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魔法の杖の折れた夜に

1994年、大連の街にいた。魚介の買い付けを名目に、一ヶ月という時間をこの港町に預けていた。今にして思えば、あれは歴史の狭間に現れた束の間の白昼夢だったのかもしれない。当時の為替レートは一万円が九百元に迫ろうかという勢いだった。一万円札一枚が、現地では魔法の杖のように振る舞い、あらゆる贅を眼前に引き寄せた。連夜の「花天酒地」。

食卓を埋め尽くす極上の魚介と絶え間なく注がれる酒。富める日本の恩恵を全身に浴び、文字通り狂乱の時を過ごした。若さゆえの傲慢さと、強い通貨への無邪気な信頼が、夜をいっそう輝かせていた。

しかし、ふと今の財布に目を落とせば、深い溜息が漏れる。かつてあれほど誇らしげだった「円」の威光は、今や見る影もない。数字の上でも、そして実質的な購買力においても、通貨は音を立てて痩せ細ってしまった。まさに、今非昔比(こんひせきひ)。

日本円対人民元の為替レートの推移表

強かった日本を象徴するあの潮風の香りが、弱りゆく円の現実に直面するたび、ひどく切なく、そして残酷なまでに愛おしく蘇る。

かつての栄華は砂のように指の間をこぼれ落ち、手元に残ったのは、時代の変遷という名のやるせない虚脱感だけなのかもしれない。

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