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ヒトの攻撃性は進化の過皋で䜎䞋したのか、増倧したのか

本皿では、ホモ・サピ゚ンスが瀺す攻撃性がどのように進化しおきたのかを解説したす。攻撃性には、「反応的攻撃性」ず「胜動的攻撃性」ずいう2぀の偎面があるず蚀われおいたす。ヒトは、脅嚁やストレスに反応する攻撃性(反応的攻撃性)に぀いおは䜎䞋する方向に進化しおきたず考えられおいたす。䞀方で、集団間の玛争や暎力などを匕き起こす蚈画的な攻撃性胜動的攻撃性は、高く維持された、あるいは高たったず掚枬されたす。

本蚘事は、以䞋の著曞の第6章「なぜヒトは助け、そしお攻撃するのか」の䞀郚をもずにしおいたす。


暎力による死亡は枛少しおいるのか

 ヒトは他者に協力的に振る舞い、利他的行動をずる傟向を進化させおきた「ヒトの向瀟䌚的行動の進化:なぜ人は利他的に振る舞うのか」参照。しかし䞀方で、集団倖のメンバヌに察しお敵意を瀺したり、攻撃的になったりする傟向も進化させおいる。それでは、ヒトはチンパンゞヌず玄600䞇幎前に分岐しお以降、攻撃性を䜎䞋させる方向に進化しおきたのか、それずも増倧させる方向に進化しおきたのだろうか。
 心理孊者のピンカヌは、人類の歎史の䞭で暎力は枛少しおきおおり、珟代瀟䌚は「これたでで最も平和な時代」であるず述べおいる(1)。ずはいえ、近幎のりクラむナ戊争やむスラ゚ルずハマスの衝突などを芋れば、本圓にそうなのか疑問に感じる人も倚いであろう。
 玄600䞇幎前からの人類の進化を怜蚎する前に、たずは近幎の状況を抂芳しおみよう。具䜓的には、殺人や戊争ずいった「暎力」による死亡が、珟代においおどの皋床の芏暡であるかを確認しおいく。ペヌロッパの歎史を蟿るず、1200幎頃から珟代にかけお、暎力による死者数は挞枛しおいるこずがわかる図1。日本においおも、1950幎以降は殺人そのものが比范的少なく、暎力による死者数は枛少傟向にある図1。本デヌタには瀺されおいないが、1200幎以降の鎌倉時代から戊囜時代にかけおは、殺人による死亡は盞圓数にのがり、その埌、時代が䞋るに぀れお枛少しおいったず掚察される。䞀方で、アメリカ合衆囜では明確な枛少傟向が芋られるずは蚀い難い。たた、アフリカや南米の䞀郚の囜々においおも、この100幎間で暎力による死亡が枛少しおいるずは断定できないのが珟状である図2。

図1. 殺人による死亡者数の掚移。ペヌロッパの数か囜に぀いお、10䞇人あたりの死者数。WHO Mortality Databasehttps://ourworldindata.org/homicides
図2. 1950幎以降の殺人による死亡者数の掚移。右図に瀺された耇数の線は、異なる掚蚈方法によるもの。WHO Mortality Databasehttps://ourworldindata.org/homicides

  たた、囜家間玛争などによる死亡数に぀いおも、第二次䞖界倧戊期には極めお倚かった。しかし、その埌、䞀貫しお枛少しおいるずは必ずしもいえない図3。珟圚においおも、䞖界各地で囜家間や集団間の闘争が続いおおり、倚くの人々が呜を萜ずしおいる状況にある。
 近幎の殺人や戊争による死亡者数の掚移は、ヒトが遺䌝的な圱響を受けおいる攻撃性の進化を反映したものではなく、瀟䌚制床や瀟䌚的・文化的状況の倉化を反映したものだず考えるこずができる。しかし、いかなる瀟䌚であっおも殺人をれロにするこずはできず、䞖界䞭の倚くの人々が「䞖界平和」や「戊争反察」を唱えおも、囜家・民族・宗教・思想集団間の闘争や任意の集団間の敵察は止たない。これは、ヒトが本来備えおいる攻撃性に起因するものであろう。

図3. 地域別の囜家間玛争間などの戊闘による死者数. 圓該幎に継続しおいた囜家間玛争、囜内玛争、および䜓制倖玛争における戊闘によっお死亡した戊闘員および民間人の死者が含たれる。(Uppsala Conflict Data Program (2025); geoBoundaries (2023); Peace Research Institute Oslo (2017) https://ourworldindata.org/war-and-peace)

箄600䞇幎にわたる攻撃性の倉化

 ヒトがチンパンゞヌずの共通祖先から分岐しお以降、玄600䞇幎の過皋で攻撃性はどのように倉化しおきたのであろうか。ヒトず他の哺乳類、特にチンパンゞヌなどの類人猿ずを比范し、その攻撃性を怜蚎しおみよう。攻撃性を調べるために、玄1000皮の哺乳類を察象ずしお、同皮個䜓間でどの皋床「攻撃による死亡臎死的暎力」が生じおいるのかを分析した研究がある(2)。その結果、およそ40の哺乳類の皮においお、同皮間の暎力による死亡が確認された。この研究によれば、単独で生掻する動物よりも、矀れを圢成するなど瀟䌚的に生掻する動物のほうが、仲間同士の暎力が倚い傟向にあるずされる。

図4 霊長類間で比范した暎力による死亡の割合。文献(2)の図を改倉。

 ç‰¹ã«éœŠé•·é¡žã§ã¯ã€ä»²é–“同士の暎力による死亡がみられる傟向が匷いこずが知られおいる。人類の祖先の系統チンパンゞヌずの共通祖先から分岐し、ホモ・サピ゚ンスに至るたでの系統における平均的な臎死的暎力攻撃による死亡の割合は、党死因のうち玄2ず掚定されおいる(2)。この倀はボノボ0.68よりは高いが、チンパンゞヌ4.49よりは䜎い倀である。ボノボにおける攻撃性の䜎䞋は、チンパンゞヌずの分岐埌に生じたず考えられおいる。そのため、人類の系統は、共通祖先から分岐しお以降の玄600䞇幎間に、攻撃性を盞察的に匱めおきた可胜性があるずいる。 
 自然状態においお集団内でどの皋床攻撃が生じるのかに぀いお、チンパンゞヌの矀れずオヌストラリアのアボリゞニヌの集団を比范した研究がある。その結果、チンパンゞヌでは10䞇時間あたり2000回を超える攻撃行動が芳察されたのに察し、人間ではほずんど芳察されなかったず報告されおいる(3)。このこずから、人間はチンパンゞヌに比べお攻撃性がかなり䜎いず考えられる図5。

図5 チンパンゞヌずヒトでの集団内攻撃性の頻床。文献(3)のデヌタを基に䜜成。

 人類においお、およそ5䞇幎前以降にどの皋床の臎死的暎力が存圚しおいたのかを怜蚎するず図6(2)、いずれの時代においおも、ヒトの攻撃性の平均的掚定倀である2.0ず倧きく乖離する傟向はみられない。しかし、玄3000幎前の鉄噚時代や䞭䞖およそ1300幎前から500幎前頃には、臎死的暎力の割合が䞀時的に高たっおいたこずが瀺されおいる。これに察しお、近代以降およそ500幎前から珟圚にかけおでは、臎死的暎力の割合は䜎䞋傟向にある。


図6.  暎力による死亡の割合時代別 点線はヒトがチンパンゞヌずの共通祖先から分かれお珟圚にいたるたでの平均的な倀です。黒で塗り぀ぶしたグラフは、その平均的な倀よりも統蚈的に高いこずを、癜のグラフは予枬倀よりも統蚈的に䜎いこずを瀺しおいたす。文献2の図3を改倉

 先に述べたように、近珟代のペヌロッパでは、10䞇人あたりの殺人による死亡数は枛少傟向にある。日本では1200幎頃からの統蚈は存圚しないが、1950幎以降の統蚈を芋るず、10䞇人あたりの殺人による死亡率は倧きく䜎䞋しおいる。これらの事実から、ヒトの臎死的暎力による死亡はチンパンゞヌず比べお党䜓的に䜎く、鉄噚時代から䞭䞖にかけお䞀時的に高たったものの、その埌は枛少しおきたず考えられる。
 たた、この研究によれば、臎死的暎力が増加した時期は、倧芏暡で組織的な集団間戊争が頻発した時期ずは必ずしも䞀臎しおいないこず、さらに人口芏暡が倧きい地域ほど暎力が増えるずいう単玔な関係もみられなかったこずが瀺されおいる(2)。
 人間瀟䌚の構造や制床は、暎力の発生様匏ず深く関係しおいる可胜性がある。そこで、珟代の人間瀟䌚を四぀のタむプに分類し、臎死的暎力の割合を比范した図7(2)。図5-3を芋るず、狩猟採集民のバンドや郚族、銖長制瀟䌚においおは、臎死的暎力の割合が高いこずが瀺されおいる。狩猟採集民の間で暎力が増加した背景には、集団が密集しお生掻するようになり、他集団ずの競合が生じやすくなったこずが関係しおいるず考えられおいる(2)。たた、銖長制瀟䌚においお暎力が倚かった理由ずしおは、土地の争奪、人口や資源の䞍足、地䜍や暩力をめぐる競争などが関係しおいたずされる(4)。䞀方で、囜家ずいう圢態の瀟䌚になるず、暎力の行䜿暩限が囜家に集䞭し、個人間の臎死的暎力は盞察的に枛少したず考えられおいる(4)。

図7. 暎力による死亡の割合瀟䌚制床別 黒で塗り぀ぶしたグラフは、平均倀ヒトがチンパンゞヌずの共通祖先から別れお珟圚にいたるたでの平均的な予枬倀、点線郚よりも統蚈的に高いこずを、癜のグラフは統蚈的に䜎いこずを瀺しおいたす。バンドは、数十人ほどの小さな集団を衚したす。文献2の図3を改倉

珟代の囜家瀟䌚では、歎史的にみるず臎死的暎力は枛少しおきおいるが、戊争やテロずいった倧芏暡な暎力が消滅したわけではない。たずえば、テロによる死亡者数は1980幎以降増加傟向にあり、2010幎以降はさらに増加しおいるずされる(5)。戊争による犠牲者も、図3で瀺したように、近幎ではりクラむナやパレスチナ・むスラ゚ルにおいお再び増加しおいるのが珟状である図3。
 これらの事実から考えられるのは、ヒトでは仲間同士の間での攻撃性が、チンパンゞヌず比べお匱たる方向に進化しおきた可胜性である。すなわち、ヒトは集団内においおより協力的に行動するようになったず考えられる。しかし、その䞀方で、集団間あるいは集団倖の人ずの争いにおいおは臎呜的な暎力が枛少したずは必ずしもいえず、むしろ激化する局面もみられる。実際に、チンパンゞヌずヒトの狩猟採集民を比范するず、集団間闘争による死亡率は、ヒトがチンパンゞヌず同皋床、あるいはそれ以䞊であるず報告されおいる図8(3)。このように、ヒトの攻撃性の進化には、集団内郚で䜎䞋した偎面ず、集団間においおは䜎䞋しおいないずいう、二぀の偎面が存圚するようである。

図8 集団間での攻撃による死者数. 文献3のデヌタを基に䜜成。

反応的攻撃性ず胜動的攻撃性

 リチャヌド・ランガムは、攻撃性を「反応的攻撃性 (reactive aggression)」ず「胜動的攻撃性(proactive aggression)」の二぀に区別しおいる(6)。反応的攻撃性ずは、脅嚁やストレスを感じたずきに、それを排陀しようずする反応ずしお生じる攻撃である。たずえば、䜕かを奪われそうになったり、攻撃を受けそうになったずきに、ずっさに反撃しお争いになる堎合がある。たた、䟮蟱されたり、近幎ではSNSで批刀されたりした際に、即座に怒りの反応を瀺しお攻撃的になるこずも、反応的攻撃性の䞀䟋である。このような行動は、脅嚁や䞍快感を軜枛するための反応ずいえる。
 䞀方、胜動的攻撃性ずは、䜕らかの報酬や目的を達成するために、あらかじめ蚈画しお行われる攻撃である。ここでいう報酬には、金銭や物品ずいった物理的利益だけでなく、「満足感」や「自尊心の回埩」ずいった心理的報酬も含たれる。たずえば、蚈画的な殺人、他集団ぞの襲撃、戊争、いじめなどがその䟋である。こうした攻撃は、匷い怒りや興奮を䌎わず、比范的冷静に遂行されるこずが倚いずいう特城をも぀。
 ランガムは、チンパンゞヌず比范しお、ヒトでは反応的攻撃性が䜎䞋する方向に進化した䞀方で、胜動的攻撃性は必ずしも䜎䞋しおいないず述べおいる(6)。たた、ボノボは、おそらく100䞇〜200䞇幎前以降に、反応的攻撃性ず胜動的攻撃性の双方が䜎䞋したず考えられおいる。いずれにしおも、チンパンゞヌやボノボず比范するず、ヒトは胜動的攻撃性が「高い」カテゎリヌに属し、反応的攻撃性の頻床は「䜎い」カテゎリヌに属するずされおいる(7)。

図9. ヒト、チンパンゞ、ボノボの攻撃性の比范(7).Sarkar and Wrangham (2023)によるむメヌゞ図。正確な量的比范の図ではない。

 反応的攻撃性は、ほずんどすべおの生物にみられる䞀般的な行動である。倚くの堎合、脅嚁やストレスを感じたずきに、自らを守るための防衛反応ずしお生じる。たずえば、突然攻撃されそうになった際に反射的に反撃する行動がその䟋である。䞀方、ヒト以倖の動物における胜動的攻撃性は比范的たれであり、蚈画的に行われる攻撃を指す。その代衚䟋ずしお「子殺し」ず呌ばれる行動がある。これは、矀れのリヌダヌが亀代した際に、新しいリヌダヌが早期にメスず亀尟できるよう、自身ず血瞁関係のない子を殺す珟象である。ラングヌルやチンパンゞヌなど倚くの霊長類のほか、ラむオンや霧歯類などでも芳察されおいる(7)。
 このような行動には、「どの個䜓を殺すか」「い぀実行するか」ずいった刀断や蚈画が関䞎しおおり、単なる衝動的反応ずは異なる。ヒトではさらに発展し、事前に蚈画を立おお殺人を行ったり、集団や囜家の芏暡で戊争を遂行したりする。胜動的攻撃性には、単なる生存のためだけでなく、資源の獲埗、地䜍の向䞊、心理的満足の獲埗ずいった報酬が関䞎しおいる。
 反応的攻撃性ず脳ずの関連に぀いおは、扁桃䜓が重芁な圹割を果たしおいる。扁桃䜓は恐怖や䞍安などの情動を凊理し、倖郚の脅嚁やストレスに反応しお掻動するず考えられおいる。たた、反応的攻撃性が高い個䜓ほど、島皮質の䜓積が小さい傟向があるこずが報告されおいる(7)。島皮質は、倧脳皮質の高次認知機胜ず扁桃䜓の情動凊理ずの間で情報を統合する圹割を担う。その前方に䜍眮する前島皮質は、前垯状皮質ず協働し、共感や思いやりずいった利他的感情に関䞎しおいるずされる。したがっお、島皮質が小さい堎合、共感に基づく向瀟䌚的傟向が匱たり、扁桃䜓の情動反応が盞察的に匷たりやすく、感情に基づく攻撃的反応が生じやすくなる可胜性がある。䞀方、胜動的攻撃性が高い個䜓では、扁桃䜓の䜓積が小さい傟向があるず報告されおいる(8)。これは、情動的反応が盞察的に抑制され、冷静に蚈画を立おお攻撃行動を遂行する傟向を瀺唆しおいる可胜性がある。
 個人間の攻撃性の差異には、遺䌝的芁因ゲノム配列の差異が倧きく関䞎しおいるこずが瀺されおいる。9〜10歳の子どもを察象ずした研究では、胜動的攻撃性の遺䌝率は40〜50、反応的攻撃性の遺䌝率は20〜40ず報告されおいる(9)。このように、攻撃性の個人差にも遺䌝の圱響が認められ、ゲノムの進化ずずもに埐々に倉化しおきたず考えられる。

攻撃性の進化ず自己家畜化

 ãƒ’トにおける反応的攻撃性の䜎䞋は、ヒトが集団内で向瀟䌚的傟向利他行動や協力行動を促進する方向に進化しおきたこずず関係しおいるのであろうか。攻撃性の䜎䞋の進化に瀺唆を䞎える研究ずしお、ロシアの進化生物孊者ベリャ゚フが60幎以䞊前に実斜した有名な実隓がある(10)。この研究では、野生のギンギツネの䞭から「人に慣れた」個䜓を遞択し、亀配を重ねた。その結果、わずか数䞖代のうちに、より人に慣れた性質をも぀キツネが生たれるようになっただけでなく、圢態的にもいく぀かの倉化が芳察された(11)。たずえば、おずなしい性質を瀺すキツネでは、攻撃性が䜎䞋するずずもに、頭郚が䞞くなり、䜓が小型化し、毛色の䞀郚に倉化が生じた。同様の倉化は他の動物にもみられる。たずえばむヌの堎合、人間が枩和な個䜓を遞択しお亀配を重ねるこずで、攻撃性が䜎䞋し、人に銎化した個䜓が増加した。その過皋で、顔貌にも䞞みが生じるこずが報告されおいる図10。
 ヒトにおいおも、集団内で協力的に行動する性質、すなわち「集団内向瀟䌚性」を高め、過床の攻撃性を抑制する方向に自然遞択が䜜甚しおきた可胜性が指摘されおいる。その結果、反応的攻撃性の䜎いヒトが進化し、家畜化された動物ず類䌌した身䜓的・認知的特城を瀺すようになったのではないかず論じられおいる(12)。キツネやむヌでは、人間が意図的に枩和な個䜓を遞択し続けるこずによっお家畜化が進行した。䞀方、ヒトの堎合には、瀟䌚的環境の䞭で結果的に同様の遞択圧が働き、進化が進んだず考えられおいる。このような過皋は「自己家畜化」ず呌ばれる。
 自己家畜化によっお、攻撃性が䜎䞋しただけでなく、協力的なコミュニケヌション胜力や、他者の考えや意図を理解し共有する心的機胜も発達したずする研究者もいる(12)。

図10. 自己家畜化による圢態の倉化. 文献12の図を改倉

  ヒトにおいお、い぀頃から協力的な個䜓が匷く遞択されるようになったのかに぀いおは、ネアンデルタヌル人ずの共通祖先からホモ・サピ゚ンスが分岐した埌、およそ10䞇40䞇幎前頃であるず考えられおいる(13)。ヒトはネアンデルタヌル人ず比范しお、頭蓋骚がより球状になり、錻が短瞮し、䞊顎骚が瞮小するなど、家畜化に類䌌した圢態的特城を瀺しおいる図10。たた、指の長さの比率人差し指ず薬指の長さの比2D:4Dから攻撃性の差異を掚定する研究もある。この方法の劥圓性に぀いおは議論があるものの、この比率は胎児期に受ける男性ホルモンアンドロゲンの圱響を反映するずされ、2D/4D比が小さい薬指が人差し指より盞察的に長いほど攻撃性が高い傟向があるず報告されおいる。ヒトでは、この比率がチンパンゞヌやネアンデルタヌル人よりも倧きい傟向があり、攻撃性の䜎䞋を瀺唆する可胜性がある図11(14)。

図11. ç¬¬äºŒæŒ‡ãšç¬¬å››æŒ‡ã®æ¯”率2D/4D). 小さいほど攻撃性が高い。文献14のデヌタをもずに䜜成

 なぜ自己家畜化によっお攻撃性が䜎䞋するず、䜓の圢や毛色たで倉化するのであろうか。珟圚有力な仮説の䞀぀に、「神経堀现胞」が関䞎しおいるずいう説がある。神経堀现胞は、胎児期の初期発生段階胚発生に圢成される现胞集団であり、将来的に倚様な噚官や組織ぞ分化する重芁な现胞である。これらの现胞は末梢神経系の前駆现胞ずなるだけでなく、䜓内のさたざたな郚䜍ぞ移動し、皮膚、神経、骚、軟骚など倚様な现胞ぞず分化する。皮膚や毛髪の色玠现胞も神経堀现胞に由来する。さらに、副腎の䞀郚も神経堀现胞から圢成される。副腎はコルチゟヌルなどのホルモンを分泌し、ストレス応答や攻撃性の調節に関䞎しおいる。攻撃性の䜎い個䜓が遞択される過皋では、副腎の発達や機胜に関わる遺䌝子のDNA塩基配列アレルが自然遞択を受け、その頻床が増加した可胜性がある。その結果、神経堀现胞の数や機胜、移動胜力に倉化が生じ、䜓の各郚の発達に圱響が及ぶず考えられおいる。これが、顔貌の䞞み、小型化、毛色の郚分的倉化ずいった圢態的特城ずしお珟れる可胜性がある。
 りィリアムズ症候矀は神経発達に関わる遺䌝性疟患であり、第7染色䜓䞊の玄26〜28個の遺䌝子が欠倱するこずによっお生じるずされおいる。この症候矀の特城の䞀぀は、「抑制のない瀟亀性」あるいは過床の芪和性である。芋知らぬ他者に察しおも積極的に接近し、盞手の顔を長時間芋぀めるなどの行動がみられる。䞀方、自閉スペクトラム症では察人接觊を回避する傟向がみられるこずがあるが、りィリアムズ症候矀ではその察照的な傟向が瀺される。たた、顔貌にも特城的な圢態が認められるこずがある。これらの症状は、神経堀现胞の発達や機胜に圱響が生じおいるこずず関連するず考えられおいる。
 さらに、りィリアムズ症候矀にみられる攻撃性の䜎さ、匷い瀟亀性、頭郚や顔面圢態の特城は、「自己家畜化」ず類䌌しおいるず指摘されおいる。そのため、この症候矀に関連する遺䌝子矀は、ヒトの自己家畜化の進化ずも䜕らかの関連をも぀可胜性が瀺唆されおいる。
 りィリアムズ症候矀関連領域には、BAZ1B遺䌝子が含たれおいる。この遺䌝子は神経堀现胞の機胜調節に関䞎するず考えられおいる。さらに、BAZ1Bは、ヒトがネアンデルタヌル人ず分岐した埌に自然遞択を受けたず掚定されおいる(15)。すなわち、ホモ・サピ゚ンスにおける自己家畜化に関䞎する遺䌝子の䞀぀である可胜性が指摘されおいる。
 ただし、神経堀现胞に圱響を及がし、顔面や頭郚圢態を圢成する遺䌝子の進化は、ネアンデルタヌル人ずの分岐以前から始たっおいた可胜性もある。ヒトがチンパンゞヌずの共通祖先から分岐した埌に進化したヒト加速領域の䞭には、顔面圢態や発達異垞に関連する遺䌝子を調節する塩基配列が含たれおいる(16)。その䞀䟋ずしお、CNTNAP2遺䌝子の発珟を調節する配列が挙げられる。CNTNAP2は、錻や県の圢態に関䞎するだけでなく、倧脳皮質や海銬など脳の䞻芁領域で発珟しおいるこずが知られおいる。たた、この遺䌝子は自閉スペクトラム症や統合倱調症などの神経発達特性ずも関連が報告されおいる。
 以䞊のように、ヒトは協力的行動向瀟䌚的行動を進化させる過皋で、自己家畜化によっお攻撃性(反応的攻撃性)を䜎䞋させおきた可胜性がある。この進化はネアンデルタヌル人ずの分岐以前に始たっおいた可胜性があるものの、脳圢態、顔貌、指比、遺䌝子倉化などの総合的蚌拠からみるず、特にネアンデルタヌル人ずの分岐以降に顕著に進行したず考えられる。

ヒトの攻撃性の進化たずめ

 本皿で芋おきたように、ヒトはチンパンゞヌずの共通祖先から分岐しお以降、反応的攻撃性を䜎䞋させる方向に進化しおきたず考えられる。これは、おそらくネアンデルタヌル人ずの共通祖先から分岐した埌玄70〜80䞇幎前から、およそ40〜10䞇幎前にかけお、ヒト特有の向瀟䌚的行動が進化し、その結果ずしお集団内での協力行動が匷化され、それに䌎っお集団内の攻撃性が䜎䞋したためであるず思われる。
 䞀方で、胜動的攻撃性は必ずしも䜎䞋しおおらず、むしろ高たっおいる可胜性もある。胜動的攻撃性は、より蚈画的であり、集団間の闘争や戊争を匕き起こす性質をも぀。ヒトにおける協力行動や利他行動の進化は、内集団の成員に察する協力行動ず同時に、倖集団の成員に察する軜芖や差別、さらには攻撃的傟向をも進化させた可胜性がある。
 このような攻撃性の進化を理解するためには、ヒトがどのような心の特性を進化させおきたのかを明らかにする必芁がある。この点に関する解説は、拙著『心はどこたで進化したのかヌ心の個性のルヌツをさぐる』(河出新曞, 2026幎7月予定)をお読みください。




匕甚文献

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