伊勢参宮道(伊勢街道)を歩いてお伊勢参りに行きましょう - その2 -
前回の続き。
先日のブラタモリでも年間に500万人もの人が伊勢神宮を目指したと紹介されていた。江戸時代では、そのはじめとおわりで日本の人口が大きく増えているが、その時の人口を3000万人ぐらいだと考えると、日本人の6人に1人がお伊勢参りを行ったことになる。
500万人、6人に1人(!)である。
2023年度の東京ディズニーランドの入場者数が1510万人、東京ディズニーシーでは1240万人、合わせての年間入場者数は約2,750万人である。大阪のUSJは入場者数が1600万人。そして現在の日本の人口が約1億2千万人。
当時と現代を比べることにあまり意味がないのかもしれないのだが、東京ディズニーランドやUSJレベルの混み方のようだったに違いない。東海道にも参宮道にも、旅籠や飯屋に道中に人が溢れていただろう。
「江戸時代にディズニーランドクラスの人がいたわけでしょ、しかもみんな歩いていたとか。それはわんさかと。足元は草履ですよ。」とかなんとか妄想してみると、一瞬ではあるが当時の情景に引き込まれたりする。本当にすごい人がいたわけですよね。
今でも多くの人が伊勢神宮を訪れているが、劇的に交通手段が変わった後、それがそのまま残ってしまったのか、古い街道の面影が残っている場所が多い。もちろんたいていは一般的な普通の日本の街並みだし、今風のかっこいいお宅も最新のSUVが軒先にきれいに駐められている家々も多く見られるのだが、他の街と比べると格子戸、木板の壁の家屋や土壁、漆喰壁の家並みなどが多く残っている。
そこでチラチラと目に止まるのが、昔の「結納店」の広告看板である。そもそも結納店の看板なんて日常的には目にしない。さすが伊勢神宮へと向かう道ということか、昭和のはじめに迷い込んだような気になる。(実際に昭和のはじめにいたことはないのだけど)独特のデザインも色使いも、言葉遣いなども昔めいていてなにか良い。看板はホーローである。
看板にはダイアモンド、指環、宝石、進物用品、結納品一式などに加えて「洋傘、履物」と書いてある。傘と靴を結納で贈るってそんなのあったっけか?なんて調べたところ、三重県では結納に傘と履物を贈る習慣があるとか。今ならハイブランドの傘と靴になるんでしょうね。
結納店の看板と並んで掛けられている結婚式場の広告や結婚紹介所の広告などとも相まってとても良い雰囲気を出している。「成婚第一主義、初婚・再婚・養子縁組の方、ご相談は無料(秘密厳守)」。ふむ、なるほど。
やはりその土地での生活から感じ取れる「諸行無常」がとても生くて良い。

伊勢神宮に向かうための道、ということがこの伊勢参宮道の一番のおもしろ味である。もちろんそのまま伊勢神宮に向かってもよいし、昔のしきたりに従って夫婦岩で禊を行ってから外宮、内宮と訪れてもよい。
一歩また一歩と楽しみに向かって歩いているというワクワク感がある。
道中には昔の街道の跡が多く残っているので歩きながら退屈しない。それに加えて、北海道の名付け親「松浦武四郎」の生家があったり(北海道に多少ゆかりがあるので、「えっ?北海道って名付けられたの?」とちょっと驚いた)、小津安二郎が育った場所ということで盛り上がっていたり(こちらは完全に僕の興味です)、三井家発祥の地があったり(ライオンがいました)と、ほかにも多くの名所旧跡が多くあったりする。こういうのも効いてくる。
ちなみにまんぷくビールのやまもと研究員は食に貪欲すぎるので、当然のごとく伊勢参宮道沿いの美味しいお店や名品を事前に調べてチェックしてくれている。あの情熱はほんとすごい(褒め言葉です)まじですごい(褒め言葉です)。
個人的には伊勢うどん大好きです。あの太さがクセになる。あと回転焼肉の「一升びん」にはぜひ足を運んでください。おすすめは地元の人たちが争って取っていた「松阪牛の切り落とし」です。あとは一月家も忘れずに。
そして、僕たちまんぷくビールにとってはゴールにクラフトビールが待っているのが何よりありがたい。伊勢角屋麦酒が外宮にも内宮にも門前にクラフトビールを飲める場所を出してくれている。
到着してまずは一杯。
ぷはー、ビールがうまい!
このために歩いているといっても過言ではない。
最高である。
伊勢参宮道は街道歩きを超え、まさに「歩き旅」に最適である、ということである。たくさんの人々が訪れた理由が道中にもちゃんとある。

そう言えば、
今回の伊勢参宮道の歩き旅は平日の朝から歩く旅だったのだが、市街地の畑の間を歩く道で、前から歩いてくる通学途中のひとりの小学生の男の子をがいた。黒いランドセルを背負って帽子を被って、素朴な様子の地元の男の子である。
その男の子がすれ違うときに、僕たちの顔を見ながらとても大きくハッキリとした声で「おはようございます!」と挨拶をしてくれた。
それは本当にさわやかで真っ直ぐ大きな声の挨拶であった。
僕たちはとっさにここ数年出したこともないような大きな声で「おはようござます!」と挨拶を返した。自分でもびっくりするぐらいの大きな声で。背筋も伸びていたと思う。
こんなくたびれた大人に、なんて爽やかな挨拶をするんだ。
そしてこんなくたびれた大人でもなんて大きな声で挨拶を返せるんだ。
振り向くと、男の子は何事もなかったかのように学校へ向かい歩いていた。そして、くたびれた大人たちだけが立ちすくんでいた。
これだから歩き旅はおもしろい。
まんぷくビール たかくら研究員でした。
( … つづく)
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