記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

不思議な店内でめくるめく展開、ロンドンの少人数イマーシブシアター「The Shop for Mortals and All Fools」

1年ほど前から観たかった「ショップ・フォー・モータルズ・アンド・オール・フールズ」、最終日に行ってきた際のざっくり【ネタバレ】体験談です。

店主に招かれて中へ入る客は10人以下。まずは店内をゆっくりご覧くださいと言う。少し外すけれどすぐ戻りますとのこと。

お店を見回っていると店主が戻ってくる。店の中にはさまざまな商品があるが、不思議な力を秘めるボックスもいくつか陳列されており、あとで1つだけ選ぶことになるそう。またあるカードを渡されて他の者には見せるな、確認だけしてそのまま持っていてくれと言われる。

店主はカジュアルに話しながらぐるぐると観客と観客の間を歩き回り、そのうち会話の流れから「Maybe over there…」といった感じで奥の部屋へ誘導される。いつのまにか先程までかけられていたチェーンがはずされ、奥への道を進めるようになっている。すだれのようなカーテンをかき分けてもう一つの部屋へ。廊下を通って奥へ行くとさらにすだれカーテンが。

中へ入るとその部屋は先ほどまでいたお店と同じくらいの大きさで、床は剥き出しの土。枯葉や小石も普通に混じった庭のような趣。それ以外は普通に店が続いているような、おうちの中のような不思議な空間。霧が立ち込めて暗い。

部屋中を動き回りながら店主の語りが始まる。最初は一緒に会話するように、途中からは一人語りの世界。昔を思い出すように人生を振り返る。真ん中に置かれたテーブルを囲む椅子に座らされたのは、私を含む5人。

大きな缶から取り出したお茶っ葉をテーブルに直に盛り、両手いっぱいに持つよう目で指示されてそのままテーブルじゅうにみんなで広げる。1人立ち上がり、立っていた他の人にも茶葉を分け与えてバッと宙にまく。儀式に参加させられているかのようだ。

とめどなく溢れる言葉とともに踊るように部屋のすみずみまで動く店主。お酒を飲みだんだん盛り上がると胸をはだけ出し、ブラウスを脱いでしまう。ここらへんからの加速度がすごい。お店に来たこととか今何をしてるのかを忘れてしまうような豹変。スカートもたくしあげておみ足があらわに。

口からこぼれる物語は衝撃の展開を迎える。紅潮した頬、汗のにじむ背中。その目は私たちの目を直接覗き込んでいるようでいて、何も映していないのかもしれない。

なんだかんだと展開を迎えた後には最初に入ったお店へ戻る。ここでようやく始めにもらったカードと、特別な品物であるボックスの出番。ボックスは7つのうちのひとつを選ぶということだったが、まずははじめに配られたカードの中にMortalsでもFoolsでもないものを持っている者が一人だけいるはずと店主が告げる。他のみんなはMortalsかFoolsどちらかのカード。名乗り出たその人の持つカードには「Vessel(器)」と記してある。

彼が媒体となり、そこにいる仲間たちの中から1人ずつ選んでいく。選ばれた者が開けるボックスを指定。その中の1つにだけ古のコインが入っている。私たちのグループではなかなか当たらず、ついに4人目。「このゲーム苦手みたいね」などと苦笑がこぼれるなか、ようやくコインが見つかる。「ここからは運しだいです」と店主が宣言し、Heads or Tails? 表か裏かを聞かれてVessel役が表と答える。店主がコイントスをした、結果は表。

選ばれたVesselだけが奥の部屋へ導かれ、残りの我々はここで別れを告げられる。元のおだやかな店主に戻ったように見えたが、いったいその奥では何が行われているのか…?

結局なぜこのお店が存在するのか、関係性や必然性がわかるようなわからないようなだったけど、最後に選ばれて奥の部屋へ行けたらあきらかになるんだろうか。夢のような悪夢のような、謎の残るざらりとした感じは悪くない。



行けてよかった。演者1人に観客10人程度の少人数制イマーシブシアターで、80分間1:1のような、個室で濃厚なインタラクションを受けてると錯覚させるような贅沢体験だった。大規模もいいけどこういうのすごく好き。

ストーリーが好きかはまだ消化できてないが、そういえばこの作品の原作はバッカイ。濃厚さと巧みな流れがとても好みで、体験できる人数は少ないけれど満足度が果てしなく高かった。

ストーリー詳細を読みたい方は、写真入りで全体像がわかりやすいこちら↓


最終日だったおかげか、クリエイターのViniciusとお話しできた。PunchdrunkのThe Burnt Cityなどにもダンサーとして出ていた方。いわく会場のCOLABタワー自体が、マンションへの建て替えでなくなってしまうそう。同じ場所では無理になったけど、確実に別の場所での再演をねらっている話ぶりでした。現時点ではンチェスターが最有力候補っぽい。

両手一杯につかんだ茶葉の感触を忘れないうちに、またいつかどこかで他の店主でも見られますように。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集