トレド サント・トメ教会 エル・グレコ | 30 May '26 スペイン散歩(16)
三つの原語でユダヤ人街が示すプレート。ガイド氏は「彼らには建築様式なるものはなかった。住んでいた街もしだいに分からなくなっている」と足早。




イベリア半島に居残ったイスラム教徒をムデハルと呼ぶが、建築におけるムデハム様式はイスラム教とキリスト教の様式が融合したもので、12〜16世紀にわたってイベリア半島の広い地域に浸透していった。特徴としては、菱形網目や多弁アーチ状に積んだれんが、装飾の多い外壁、寄木やタイルや石膏のアラベスク模様、彩色格子天井などが挙げられる。スペイン独特の伝統となったムデハル様式は、19世紀の建築家ガウディにも受け継がれた。
さて、トレドで観たかったもののひとつが、エル・グレコの傑作《オルガス伯爵の埋葬》1586-1588。サント・トメ教会の聖母マリア礼拝堂前、入口の右で確認。非常に大きな仕事で、足元にはオルガス伯爵(ドン・ゴンサロ・ルイス)の棺がおさめられている。埋葬のときに二人の聖人が降臨し、葬送に参列したという伝説が、実際にあったような臨場感。

画面上の天上界には天使たちに囲まれたキリストと聖母マリアが描かれ、地上界では多くの人物が見守るなか、伯爵の葬儀が行われている。この人々は当時のトレドの名士たちの肖像だといわれている。ふたつの空間のほぼ中央には、天使に抱かれて今まさに神のもとへささげられる伯爵の魂が描かれている。また埋葬の場面を指し示す画面左下の少年は、グレコの息子のホルヘ・マヌエルで、その衣服のポケットにはグレコのサインと息子の生年が書かれた白い布が見える。




聖母マリアの肌色が黒(茶)系だとする説は、古代イスラエルのユダヤ人の肌色が小麦色、オリーブ色、あるいは、日焼けした褐色だったという記憶に基づく。直毛、黒眼とされ、聖母マリアを「黒い肌」で表す像は11世紀から15世紀に造られ、欧州で約500体残存するという。
トレドの古い教会で対面すると、キリストの肌色を歴史に探し、母の慈愛を思い出す。合唱。

下段にはラテン語による伝説(奇跡)のあらましと、オルガス伯爵の遺贈の争いが16世紀に解決され、記念としてエル・グレコの本作が描かれたことなどを記した石板状の墓碑銘が埋め込まれている。

礼拝堂を後に、サント・トメ通りに出る手前で見上げる。グーグルマップで位置を確認しております。教会は12世紀創建、14世紀オルガス伯爵の命により再建。
