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あのう、ナプキンの替えください。

 マドモアゼルには割と優しく接していると思う。

 10代なんて、どんなにきちんと着飾っていてもオムツが取れたばかりのように見えてしまう。ちゃんと一人で切符が買えるだなんて!電車に乗って病院に来れるだなんて!とものすごくハードルが下がる。
 なので、大抵の理不尽、大抵のわけわからんちんは許してやっている。そこらへんでおしっこ漏らしてたって許容範囲。許す。

 駄菓子菓子案山子。
 今日は流石に「うっ」と来ちゃったことを書く。

 皆、勘違いしているようだが、ナプキンは裏山に自然になっていて、ちょっと取ってくれば済むというシロモノではない。診察や処置の際、どうしても思わぬ出血が生じることがあるので、そんな非日常の緊急事態に備え、病院が「備品として」購入してくれているものだ。
 若い頃ジュラ紀に勤めていた病院では、備品扱いにもしてくれず、流血しているマダムに看護師さんが黙ってチリ紙をあてがっていた。それも枚数が2枚と決められていて、それ以上お渡しすることは禁じられていた。節約のしすぎである。

 現職では、パンツを脱いで置いておくカゴの下に引き出し付きの建具を置き、ナプキンを「善意で」準備している。内診だけでも勇気のいることだ。股の間にティッシュを置かれてなるものか。たまにがん検診だけでも流血する、鋭敏な頸部をもつマダムだっている。パンツに血が付着すると、それだけでクレームにもなりかねないので、なんとか納めてもらおうという下心でもある。

 しかし、そのナプキンはいつだって、「診察後」のマダムだけが使っていいもので、できればご自分で持参しておくべき嗜みでもある。絶対に道で配るポケットティッシュではない。あれだって、ちゃんと宣伝の紙が挟んであり、無意味な配布ではないはずだ。

 月経不順でピルを開始したマドモアゼルが来た。
 色々副作用はあったようで、細かい事象をさらに事細かに報告してきたが、まあ大体些末事。大きな有害事象はないと判断し、ピルの継続の方針となった。ここまで3分程度。世に悪名高き、3分診療だ。悪いか。
 さっさとピルをもらって帰って欲しかったのだが、もじもじといつまでも席を立たない。どうしたのかとまたそちらにぐるりと椅子を回して真正面から彼女を見る。・・・はい、タイトル回収である。

 「あのう、ナプキンの替えください」
 「へ?」
  心の底から「へ」が出た。ちなみに、彼女はピル処方のみで本日は終わる。診察はない。
 「ナプキンの替えがもうなくなっちゃって。ナプキンください。一袋」
 「・・・・へ?」もう一度上手に「へ」が出た。
 「こないだは1枚もらえました」

 いや、先日は診察したからね。あれは、痛くしてごめんねナプキンである。

 「院内にセブンイレブンがございますよ・・・?」
 「え、買うんですか。もらえないの?」
 「診察した時出血したりすれば一時的なものとして差し上げてますけど、いつも無料でお配りはしておりません」

 これは単純にマドモアゼルの勘違いなのだろうか。
 それとも私のジョーシキが一般人と乖離するあまり、間違っているのだろうか。

 あまりにも堂々と「ナプキンの替えください」と言い募るので、一瞬、自分が間違っているのかと自信がなくなったが、私調べでは、婦人科でフリーナプキンを置いているところの方が少ないはずだ。きょうび、公衆トイレだってナプキンの自動販売機があるではないか。もちろん有料だ。

 「ご自分で買ってくださいね。セ⚫︎ンイレブンに置いてあります」

 マドモアゼルは口をへの字に曲げて、不服そうに診察室を出ていった。さまざまなクレームが寄せられる昨今、これももしかしたら院長へのタレコミになるやもしれないが、診察もしていないのにナプキンを差し出すのはやっぱり違うと思うのだ。悪いが他を当たってくれ・・・となんだかカッコつけてるが、単純にナプキンを渡す渡さないの話である。

 ケチくさいな、1枚くらいやれよと思いましたか?
 私も、ちょっとだけ思いました。








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