケゞメを぀けたいもの」

土手を䞋りながら、

あかね「わざず明るく歌うはるの うららの 隅田川。あ、足元、気を぀けおね。滑りやすいから」
燐倪郎「ねえ、河原で䜕やるの」
あかね「いいから、぀いおきお」

河原。氎の音。
鞄の䞭身をバサバサッず空ける。

燐倪郎「教科曞、どうすんの」
あかね「いい写真、撮らせおあげるよ」
燐倪郎「燃やす気」
あかね「もう、いらないんだ」

ラむタヌの火を぀ける。

燐倪郎「なんで数孊の教科曞から燃やすの」
あかね「いちばんムカ぀くから。䞖の䞭割り切れないものだらけなのに、割り切った答え出さなきゃいけない。いちばんいらない科目だず思う。数字で䌚話するこずなんか、ないんだもん。  独り蚀颚き぀いなあ。すぐ消えちゃう」火が぀く。勢いはない。

あかね「がヌっず立っおないで、カメラ構えないの 教科曞燃やすずこなんお、なかなか撮れないよ」

火が少し倧きくなる。

あかね「アングル決めるのにぐずぐずしおるず、党郚灰になっちゃうよ」

火がさらに倧きくなる。

あかね「ねえ、早く撮っおよ 数孊、英語、囜語、地理、化孊  こい぀らがあるず、あたし、予習埩習しちゃうから。重たいのに、党郚持っお家ず孊校を埀埩しちゃうから。コむツらがあたしの前から消えるずこ、ちゃんず撮っおよ泣きそうに」
燐倪郎「叫び声」

火に駆け寄り、螏み぀ける。

あかね「ちょっず、䜕すんの せっかく぀けたのに、消さないでよ」

火を螏み぀け、勢いを匱めおいく。

燐倪郎「こんなの、いい写真にならないよ りゞりゞしおお、党然ふっきれおないじゃないか 君は教科曞が燃えるずこじゃなくお、ここに存圚した蚌を撮っお欲しいだけなんだ そんな぀たらない蚘念写真なんか、ボクのカメラに撮らせないでよ 自分の気持ち確かめるために火を぀けないでよ 䞀人じゃ螏ん切り぀かないからっお、ボクを巻き蟌たないでよ」

あかね「孊校をやめる勇気も続ける気力もない䞭途半端なあたしの教科曞は、䞭途半端に焊げお、残った。  自分にケゞメを぀けるのっお難しい」

川に石を投げ入れながら、

あかね「やんなっちゃう。なんでカメラ小僧に説教されなきゃいけないんだろ」音燐倪郎「ボクのほうが倧人だから」
あかね「あんたみたいな倧人にだけは、なりたくない」
燐倪郎「高校生の頃、早く倧人になりたかった。でも、ボクがなりたかったのは、こんな倧人じゃなかった」
あかね「どんなのに、なりたかったの」
燐倪郎「酒ずタバコずバむクが䌌合う男」
あかね「錻で笑う」
燐倪郎「酒は飲めないし、タバコはサマになんないし、免蚱は萜ちた」
あかね「仕事は」
燐倪郎「幎だけ䌚瀟員やっお、か月前にやめた。䌚瀟っおヘンなずころだよ。ダル気なくおも、絊料もらえるんだ。がヌっず座っおいるだけでも、日時間で䞇千円。時間あたり千円」
あかね「ラクショヌ」
燐倪郎「でも、自分の時間を時間千円で切り売りしおるっお思ったら、急にむダになった。20代の時間は、幎取っおからの時間より高いんじゃないかっお気がしお」
あかね「だったら、あたしも孊校やめおいいんじゃない 10代の時間は  」燐倪郎「遮り孊校やめお䜕するの」
あかね「そんなの、ただわかんない」
燐倪郎「䜿い道のない時間は、䟡倀ないよ。他にやるこずないなら、孊校行きなよ。やりたいこず芋぀けるのも高校生の仕事だよ」
あかね「時間目から時間目たで机の前に座っおたっお、賢くなった気がしないんだもん」
燐倪郎「孊校に行けば、友だちに䌚えるじゃない」
あかね「あたし、クラスで浮いおるんだ。誰ずも話合わないし。家でも浮いおるけど。人間嫌いなの」

自転車のブレヌキ音、で。

お母さん「あれ あかねじゃないの」
燐倪郎「誰か呌んでるよ。土手の䞊」
あかね「ほっずきゃ、いいんだよ」
燐倪郎「お母さん」
あかね「そっち芋ないで」
お母さん「あかね あら、違うのかな」

自転車、去る。

燐倪郎「『人間嫌い』じゃなくお、『人間怖い』なんじゃないの」
あかね「怖くなんか  」
燐倪郎「人ずうたく距離を取れないんだ。ほんずは仲よくしたいのに、うたくいかなくお傷぀くのが怖くお、自分から距離を眮いおしたう」
あかね「人のこず、わかったみたいに蚀わないでよ」
燐倪郎「ボクは、そうだった。今も、そうかもしれない。  高校生の頃、あのビル火灜を芋るたでは、気に入った女の子の隠し撮りやっおたんだ。君の高校の子ずか。望遠レンズで、少し離れたずこから撮るんだけど。あくびしたり、くしゃみしたり、髪をかき䞊げたり。自分しか知らない䞀瞬の圌女をずらえるのが面癜くおさ。  シャッタヌを切る瞬間、ドキドキするんだ。今の音、聞かれなかったかなっお。䞀方的な远っかけだし、ストヌカヌみたいなもんだから、気づかれたら、やめおくださいっお蚀われるに決たっおる。颚でスカヌトがふわり、みたいなダバい写真もあったし。  でも、芋぀かりたせんようにっお祈る䞀方で、心のどこかで、圌女に芋぀けお欲しいっお願っおたりするんだ」
あかね「カメラ小僧の昔話なんか、聞きたくない  」
燐倪郎「遮り君が火を぀けるずきの気持ちに、䌌おない」

ポケットをごそごそ探り、

燐倪郎「この写真、芚えおる 倉庫の火事珟堎で芋かけた君を远いかけお、远い぀いたずきに撮ったや぀」

燐倪郎回想「その制服、芚えおいるんだ。昔、ボクのお気に入りだった子が行っおた高校だから」
あかね回想「だから」
燐倪郎回想「あ、いい顔」

回想。バシャッずシャッタヌを切る。

燐倪郎「芋知らぬ怪しい兄ちゃんに远い詰められお、さあこれからどうなるっおずころ。攟火のこずがバレたら、譊察に突き出されるかもしれない。匷請られお䜓を芁求されるかもしれない。なのに、この君の顔には悲壮感がないんだな。台詞を぀けるずしたら、『ちぇっ』っお舌打ちしおる感じなんだよね。隠れんがで芋぀かったずか、鬌ごっこで぀かたったずか、そういう軜いノリ」

あかね「䜕が蚀いたいの」
燐倪郎「君にずっお攟火は、隠れんがや鬌ごっこず同じ。誰かに芋぀けお぀かたえおもらうための火遊びなんじゃないの たずえば、さっき通りがかったお母さんずか」

あかね「なんであたしは、コむツの話を聞いおるんだろ。生理的に絶察受け぀けない、近寄るのもむダなタむプ。ボサボサの髪ずニキビだらけの癜い顔。癜目がちのいやらしい目぀き。ずきどき裏返る高い声。ねちねちした喋りかた。興奮するず早口になるのも気持ち悪い。なのに、コむツは、家族より、孊校の先生より、クラスメヌトより、あたしに近い。あたしたちが䞖の䞭から浮いおる距離が近いのかもしれない」

カラスが鳎く。
子どもたちが遊ぶ声、遠くに聞こえる。

燐倪郎「今、䜕才」
あかね「15」
燐倪郎「15かあ。若いなあ。ただ焊るこずはないね」
あかね「焊る」

燐倪郎「君、焊っおるでしょ。自分にむラむラしおる。15のずき、ボクもそうだった。日24時間䜿っおも党然成長しおない自分がむダだった。友だちの数も増えない。成瞟も䌞びない。家ず孊校の間を埀埩するだけで、䞖界は半埄癟メヌトルから氞遠に広がらない。毎日が同じ色、同じトヌンの繰り返し。だけど、それを倉える勇気もない自分が歯がゆくお、なのにその苛立ちをどこにぶ぀けおいいかもわからなくお」
あかね「聞いおいる」
燐倪郎「でも、今から思えばさ、15才なんお、ただただ未完成品なんだ。ご぀ご぀、でこがこ、ぎざぎざしおお圓たり前。君のその、ちょっずトゲトゲしたずこも若さなんだず思う。これからいろんな人やいろんな出来ごずにぶ぀かっお、カドが取れたり、ならされたりしお、少しず぀いい感じの倧人になっおいくんだよ」
あかね「それで」
燐倪郎「こんな話知っおる 䞖界的に有名な圫刻家がすべり台の制䜜を頌たれたんだっお。ずころが、出来䞊がった倧理石のすべり台は衚面が粗削りで、お䞖蟞にも完成品ずは蚀えないものだった」
あかね「ふヌん。手ぇ抜いたんだ」
燐倪郎「そうじゃなくお。圫刻家はこう蚀ったんだ。『このすべり台で遊ぶ子どもたちのおしりが石を磚き、䜜品を完成させる』っお」
あかね「だから」
燐倪郎「君が孊校で出䌚う友達ずか先生ずか知識っおのは、君っおいう人間を磚くおしりみたいなもので  た、䞀人で匷がっおおも、倧人になれないっおこずを蚀いたかったわけ」
あかね「話たどろっこしいけど、ほんずに䌚瀟員しおた」
燐倪郎「うん。電話で教育関係の本を売っおた」
あかね「党然向いおない」
燐倪郎「蚀われなくたっお  あ 燃えおる」
あかね「え、䜕」

バシャバシャッずシャッタヌを切る。

あかね「カメラを向けた空が、真っ赀に燃えおいた」

燐倪郎「ちょっず、そこ立っおお。倕日を背䞭に受ける感じで」

バシャバシャッずシャッタヌを切る。

燐倪郎「火事のずきも空が赀く染たるけど、比べものにならないね。こっちの赀のほうがゎヌゞャスでフォトゞェニックだよ」

シャッタヌを切り続ける。 

あかね「ねえ、もういい」
燐倪郎「そのたた、そのたた。いいねえ。君、名前、なんだっけ」
あかね「やだよ、教えない」
燐倪郎「調べちゃうよ。君の孊校の名簿で」
あかね「きったねヌ」
燐倪郎「぀いでに䜏所も電話番号も調べお、いたずら電話かけるから」
あかね「マゞでやめお」
燐倪郎「じゃあ教えなさい」
あかね「そっちから蚀ったら」
燐倪郎「田䞭燐倪郎」
あかね「リンタロり」
燐倪郎「リンはさ、火偏に隣っおいう字の右偎くっ぀けた字。名前の䞭に火が入っおる。いい名前でしょ。君は」
あかね「倧石あかね」
燐倪郎「『あかね色の空』のあかねちゃん 燐倪郎ずあかね。ボクたち、赀い色぀ながりだね。  あ、フィルム終わっちゃった」
あかね「あたしの写真、倉なこずに䜿わないでよ」
燐倪郎「倉なこず」
あかね「売ったりずか、ヌヌド写真ず合成したりずか」
燐倪郎「吹き出し珟像したら、フィルム回収しおいいよ。次の火事で䌚おう」

ドアを開け、慌ただしく家に䞊がり蟌みながら、

お母さん「ただいたあ。すっかり遅くなっちゃった。このずころ、連続攟火事件が䞀段萜しおるから、ゆっくり買い物しちゃっお。  あら、あかね、いたの い぀垰っおきた」
あかね「い぀っお」
お母さん「さっき、あかねに䌌た人を芋かけたの。隅田川の河原に座っおたんだけど。髪の長い男の人ず䞀緒だった」
あかね「それ、あたしじゃないよ」
お母さん「やっぱり だったら、いいんだけど。制服同じだし、暪顔がよく䌌おたから。隣にいた人、䞍朔な感じだったし、あかねだったら泚意しようず思ったの。この頃、たた目が悪くなったみたい」
あかね「メガネかけたほうがいいんじゃないの」
お母さん「老県鏡 やだあず蚀い぀぀去る」

あかね「ああ、あれ、あたしだよ。暪にいた䞍朔そうなロン毛が圌氏  っお蚀ったら、どうなるんだろう。プヌ倪郎でカメラ小僧で火事の写真ばっかり撮っおお、どうしようもないダツだけど、誰ず぀き合おうず、あたしの勝手でしょ。ちなみに、圌ずは、あたしが火を぀けた火事の珟堎で知り合ったの  そう蚀ったずきのお母さんの反応を芋おみたい。お母さんがお父さんに䜕お報告するか、知りたい。  だけど、あたしには、そんな勇気もない」

孊校。授業䞭の教宀。
黒板をすべるチョヌクの音。

数孊教垫「教科曞63ペヌゞ、䟋題。10本のうち圓たりが本入っおいるくじを本同時に匕いたずき、圓たりが出る確率は  」

燐倪郎回想「君が孊校で出䌚う友達ずか先生ずか知識っおのは、君っおいう人間を磚くおしりみたいなもので  」

あかね「あたしは、おしりたちに䌚いに、焊げた教科曞を持っお孊校に行く」

チャむムが鳎る。

数孊教垫「はい、今日はこれたで。64ペヌゞの緎習問題は宿題にしたす」

「起立、瀌」の号什。
䌑み時間。教宀が隒がしくなる。

女生埒「ねえねえ、倧石さんの教科曞、なんで焊げおんの」
女生埒「あたしも気になっおた」
あかね「がヌっず歩いおたら、攟火事件に巻き蟌たれおさ」
女生埒「吹き出し倧石さんっお、倩然」
女生埒「ずっ぀きにくい人かず思っおたけど  」
あかね「あ  あかねでいいよ」
女生埒「䞭のペヌゞは倧䞈倫なの」
あかね「端っこがちょっず焊げおるけど」
女生埒「ほんずだ。必芁なペヌゞがあったら、あたしの教科曞コピヌする」
あかね「あ、助かる」あかね「あ、助かる」

あかね「自分でもびっくりするくらい、蚀葉がすらすら出おきた。毎日顔を合わせるのに、机はほんの50センチしか離れおないのに、䜕を話せばいいのかわからなかったクラスメヌトたち。あたしず圌女たちの間には、芋えないけれど決定的な隔たりがあるず思っおた。その壁を、焊げた教科曞がひらりず飛び越えお、あたしず孊校ずの距離をちょっずだけ瞮めた。  そしお、䞖の䞭ずあたしの距離をもっず瞮める事件が起きた」

バタバタず駆けるスリッパ。
乱暎にドアを開け、

お母さん「あかね あかね 起きお」
あかね「寝がけお日曜日ぐらい、ゆっくり寝かせおよ」

新聞をバサッず広げ、

あかね「目の前で新聞バサバサ広げないでよ」
お母さん「芋お これ、あかねじゃないの ほら、この写真」
あかね「もう、うっずうしいなあ」

ゎ゜ゎ゜ず起き䞊がり、

お母さん「新聞瀟の写真コンクヌルで入遞しおる。垭賞金50䞇円だっお」
あかね「  あ 貞しお」

新聞を奪う。

お母さん「砎らないでよ。額に入れお食るんだから」

あかね「真っ赀に燃える倕日の前に、あたしがいた。写真のタむトルは、『あかね』。『赀々ず燃える倕日ず冷めた少女の衚情ずの察比が面癜い。埮劙で傷぀きやすい幎頃の少女。その小さな背䞭をあかね色の空が力匷く抌しおいるようにも芋える』ず審査員のコメントが添えられおいた」

お母さん「田䞭燐倪郎っお誰 プロのカメラマン 䜕才くらいの人 知り合いなの」
あかね「知らない人」

あかね「燐倪郎を芋かけなくなっおから、ひず月以䞊が経っおいた。その間、あたしは消防車のサむレンを聞かなかった。消防眲の隣に䜏んでる燐倪郎は、どうだか知らないけど」

孊校の登校颚景。
女生埒たち、口々に「おはよう」。
駆け寄っおくる靎音。

女生埒・「あかね、おはよヌ」
あかね「あ、おはよ」
女生埒「ちょっず 芋たよ、新聞」
女生埒「あたしも びっくりしたヌ」
女生埒「家族に自慢しちゃった。あたしの友だちなんだよっお」
女生埒「ほら、みんなちらちら芋おる。でかでかず茉っおたからね」
燐倪郎「おい、シンデレラ」
あかね「え」
燐倪郎「近づき぀぀ひさしぶり」
女生埒「あかねの圌氏」
あかね「あ  先、行っおお」
女生埒「銖からカメラぶら䞋げおるよ」
女生埒「カメラマン」
女生埒「じゃあ、圌が撮ったんじゃないの」
燐倪郎「迷惑だった」
あかね「圓たり前でしょ。なんで孊校たで来るのよ」
燐倪郎「次の火事たで埅おなくおさ。  明日、出発なんだ」
あかね「どこに」
燐倪郎「䞖界䞭の倕焌けを撮りに行こうず思っお」
あかね「火事じゃなくお」 
燐倪郎「火マニアから倕日マニアに路線倉曎したんだ。写真撮っおお涙出おきたのは、あれが初めおだったから」
あかね「そうだ、おめでず。新聞芋たよ」
燐倪郎「モデルがよかったからね。賞金、山分けしよう。これで新しい教科曞買いなよ」
あかね「いらない」
燐倪郎「なんで」
あかね「もらう理由ないもん」
燐倪郎「だけど、教科曞  」
あかね「端が焊げおるけど、䞭は倧䞈倫だから。あれ芋おるずね、説教臭いカメラ小僧の偉そうな台詞をいろいろ思い出すんだ。たいがいムカ぀くんだけど、たたにいいこず蚀っおたから  お金は、いいよ。あたしの分も倕焌け撮っおきおよ」
燐倪郎「じゃあ、撮った写真、送るよ。䜏所教えお」
あかね「いいよ  これっきりにしよう」
燐倪郎「そっか。じゃあ、これ。こないだの君の写真のポゞ。あず、新聞瀟が匕き䌞ばしおパネルにしおくれたんだけど、これもあげるよ」あかね「こんなでかいの、恥ずかしいよ。蚘念に持っおなよ」
燐倪郎「荷物になるから」
あかね「い぀垰っおくんの」
燐倪郎「気になる」
あかね「瀟亀蟞什」
燐倪郎「䜕にも決めおない。適圓な町に䜏み぀いお、飜きたら次の町に移っお、倕焌けを撮りたくっおくる。そうだな、おしりで完成するすべり台ず倕焌けの写真が撮れたら、垰っおこようかな」
あかね「どこにあるか知っおんの」
燐倪郎「地球のどこか。行った先々で聞いお回ったら、誰か知っおるよ」
あかね「おしりで完成するすべり台お蚀ったっお  」
燐倪郎「簡単に芋぀からないから、面癜いんだっお。䞖界を股にかけた宝探しゲヌムなんだから。旅先で知り合ったダツらず、すべり台の話を肎に飲むのも悪くない」
あかね「お酒、飲めないんじゃなかった」
燐倪郎「少しくらいなら、いけるよ。蚀葉は通じなくおも、杯の酒で距離がぐっず瞮たるこずもあるし」
燐倪郎「幎の差を感じるな。あたし、お酒飲たないもん」
燐倪郎「ボクが垰っおくる頃には、飲める幎になっおたりしお。しっかり人間を磚いずきなよ。いい女になっおたら、このカメラで撮っおあげるから」
あかね「これっきりにしようっお蚀ったじゃない」
燐倪郎「  そうだったね。じゃ、最埌に枚」

バシャッずシャッタヌを切る。
バむク、発車する。
孊校の黒板をすべるチョヌク。

英語教垫「ヒヌ ハズ レフト ゞャパン フォヌ ア ロング タむム。圌は長い間、日本を去ったたたです」

あかね「燐倪郎は行っおしたった。これっきりにしようず蚀っおおきながら、あたしはアむツのこずが匕っかかっおる。あたしの秘密を持ったたた、消えおしたったバカ。ひずりきりで抱えるバクダンは、重い」

地理教垫「メルカトル図法の䞖界地図の特長は  」

あかね「地理の時間。あたしは地図垳を開いお、カメラをぶら䞋げた燐倪郎が地球のどこにいるか想像しおみる。テキサスのだだっぎろいゞャガむモ畑。コヌトダゞュヌルの海岞。干し草のにおいがするモンゎルの高原。そしお、どこかの囜で、子どもたちの人気者になっおるすべり台」

想像。倖囜のいろんな町。
䟋えば山。鳥の鳎き声。
䟋えば海。寄せおは返す波。
すべり台で遊ぶ子どもたちの歓声。
シャッタヌを切る音。

あかね「䜕の悩みも隠しごずもなくお、フォトゞェニックな倕日を远っかけ回しおるバカ。  あたしは、赀いものを芋るたび、胞の奥にしたい蟌んだ秘密がうずいお、チクチクするずいうのに」

燐倪郎想像「いいね、いいね、最高の倕日だねえ」

想像の音、。
家の䞭。テレビ、流れおいる。。
スナックをポリポリかじる。

お母さん「あかね。手玙が来おるわよ。タむランド  タむからだっお。田䞭燐倪郎  田䞭燐倪郎っお、あの写真の」

スナックをかじる音、止み、

あかね「貞しお」

あかね「䜏所を教えなかったのに、燐倪郎から゚アメヌルが届いた。あたしの孊校の名簿䜿っお調べたんだろうか。し぀こいダツだ」

慌ただしく封を開け、䟿箋を取り出す。

燐倪郎の声「シンデレラぞ 元気に孊校行っおたすか こっちは毎日、日替わり匁圓みたいにいろんなこずが起きおたす。倕焌けの衚情も日によっお党然違う。赀道が近いから、倪陜がずんでもなく倧きくお、火の玉みたいです。君はいやがるだろうけど、倕日を芋るず、あかねずいう名前を思い出しおしたうのは、しょうがないよね。タむでも火事はあるけど、写真を撮りたいずは思いたせん。そのかわり、焌け跡の埩旧䜜業が面癜い。灰をかきたわしお売れそうな物を探し圓おる人の傍らで、もう新しい家を建お始めおいたり。その゚ネルギヌには思わずカメラを向けおしたいたす。写真を䜕枚か同封したす。僕が写っおるや぀は、仲よくなった宿屋の兄ちゃんが撮っおくれたした」

想像。タむの颚景。
舗装されおいない道を走る車。
物売りの声。子どもたちの笑い声。

あかね「カメラ小僧が日焌けしお、ニキビが目立たなくなっおた。写真の䞭の燐倪郎は、たわりを囲んだタむの人たちず同じように癜い歯を芋せお、ニカッず笑っおた。芚えたばかりのタむのお酒を飲みながら、芚えたばかりのカタコトですべり台の話をしおる姿が目に浮かんだ。タむの倕日は日本のずは比べものにならないくらい赀くお倧きくお、それがアむツの䜙裕みたいで、あたしは、燐倪郎に嫉劬した」

お母さん「なんでシンデレラなの」
あかね「暪から読たないでよ」
お母さん「なんだかロマンチックね。倕日を芋るず、あかねずいう名前を思い出しおしたう  だっお。この人、あかねのこず  」
あかね「そんなんじゃないっお」

手玙を畳む。

お母さん「隠すこずないでしょ。芋せおくれおも、枛るものじゃないのに」

あかね「あたしは突然、秘密を打ち明けたくなった。燐倪郎以倖の誰かに。ひずりで支えるのが重くなっおよろけそうになったずきに、目の前に、受け止めおくれそうな人がいた」

あかね「お母さん」
お母さん「どうしたの あらたたっちゃっお」
あかね「䞀緒に来お欲しいずこ、あるんだけど」
お母さん「どこどこ」
あかね「お父さんも」
お母さん「あなた。ねえ、あかねが䞀緒に来おっお」
お父さん「あん」
あかね「  お願い」
お父さん「ああ」
お母さん「今すぐ出かける」
あかね「うん。早いほうが、いいかな」
お母さん「あなた、䞊だけでも着替えたら ねえ」

あかね「家族人そろっお出かけるのは、䜕か月ぶりだろう。お母さんはりキりキず買ったばかりのヒヌルを匕っかけ、お父さんは面倒くさそうに革靎を履き、あたしは癜いスニヌカヌの靎玐をギュッず結んだ」

ドアが開き、倖ぞ出る。

お母さん「たあ、きれいな倕焌け。家の䞭にいたら、気づかなかったわね。ねえ、あなた」
お父さん「ああ」
お母さん「ああじゃなくお。䜕か蚀っおよ」
お父さん「いいあかね色だ」

あかね「近所の掟出所に続く道の向こうに、日が沈もうずしおいた。燐倪郎がタむの倕日を差し入れしたんじゃないかず思うくらい、赀くお倧きな倪陜だった。あかね色に燃えた空が、あたしの背䞭を力匷く抌しおくれた。15才の未完成人間のちっぜけな勇気が、途䞭でくじけおしたわないように」

連茉小説「挂うわたし」にだぶらせお

「noteを読んだ誰かがclubhouseで読んでくれるかも」ず曞いたが、原皿をnoteに公開する前に「制服のシンデレラ」を別な䜜品に登堎させおいる。

saitaずいうサむトで連茉䞭の小説「挂うわたし」。3人のヒロむンの物語を2話ず぀リレヌ圢匏で぀ないでいるが、3人目のヒロむン、倚賀麻垌が最埌に぀きあっおいた恋人のツカサ君が脚本家志望の青幎で、圌がコンクヌルで最終遞考に残ったものの真っ先に萜ずされた脚本のタむトルが「制服のシンデレラ」ずいう蚭定。

教科曞を燃やす女子高生は䞊京する前の麻垌の実話が元になっおいお、珟圚の恋人のモリゟりは挔劇仲間から枡されたツカサ君の脚本を読んでいた  ず埋蔵しおいた「制服のシンデレラ」の脚本から話を広げおいる。

「制服のシンデレラ」が登堎する倚賀麻垌回の22回から26回をこちらに。

clubhouse朗読をreplayで

2023.5.6 こたろんさん

2023.5.12 鈎朚順子さん

2023.5.15 おもにゃんさん

2023.5.19 鈎朚順子さん×こたろんさん

2024.1.12 おもにゃん


いいなず思ったら応揎しよう

脚本家・今井雅子📚蚀葉遊びが奜きな物曞き 目に留めおいただき、ありがずうございたす。わたしが物曞きでいられるのは、面癜がっおくださる方々のおかげです。