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文鳥みたいになった父の話㉝ニューヨークで運転免許を取る②

※前回のお話は👉「こちらから読めます」


※当時の写真が残っていなかったため、AIで試験当日のイメージを再現しています。


教官は黒人のおばちゃんだった。

終わったかも……。

そう思ったが、やるしかない。

実地試験は満点でなくても受かる。 多少取りこぼしても、大丈夫なはずだ。

雨はさらに強くなってきた。

まずは大通りに出て、しばらく直進する。

やがて教官が口を開いた。

"At the next light, turn right."

問題は、運転だけではない。

運転に集中しながら、英語のリスニングにも全力で取り組まなくてはいけない。


「ターン、ライト……ライ?」

「light」と「right」が、ごちゃ混ぜに聞こえた。

思わず聞き返すと、教官はひと言、

“Right!”

「右!」と言ったのか。
「そう、合ってる!」と言ったのか。

どちらなのかは分からない。

でも、どちらにせよ右である。


そう思い、私はハンドルを右へ切った。

しばらく住宅街を進む。

次の指示は、

"Make a three-point turn."

これは分かる。
切り返しだ。

落ち着いてハンドルを切り、方向転換する。

クリア!

続いて、

"Parallel park."

縦列駐車だ。

ピッタリとはいかなかったが、まあまあできた。

多少減点されても大丈夫。

緊張していたので、このあと車庫入れまであったのかどうかは、もう覚えていない。

気がつけば試験は終わり、夫と子どもが待つ場所へ戻っていた。

大きな減点はないはずだ。

受かったんじゃない?

そんな期待が少しずつ膨らんできた。

しばらくして、結果が知らされた。

どこで、どのように減点されたのかも、採点表に書かれて渡される。

結果は、合格。


予想どおり、減点はあったものの軽いものだった。

無事、実地試験をパスした。

最初は「終わったかも……」と思った黒人のおばちゃん教官。

でも、決して厳しい人ではなかった。

私は子どもを抱き上げた。

「おりこうさんで待っててくれてありがとう。ママ、合格したよ。」

夫は会社に戻ると、同僚たちに、

"She passed the driving test."

と報告した。

駐在員の奥さんたちは、毎日子どもの送迎で運転していても、一度で合格できないことも多いそうだ。

もしかしたら、日本人が多く受験する教官よりも、今回の現地の教官のほうが、私には合っていたのかもしれない。

意外と、現地で受験して良かった。

ニューヨークには、日本とは違う交通ルールも多かった。

「NO TURN ON RED」の標識がなければ、安全確認   をしたうえで赤信号でも右折できる。

4-Way Stopでは、先に停止した車から順番に進む。

スクールバスが子どもの乗り降りのために停車すると、対向車も停止しなければならない。

複数人が乗っている車だけが走れるHOVレーンもあった。

また、飲酒運転は一律に禁止ではなく、法律で定められた血中アルコール濃度の基準以内であれば運転が認められている。

雪の多いニューヨークだったが、私が生活していた中では、チェーンを付けて走る車を見かけることはほとんどなかった。

最初は戸惑うことばかりだったが、慣れてくると合理的なルールも多いと感じた。

念願のニューヨーク州のドライバーズライセンスを手に入れた。

うれしかった。

そして、異国で一つの試験を乗り越えたことが、私の小さな自信になった。




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